【寝子祭】届け銀河の涯てまで！　輝きをキミと｜リアクション

【寝子祭】届け銀河の涯てまで！　輝きをキミと

　椎井莉鳥は保健委員の役目を交代して、ミスコン会場の更衣室にいた。
　去年に続いての参加だが、自発的にというより陸上部の後輩の１年生、中倉琉歌のたっての願いに応えてのことだ。
　さすがに今年は水着はパス、と思っていたので、琉歌が用意した服を着ることになったが。
「……これ、何？」
　アイドルの衣装にしか見えないそれを手に、莉鳥は少し戸惑う。
「アイドル育成ＰＢＷのステージ衣装です」
　琉歌はPBWというゲームをやっているらしい。
　で、その中のキャラのコスプレだそうだ。
　青い衣装は露出も少なく、ハロウィンの時琉歌が着ていたタンクトップの格闘家より難易度が低いのだろうが、露出とは別種のためらいがある。
「これ、あたしには似合わないでしょ……」
「そんなことないです、クールな先輩にはぴったりです」
　今さら着ない訳にもいかない。
　仕方なく衣装をまとい、お揃いの衣装の琉歌とともにステージに上がって歌を歌い始めた。

　練習はしてきたけれど、改めてステージで歌ってみると、心に沁みる。
　歌の内容は、失恋の痛手からの再生と希望を謳うものだった。
　歌っているうちにだんだんとその歌詞の内容にのめり込んで。

　──好きな気持ちは　消えずに
　　　忘れられないと　思ってたのに

　いつしか感情が涙という形でとめどなくあふれ出て、止められないまま莉鳥は最後の一節を歌い上げた……
「先輩？」
　歌い終わった後、気づかわし気に琉歌が囁いたが、涙を拭うのも忘れ莉鳥は立ち尽くしていた。

　出るつもりはなかったが、朝鳥さゆるは声を掛けられてミスコンに出場することになった。
　２０代前半に見えてしまうさゆるだが、2年連続の出場だからか、今年は生徒手帳を示す必要はなかった。
　今回はディープブルーの、チュールに星空をちりばめたロングドレスにした。
「とっても綺麗。頑張ってね」
　そう言ってくれたじゅんは観客席で待っている。

　ステージに進み出ると、バラードが流れだした。
　マイクを受け取り、歌いだす。
　高校生離れした歌姫のような美しさに、観客席からため息が漏れる。
　
　さゆるが銀河の果てまで届けたい想いは──
　観客席にいる唯一人の大切な人──じゅんへの愛。
　さゆるは伸びのある声でバラードに乗せて歌い上げる。
　上手いとか観客受けとか関係ない、純粋な愛をじゅんに届けるために。

　──あなたに会えて　私は変わったの　
　　　知らなかった　こんな気持ち