夜の繁華街は、熊出没にご注意！？｜リアクション

夜の繁華街は、熊出没にご注意！？

　……朝。

　教師の朝は早い。それに足して、職員室には熊吉先生の他にはまだ誰も来ていなかった。昨日の熱がまだ収まりきっていないのか、どうやら早く来過ぎてしまったようだ。
　昨夜は休みなく夜の街を駆け回った事もあり、実はあまり寝ていない。夜を通して続いた生徒たちの校外指導。メイソンたちを取り逃がしてからも、あれから沢山の高校生に注意して回った。中には本当の意味で悪さを働いている者達もいたが、それと同じ数ほどに、やむを得ない理由で家の手伝いやアルバイトをしている者も多く見受けられた。
　(フン。いつまでも世話の焼ける子供だと思っていたが、知らぬ場所で少しは成長しているという事か……)
　それが本来の目的ではなかったとはいえ、高校の外にいる彼らの姿を見ることが出来た。貴重な経験である。皆、若くて考えが青いながらも、自己の考えと責任を持って行動しているのだとひしひし思い知った。
「ったく、バカタコどもめ」
　誰にともなくお気に入りの罵り文句を吐き出すと、熊吉先生は椅子を引き、自分の席へと腰を降ろした。

　すれば、気付いた。自分の机の上に何かがある。昨日まではなかった、キレイな包装で包まれた何か。
「んん？」
　誰かの忘れものか、それとも席を間違えたのか。余りの心当たりの無さにそんなことが頭をよぎったが、熊吉先生は首を傾げながらも、その何かを手に取って凝視した。放っておくことが出来なかったのは、それと同時にメモ立てがあり、上品なカードに几帳面な文字で『吉田先生』とはっきり書いてあったからだった。
　
『いつもお疲れ様です。心からの感謝を込めて』
　そして、メモの文字はそう続く。しかと見たその瞬間、熊吉先生はメモの意味と、謎の何かが置いてあるその意味を理解した。
「くぅぅぅ～～～！！」
　メモは激励、そして何かはねぎらいのプレゼントだ。そっとメモを置き、その指で目頭を押さえて首を仰け反らせる。呻く声は甲高く、しかし野太い。男泣きの涙をこらえているのが明瞭であった。
　こんな……こんな教師の行動を見てくれて、そして称えてくれる奴がどこかにいたということ。怒ってばかりだと言うことは自覚しているし、生徒から恐怖や畏怖を向けられているのも自覚している。だからその上で、感謝を向けられる機会はそう多くはなかった。
　自分の心を知り、応援してくれるものがいる。それだけで感動だ。熊吉先生は他の教師が職員室の戸を叩くまで、ずっと同じ姿勢で涙をこらえていた。

　以来、熊吉先生は、授業の折に首から提げるホイッスルを変えたのだが、残念にも、それに気付く生徒は少なかった。
　が、熊吉先生にプレゼントを贈ったのが修であるという事は、数人の生徒の中で噂になった。

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あとがき

担当マスター： tsuyosi
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tsuyosiです。この度はシナリオにご参加いただきありがとうございました。暴れ回る熊吉先生に対する皆様のプレイングはどれも独創的であり、そんなキャラクターたちに出会った熊吉先生が一体どうするのか、自分もリアクションを書いている始終ハラハラする心地で考えておりました。また皆様のキャラクターと触れ合う機会が訪れれば、どうぞよろしくお願いします。

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