ひろわれっ！｜リアクション

ひろわれっ！

◆サンキャッチャー

　八神修は七夜あおいと雑貨店に買い物に行った。
　その帰り道で突然見知らぬ街の路地裏に飛ばされた。まるで小説のページをめくるように、ぱっと見ている景色が変わった。

「またか！」

　修とあおいは顔を見合わせて小さく笑った。
　これまでもこういったことは何度か経験していて、このくらいでは驚かない。あおいも慣れた様子で周囲を確認する。路地の向こうからは人の気配と話し声。建物は知らない造りで、張り紙の文字も読めない。
　
「なんだか異世界っぽいね」
「そうだね。どんな世界か確認しようか。帰る方法も探さないといけないし」
「だね」

　２人は路地を進んでいくと露店が並ぶ通りに出た。そこには猫系の獣人たちが商売をしたり、買い物を楽しんでいた。街の中心にはかなり高い光塔が輝き、外周には低めの光塔。そして空を見ると薄い光の膜に包まれている。

「あおいの予想通り、異世界だ。ファンタジー世界が近いかな」

　修たちはさらに情報収集しようと露店の通りを歩く。すると獣人たちがわらわらと寄って来た。一応顔などを隠す工夫はしていたのだが、人間である修たちはやはり目立つのだろう。彼らは不思議そうに毛無しとか迷い人と呼んでくる。だが拒絶というよりも困惑の色が窺える。

「お前たちはどこから来たんだ？」
「それは説明に困るんだけど……」

　修は自分たちのことを簡単に説明した。少なくとも敵意がないことは伝わったようだ。人懐っこい種族のようで、距離感が近い。

（体毛のもふもふが、とてももふもふしている）

　修は無理やり言葉にすることを諦めた。そのなかの一人から誘いを受けて家に入る。飲み物を出されたので口にすると、甘めの紅茶に似た味がした。和やかな雰囲気のなか、修たちは自分たちの世界のことを話し、またこの世界について聞くことができた。
　ここは最後の光の都市で、闇に跳梁する魔物たちを光が退けているという。

（ヘビーな世界だ。でも皆、逞しくもふもふしく生きてる）

　いたるところにある硝子や瓶が光の大切さを訴えている。一宿一飯の恩というわけでもないが、修たちは彼らのために何かできないかと考えた。そのとき雑貨店で買った材料が目に入る。

（これだ）

　買い物袋からワイヤーや大きなカットビーズを取り出す。ちょうどサンキャッチャーを作る予定だったので、工具を借りて作る。２人で手際よく作業をすすめ、出来上がったそれをランタンの近くにつるすと光の模様が明るく照らす。

「修君いい感じだね」
「ああ」

　あおいはキラキラと光るのを見て嬉しそうだ。すると、それを見ていた獣人たちがもっと作ってほしいと言ってきた。どうやら外周灯の横に吊るしたいらしい。
　
「いや、もちろん協力するけど」

　結界が広がると言っているが修たちにはよく分からない。雰囲気で話を聞いていたら材料が運び込まれた。修たちがゆっくりと作業する様子を、近くで数人が見つめている。

「これはサンキャッチャーと言ってだな」
「ふむ」

　まるで学校の先生のように修たちは獣人たちにその作り方を話した。獣人たちも作れるようになると、礼と言わんばかりに美味しいものを作ってくれた。

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