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携帯戦記カプセルギア 第七話「昨日までの友は、今日の……」
用意された選択肢は、２つ。
A.I.C.O.の安全証明を行うか、破壊してしまうか……そんなもの、子供たちにとっては選択肢があるとは言い難く、答えなど決まり切っている。
「破壊一択ね」
だから水槻 清恋は、誰よりも先に口を開いた。
息を飲んで拳を握りしめる者がいても、理不尽だと憤り泣きわめかれても。清恋にとってはこれが仕事だ、そこに私情など挟んではいられない。
「事件が起きているの。警察としては、危険な物を放置するわけにはいかない」
まるで、悪人を見るような目を向けられることには慣れていた。正しいことは優しくないし、恨みだって買う……わかってくれと説明するのは心理職の仕事だ。
現場に出る警察官として、起こった事実だけを見なければ。判断を誤ってはならないと言い聞かせる清恋だって、思うことがないわけでもない。それでも子供たちの、ひいては多くの安全を守るための答えは、これしかないのだ。
「公人として、意見は覆らないわ」
念を押す清恋の声に、辺りは静まりかえった。
情に訴えるだけでは何も変えられない。本当にカプセルギアは……A.I.C.O.は、このまま破壊するしかないのだろうか。
カプセルギアによる傷害事件――そう騒ぎ立てるメディアに心痛め、雨宮 花三郎は児童公園へとやってきた。
つい先日、寝子島小学校でも学年主任とカプセルギアに詳しい職員数名で議論した結果、校内への持ち込み禁止が決定したところだ。それは中学校とも情報共有がなされ、今日にでも同対応を取ると聞いている。
苦渋の決断だったとはいえ、最終的に校長である花三郎が禁止を決定したのは事実だ。児童たちにとっては、せっかく遊んでいる所に水を差される気分かもしれない。
それでも、遠くからでも児童の楽しげな様子が見られれば……そう願っていた花三郎を嘲うような声が聞こえてくる。公園はすでに、ピリピリとした空気に包まれていた。
「アハハッ！ いや～いいっすねぇ。オトモダチ、来てくれたじゃないですか」
愉快な物語の幕開けかのように、女性は手を叩いて嗤っていた。
その挑発するような調子に眉を顰め、滝原 レオンはアタランテーを握りしめる。けれど今の姿は、どこからどう見たってモデルのような高身長にロングヘアの美少女。余程の目利きでなければ、彼だと気づきもしないだろう。
その自信と身バレ防止のために滝川 怜と名乗ってはいるが、気の立っていた牧 雪人は、最初こそ怜が声の調子を作ったりと些細な誤魔化しを使う様子に少し警戒を見せた。けれど、ギアを見せて真っ直ぐ雪人の意思確認をする姿に悪意を感じなかったのか、今ではギアを隣り合って並べている。
前衛に立つのは曖浜 瑠樹のギア、ピンクのドレスが可愛らしい白ウサギのラズちゃんだ。
ぎゅうっと抱きしめるのは、同じく白ウサギだが淡い水色のドレスを着たぬいぐるみのラピちゃんで、いつもの瑠樹であれば２匹の可愛さで和やかに微笑んでいただろう。
「誰のオモチャか？ 賭けなくたって決まってるよぉ」
くやしい。
こんな言われ方を、嗤われ方をするようなことになってしまって、かなしい。
「カプセルギアは、『正しく楽しく遊んで、傷つけるのに使わない皆の大切な友達』だよぉ」
怒りに近く、それでも拳を振り上げるような攻撃的な思いでもない。瑠樹はふつふつと静かに湧き上がる熱さに屈せず、できるだけ平和的に解決が出来るように願って答えた。
「正しく！ 楽しく！ まさに、イイコチャンな答えっすねぇ。でも……本当かナァ？」
やれやれと肩をすくめる女性は、ザリッと足元の小石を払うと、ひとつずつ手持ちのギアを並べていく。
「飽きたからイラナイ、弱いからイラナイ、誰かと被ったパーツなんてイラナイ……そうやって捨てるっしょ」
特別な友達、特別なギア。そう呼んで、思い入れのある一機を作り込むタイプもいれば、戦法に合わせて複数作るタイプもいる。
確かにカプセルトイという販売方法の都合上、思うようなパーツが手に入らないこともあるし、新作パーツに気をとられてしまうこともある。それでも、余ったパーツは友達と交換したり、模型店を経由してまだ買えないような子に譲ったりしているから、本当の意味で『不要』なパーツは無いはずなのだ。
「捨てるなんて……そんな酷いこと、しないよぉ」
どうしてそう悪いように言うのかわからず、瑠樹は奥歯を噛みしめた。ぐっと堪える様子に、怜は静かに瑠樹の背を叩いて間違ってないことを伝え、雪人も同意を示すように頷いている。
「わからないっすねぇ。どうせすぐ飽きるオモチャだろうに、どうしてそこまで怒れるのか」
「こっちだってわからないわね。どうしてそこまで決めてかかるのか」
一言でも失言をすれば、揚げ足を取られかねない女性の言動に注意しながら、怜は目的が見えてこないかと考える。すると女性は、うっかりしていたとばかりに頭を掻いた。
「おやおや、そういえば。ご挨拶がまだでしたっけねぇ……あっしは、マスターネームをカロデ」
足元に並べた３体のカプセルギアを順々に指し示しながら、女性はにんまりと嗤う。
「ゴミ箱生まれのゴミくず育ち――棄てられたギア専門っすよ」
A.I.C.O.の安全証明を行うか、破壊してしまうか……そんなもの、子供たちにとっては選択肢があるとは言い難く、答えなど決まり切っている。
「破壊一択ね」
だから水槻 清恋は、誰よりも先に口を開いた。
息を飲んで拳を握りしめる者がいても、理不尽だと憤り泣きわめかれても。清恋にとってはこれが仕事だ、そこに私情など挟んではいられない。
「事件が起きているの。警察としては、危険な物を放置するわけにはいかない」
まるで、悪人を見るような目を向けられることには慣れていた。正しいことは優しくないし、恨みだって買う……わかってくれと説明するのは心理職の仕事だ。
現場に出る警察官として、起こった事実だけを見なければ。判断を誤ってはならないと言い聞かせる清恋だって、思うことがないわけでもない。それでも子供たちの、ひいては多くの安全を守るための答えは、これしかないのだ。
「公人として、意見は覆らないわ」
念を押す清恋の声に、辺りは静まりかえった。
情に訴えるだけでは何も変えられない。本当にカプセルギアは……A.I.C.O.は、このまま破壊するしかないのだろうか。
カプセルギアによる傷害事件――そう騒ぎ立てるメディアに心痛め、雨宮 花三郎は児童公園へとやってきた。
つい先日、寝子島小学校でも学年主任とカプセルギアに詳しい職員数名で議論した結果、校内への持ち込み禁止が決定したところだ。それは中学校とも情報共有がなされ、今日にでも同対応を取ると聞いている。
苦渋の決断だったとはいえ、最終的に校長である花三郎が禁止を決定したのは事実だ。児童たちにとっては、せっかく遊んでいる所に水を差される気分かもしれない。
それでも、遠くからでも児童の楽しげな様子が見られれば……そう願っていた花三郎を嘲うような声が聞こえてくる。公園はすでに、ピリピリとした空気に包まれていた。
「アハハッ！ いや～いいっすねぇ。オトモダチ、来てくれたじゃないですか」
愉快な物語の幕開けかのように、女性は手を叩いて嗤っていた。
その挑発するような調子に眉を顰め、滝原 レオンはアタランテーを握りしめる。けれど今の姿は、どこからどう見たってモデルのような高身長にロングヘアの美少女。余程の目利きでなければ、彼だと気づきもしないだろう。
その自信と身バレ防止のために滝川 怜と名乗ってはいるが、気の立っていた牧 雪人は、最初こそ怜が声の調子を作ったりと些細な誤魔化しを使う様子に少し警戒を見せた。けれど、ギアを見せて真っ直ぐ雪人の意思確認をする姿に悪意を感じなかったのか、今ではギアを隣り合って並べている。
前衛に立つのは曖浜 瑠樹のギア、ピンクのドレスが可愛らしい白ウサギのラズちゃんだ。
ぎゅうっと抱きしめるのは、同じく白ウサギだが淡い水色のドレスを着たぬいぐるみのラピちゃんで、いつもの瑠樹であれば２匹の可愛さで和やかに微笑んでいただろう。
「誰のオモチャか？ 賭けなくたって決まってるよぉ」
くやしい。
こんな言われ方を、嗤われ方をするようなことになってしまって、かなしい。
「カプセルギアは、『正しく楽しく遊んで、傷つけるのに使わない皆の大切な友達』だよぉ」
怒りに近く、それでも拳を振り上げるような攻撃的な思いでもない。瑠樹はふつふつと静かに湧き上がる熱さに屈せず、できるだけ平和的に解決が出来るように願って答えた。
「正しく！ 楽しく！ まさに、イイコチャンな答えっすねぇ。でも……本当かナァ？」
やれやれと肩をすくめる女性は、ザリッと足元の小石を払うと、ひとつずつ手持ちのギアを並べていく。
「飽きたからイラナイ、弱いからイラナイ、誰かと被ったパーツなんてイラナイ……そうやって捨てるっしょ」
特別な友達、特別なギア。そう呼んで、思い入れのある一機を作り込むタイプもいれば、戦法に合わせて複数作るタイプもいる。
確かにカプセルトイという販売方法の都合上、思うようなパーツが手に入らないこともあるし、新作パーツに気をとられてしまうこともある。それでも、余ったパーツは友達と交換したり、模型店を経由してまだ買えないような子に譲ったりしているから、本当の意味で『不要』なパーツは無いはずなのだ。
「捨てるなんて……そんな酷いこと、しないよぉ」
どうしてそう悪いように言うのかわからず、瑠樹は奥歯を噛みしめた。ぐっと堪える様子に、怜は静かに瑠樹の背を叩いて間違ってないことを伝え、雪人も同意を示すように頷いている。
「わからないっすねぇ。どうせすぐ飽きるオモチャだろうに、どうしてそこまで怒れるのか」
「こっちだってわからないわね。どうしてそこまで決めてかかるのか」
一言でも失言をすれば、揚げ足を取られかねない女性の言動に注意しながら、怜は目的が見えてこないかと考える。すると女性は、うっかりしていたとばかりに頭を掻いた。
「おやおや、そういえば。ご挨拶がまだでしたっけねぇ……あっしは、マスターネームをカロデ」
足元に並べた３体のカプセルギアを順々に指し示しながら、女性はにんまりと嗤う。
「ゴミ箱生まれのゴミくず育ち――棄てられたギア専門っすよ」
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2023年05月13日
- 参加申し込みの期限
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- 2023年05月20日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2023年05月20日 11時00分
