古木に囚われて｜リアクション

古木に囚われて

　蜂と“ぱらいそ様”に対処せねば、脱出は不可能だ。
　一同は、何かヒントを得られればと“うるそ様”のほこらへやってきた。
「“ぱらいそ様”の実と蜜をお供えするんですね」
「えぇ、元住人の方からお預かりしておりますので」
　ふんふんと頷く蒼の横で、作業員がお供え用の台に木の実を３つ、瓶入りの蜜をほこら前に置く。
　一同が整列して頭を下げると、程なくしてゴトゴト、と音が。
「あっ、ご神体が動いて光ってる」
　日向の声で全員が顔を上げると、確かに点滅している。
「えっ、うそ！？」
「大丈夫ですよ、先生」
　美野梨が抱きつく美和を宥める横で、道哉がほこら前に進み出て膝をついた。
「お騒がせして申し訳ありません、“うるそ様”。私は三毛谷道哉と申します。私ども、“ぱらいそ様”のご機嫌を損ねてしまい、村から出られなくなって難儀しております。どうか“ぱらいそ様”を鎮めるため、お力添え頂けませんか。お願い申し上げます」
　道哉にならい、再度全員で頭を下げる。
　顔を上げると――点滅が激しくなっていた。
「何だろう、あの光……何か伝えたいのかな」
「まさかとは思うけど、モールス信号かしら。長い光と短い光があるし」
　日向と美野梨の言葉に、ぴかぴか、と石像が明滅する。
「だったら私、分かるかも。前にゲームの信号を解いた事があるし。何かメモするものある？」
　蒼の言葉に、作業員たちが現場用のホワイトボードを持ってきてくれた。
　点滅を符号に変換して、メモすること暫し――

「えーっと、ここまでが『供物と引き替えに守ってやろう』でよろしいでしょうか？」
　――石像は、長く１回、短く３回光り、その後短く１回、長く１回光った。
「なんて？」
「はい、って」
　メモ担当の紫と解読する蒼の会話に、現場はほっと安堵の空気に包まれた。

　“うるそ様”の力添えは３つ。
　蜂に襲われないように守る。
　体に産み付けられた卵をなくす。
　“ぱらいそ様”にはしめ縄をしめ直し、謝罪せよ。そしてもう二度と傷つけないと誓約せよ。

　――という助言だった。

　そして、一際強くご神体が光り輝き、古民家で眠っていた５人の体から、丸いふわふわしたものが吸い込まれていった。

『卵は食った。次は守りだ』

　ご神体が再び光った時、一同の首にはマフラーが出現していた。
　細長い両端に熊の頭と尻尾があり、ぬいぐるみのようなふわふわの手触りの一品。
　昔、曾祖父母が誕生日にくれたものを思い出し、ほろりときた美和だった。

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