【寝子祭】届け銀河の涯てまで！　輝きをキミと｜リアクション

【寝子祭】届け銀河の涯てまで！　輝きをキミと

「桜、ミスコン出よう♪」
　有沢茉奈の言葉に、警戒する水上桜。
「また変な衣装着せる気？」
　ハロウィンの時にとんでもない衣装を着せられたのは忘れない。
「いや、今回は制服で」
「え、そうなの？」
　拍子抜けした様子の桜に茉奈は言う。
「でも制服ってファッションとしては難易度高いんだよ。誰が着ても同じデザインだから、逆に着こなし方とかでセンスがにじみ出てしまうんだから」
　だからコーディネートはしっかりとしなきゃ、と言う茉奈。
「そんなものかしらね……で、どんなパフォーマンスをするの？」
「これで君も銀河デビューできる！　寝子高制服のコーデ」
「なにそれ」
「制服ファッションショーよ」
「……まあ、練習がいらないならいいわ」

　そんなわけで、星モチーフのアクセをつけた制服で、茉奈と桜はパフォーマンスを行った。
（滝沢君、見てくれてるかな）
　そう思いながらファッションモデルっぽくポーズを決める桜。

　ノリノリの茉奈はマイクを受け取ると、
「今あたしはめっちゃ恋してるんだー！　カノン、大好きだよー！」

　と叫んだのだった。
（聞いてるこちらが恥ずかしくなってくるわ）
　と思う桜である。

（……なんでぼくはミスコンに参加してるんだよ）
　柄じゃない、と思う月原想花。
（メイド喫茶で紗櫻都さんにうまいこと乗せられて……魔法使いが絶対似合う、なんて適当なこと言って）
　気が付いたら想花は魔法使いのコスプレで参加していた。
　紗櫻都さんも似たり寄ったりの魔女の姿になっている。
「パフォーマンスをどうぞ」
　なんて言われて、困ってしまった。
（……そうだ）
　とっさに想花は、自分が書いている小説に出てくる「天空魔導師」になりきって、急場をしのごうと思いついた。
　胸に手を当てて呪文を詠唱するイメージで。

「スピカの守り手たちよ、今こそ我を護り給え！」
　紗櫻都さんはなぜかドヤ顔で。
「その願い、まさに聞き届けられましょう」
　などと言ってる。
　観客席から拍手が湧きおこった。
「それでは、銀河への叫びをどうぞ」
　まだあるのか。
　マイクを突き付けられ、想花は心の底から叫んだ。
「ぼくに……ぼくにくじけない心をください！」

（……だめだなあ、もうちょっと堂々とできたらいいのに）
　自己嫌悪に陥る想花だが。
　客席からはなぜか拍手をもらえ、紗櫻都さんはドヤ顔をしていた。

　時間いっぱいまで練習を重ねた梓智依子は、舞台袖にスタンバイしていた。
　いよいよパフォーマンス本番。用意した衣装を身につけ、ステージへ飛び出す。
　自分のこれまでの人生と、最愛の娘への想いを胸に情熱を込めて激しく切なく踊り狂う。
「あれ、ChiCoじゃね？」
　誰かが言った。
　それは、将来を期待されながら、数年前に突然姿を消したダンサー。智依子のもう一つの名前。
　湧き上がる歓声の中ひとしきり踊り倒した後。
　
「ママー！　かっこいい！」
　観衆の歓声の中でも、楓の声ははっきりと聴き分けられた。
　大はしゃぎする娘に向かって、ハンサムな笑みを浮かべてサムスアップを決める。