狂気の笑顔が悪意をばらまく｜リアクション

狂気の笑顔が悪意をばらまく

　銀色の猫となったサキリ・デイジーカッターは頭の中の声に集中する。
「理解した」
　見つけた路地裏に音もなく走り込む。行動の合間に黒白の情報を起点にして先の展開を考える。
　――墓地や美術館を当たるか。
　移動の最中、青黒い靄を見かけた。
　――敵の成れの果てか。それとも新手の出現、いや、決めるには情報が少なすぎる。
　目星を付けたところから探っていく。寝子島の騒乱と違い、墓地はひっそりとして人の気配がない。敵らしいものも発見できなかった。
　サキリは気持ちを切り替えて美術館に向かう。建物の周辺を調べる。猫らしく、時に立ち止まって後ろ脚で耳を掻いた。
　――おかしい。ここにもいない。
　青黒い蝶が目の前を横切ってゆく。サキリは飛び出し、前脚で鋭い爪攻撃を加えた。引き裂かれた胴体は靄となり、ふわりと浮かんで飛び去った。
　――先程、見た靄と同じ方向に飛んでいく。黒白の元へ戻ろうとしているのか？
　直感が告げる。正しい判断だと。
　サキリは信じた。熟練の戦闘屋として培った技術は賭けるに値する。
　走りながら上を見た。カナリアも同じ靄を追っていた。
　――桜井ラッセルか。
　空と地上から靄を追い掛ける。追尾から逃れることができず、路地裏の突き当りにある青黒い門のようなところに逃げ込んだ。
　――あれが、黒白へ続く道か。
　サキリは銀の矢と化して突っ込んだ。
　心強い味方を得たラッセルも躊躇わず、門の中へ吸い込まれていった。