【寝子祭】届け銀河の涯てまで！　輝きをキミと｜リアクション

【寝子祭】届け銀河の涯てまで！　輝きをキミと

　椎井莉鳥にとって高校最後の寝子祭。
　本来なら3回で終わるところを、様々な事情で4回目になった。
（でもこれで終わり。去年は陸上部でカフェを出したっけ）
　陸上部のＴシャツの上からエプロンをして、忙しく注文取りに追われたことが今は懐かしい。

　３年生は部活を引退したり委員会も後輩に引き継いでいるケースが多いが、保健委員会の委員長である莉鳥はそうはいかなかった。
（寝子祭は体育祭と並んで人出の多いイベントだから、どうしても気分を悪くしたり、イベントなどでけがをする人が出てしまう）
　その応急手当や救護活動をスムーズに行いたいと、怪我人や病人が出てもすぐに救護できるような体制を考えた。
　体育祭実行委員会と事前に打ち合わせて、保健委員会として動きやすい態勢を整えておいたのだ。
（保健委員が暇なのが理想なんだけど）

　だが、さっそく片耳に入れていたイヤホンに通知が入る。
『こちら本部前、転んだ子供が泣いています。膝に少々出血あり』
　委員の報告に、莉鳥は淡々と保健委員会のリーダーとしての職務を遂行する。
「こちら委員長。親御さんはいるの？」　
『近くに見当たりません』
「落ち着かせて治療後に、放送部にアナウンスしてもらって」
　様子を見に行こうかと思っていると、さらに報告が入る。
『中庭前で鼻血を出してる男性がいますが、ライブ中なので救護所には行きたくないと拒否しています』　
「……その場で手当、経過観察ね」
　次々に入る報告に、莉鳥は冷静に対処していくのだった。

　柚春は、一人校内を見て回っていた。
　楽しそうなカップルを見かけて、少し気おくれする時は、右耳にだけつけている青いピアスに触れてみる。
　右耳だけのピアスは思い人の男性がいますの意。
　そしてこの色は、ウォルターの瞳と同じなのだ。
「華道部の展示や射撃部でゲームかな？」
　つい探してしまうのはもちろんウォルター先生の姿だけど。
（会えたら嬉しいけど、ワットに会うことを目標にするのも失礼かな）

　なので華道部の展示教室へ行っても尋ねたりはしなかった。
（しっかり見て楽しんで、あとで感想を話せたらいいな）
　紅茶やアロマなど香りに興味がある柚春は、生けられた花の香りを嗅いでみる。
（この香り、面白いかも。アロマに使えないかな？）
　射撃部の体験コーナーに行けば、チョークを投げるウォルターさんの姿が目に浮かぶ。
　銃を構えたらもっとかっこいいだろう、と思う。
（僕も練習したら先生に近づけるかな？）
　そんなことを思いながら、部員にビームライフルの撃ち方を習った。
（ウォルターさんのハートも撃ち抜けるといいのに。それならいくらだって練習するよ）
　構えて的を狙ってみた。
「……難しいな」
　狙っているつもりでも、見当はずれのほうへ飛んでしまう。
（ワットに教えてもらおうかな）