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- 00月00日生 00歳
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寝子暦1371年のハッピー・ハッピー・ハロウィン☆デイズ！
パレードの後、遅くなったので紗月は理緒の部屋に泊まった。もちろん親には連絡を入れてのうえだ。
本日は仮装コンテスト、ふたりは現役グラビアアイドルとして特別枠で出演する。
仮装は決めていた。問題はそのテーマだ。
先日、コンテストに出る衣装について理緒が話題したときのことである。前から決めていたかのように、
「ウェディングドレスがいいな。理緒ちゃん、ふたりでウェディングドレス着ようよ」
紗月が強く主張したのだった。彼女にしてはめずらしいことだ。こういう機会があれば大抵は理緒が提案し、迷ったすえに紗月がOKを出すというのがふたりのパターンだったからだ。
花嫁コスってハロウィンぽいかなぁ……？
気にはなったがせっかくの紗月からのサジェスチョンだ。しかも紗月は真剣なまなざしである。断れるはずがなかった。とはいえハロウィンということで、幽霊の花嫁っぽいアレンジは加えた。英語の教科書にそんな話が出ていた気がする。レースをわざとほころびさせ、蜘蛛の巣をあしらったのだ。といってもホラーすぎる飾りではなく、あくまでちょっとしたアクセントの範囲だ。おどろおどろしさよりポップさがきわだつ仕上がりとなっている。
こうして迎えた当日なのに、紗月の表情は暗かった。控え室でずっと下を向き思いつめたような様子だ。理緒があれこれと話しかけているのだが、戻る言葉は「うん」とか「そうだね」ばかりで反応は薄い。
やっぱり。
理緒は胸を痛める。予感はあった。
紗月、夏休みのあの件がまだ響いてるんだよね。
ナイーブになっても仕方ないだろう。本日は久々に、そろって人前に出るのだから。
夏の夜、寝子島マリンパラダイスで理緒と紗月は手をつないだ。そればかりかキスもかわした。ナイトツアーゆえ参加者は少なく、それゆえに気が緩んでいたのかもしれない。決定的な瞬間をスマホで撮影されてしまった。幸い撮影者はとりおさえ、インターネットの世界に放流される前にデータを消してもらうことはできたが、人の口に戸は立てられぬものでキスの噂だけは流された。以来、紗月はときおり物思いにふけるようになったのである。
たまに生配信などで噂について質問をうけても「あれは友キスだから」と笑って理緒は打ち消すようにしていた。だが内心ではやはり、マリパラでは配慮が足りなかったと悔やんでいる。国民的人気ではないものの、もう自分は知る人ぞ知る著名人なのだ。紗月だってけっして無名ではない。行動には気をつけなければ。だから昨夜はあえて『紗月とは親友同士』と強調するようなセルフィー（自撮り写真）を自分から公開したのだった。
正式な招待を受けての特別枠なので、ふたりの控え室は他の出演者とは別である。狭いながらも個室、いわゆる楽屋だ。大きな鏡に理緒と紗月が映っている。純白のウェディングドレスを着たふたり、うつむき加減の紗月、彼女を気づかいながらもかける言葉が見つけられない理緒、画家がこの光景を描いたとしたら、どんな題をつけただろうか。
「もう」ぽつりと紗月が言った。「これ以上、『親友』同士ではいられないよ。やっぱり、私」
「紗月」
と言ったまま理緒は言葉を見失った。
沖縄ロケで撮影した写真集、その掲載写真を選ぶとき、ふたりきりになったタイミングで紗月は同様の内容を口にしたことがある。このとき理緒はとっさに別の話題をもちだしなんとかまぎれさせた。でも、いつまでも目をそらせつづけられるとは思っていなかった。
仮装でウェディングドレスを希望したのは、公の場ではっきりさせてほしいってことなんだよね……紗月？
そうとしか思えない。
失うものは多いだろう。
心が騒ぐ。
人々の目にさらされてきた期間なら、理緒は紗月より圧倒的に長い。だから知っているつもりだ。世間なるものの残酷さを。
SNS活動だって、訊かれればいつも「楽しいよ」とこたえてきたが、本当は重荷でもあった。非難、嘲笑、こき下ろし、一般的なファンレターとはちがって、事務所という保護のない生身の自分に直接、辛辣な言葉が飛んでくるのは茶飯事だったから。ちょっと顔色が悪い写真をあげれば『劣化した』と断じられ、高校を卒業したと書けば『ババアになったな！ もういらねぇよ！』とメッセージが届く。交際発覚となれば暴言はこのレベルにとどまらないだろう。しかも相手は同性なのだ。そもそも自分に興味関心すらなかったはずの層まで、『地獄に落ちろ』『生産性の無いやつイラネ』『自然の摂理に反してる』などと暴言と叩きに加わり炎上するかもしれない。これまでグラドルとして築き上げてきたものが、一気に崩壊したっておかしくなかった。
でも、紗月との二者択一なら答えは決まってる。
肚（はら）を据えると不安も恐れも嘘のように消えた。
楽屋といっても壁は薄いので、外の声は聞こえてくる。司会のサンマさんがマイクパフォーマンスで客席を盛り上げていた。
「そろそろだね、紗月」
鏡のなかの理緒が席を立った。
「行こう」
おなじく鏡のなかの紗月に手を伸ばす。
本日は仮装コンテスト、ふたりは現役グラビアアイドルとして特別枠で出演する。
仮装は決めていた。問題はそのテーマだ。
先日、コンテストに出る衣装について理緒が話題したときのことである。前から決めていたかのように、
「ウェディングドレスがいいな。理緒ちゃん、ふたりでウェディングドレス着ようよ」
紗月が強く主張したのだった。彼女にしてはめずらしいことだ。こういう機会があれば大抵は理緒が提案し、迷ったすえに紗月がOKを出すというのがふたりのパターンだったからだ。
花嫁コスってハロウィンぽいかなぁ……？
気にはなったがせっかくの紗月からのサジェスチョンだ。しかも紗月は真剣なまなざしである。断れるはずがなかった。とはいえハロウィンということで、幽霊の花嫁っぽいアレンジは加えた。英語の教科書にそんな話が出ていた気がする。レースをわざとほころびさせ、蜘蛛の巣をあしらったのだ。といってもホラーすぎる飾りではなく、あくまでちょっとしたアクセントの範囲だ。おどろおどろしさよりポップさがきわだつ仕上がりとなっている。
こうして迎えた当日なのに、紗月の表情は暗かった。控え室でずっと下を向き思いつめたような様子だ。理緒があれこれと話しかけているのだが、戻る言葉は「うん」とか「そうだね」ばかりで反応は薄い。
やっぱり。
理緒は胸を痛める。予感はあった。
紗月、夏休みのあの件がまだ響いてるんだよね。
ナイーブになっても仕方ないだろう。本日は久々に、そろって人前に出るのだから。
夏の夜、寝子島マリンパラダイスで理緒と紗月は手をつないだ。そればかりかキスもかわした。ナイトツアーゆえ参加者は少なく、それゆえに気が緩んでいたのかもしれない。決定的な瞬間をスマホで撮影されてしまった。幸い撮影者はとりおさえ、インターネットの世界に放流される前にデータを消してもらうことはできたが、人の口に戸は立てられぬものでキスの噂だけは流された。以来、紗月はときおり物思いにふけるようになったのである。
たまに生配信などで噂について質問をうけても「あれは友キスだから」と笑って理緒は打ち消すようにしていた。だが内心ではやはり、マリパラでは配慮が足りなかったと悔やんでいる。国民的人気ではないものの、もう自分は知る人ぞ知る著名人なのだ。紗月だってけっして無名ではない。行動には気をつけなければ。だから昨夜はあえて『紗月とは親友同士』と強調するようなセルフィー（自撮り写真）を自分から公開したのだった。
正式な招待を受けての特別枠なので、ふたりの控え室は他の出演者とは別である。狭いながらも個室、いわゆる楽屋だ。大きな鏡に理緒と紗月が映っている。純白のウェディングドレスを着たふたり、うつむき加減の紗月、彼女を気づかいながらもかける言葉が見つけられない理緒、画家がこの光景を描いたとしたら、どんな題をつけただろうか。
「もう」ぽつりと紗月が言った。「これ以上、『親友』同士ではいられないよ。やっぱり、私」
「紗月」
と言ったまま理緒は言葉を見失った。
沖縄ロケで撮影した写真集、その掲載写真を選ぶとき、ふたりきりになったタイミングで紗月は同様の内容を口にしたことがある。このとき理緒はとっさに別の話題をもちだしなんとかまぎれさせた。でも、いつまでも目をそらせつづけられるとは思っていなかった。
仮装でウェディングドレスを希望したのは、公の場ではっきりさせてほしいってことなんだよね……紗月？
そうとしか思えない。
失うものは多いだろう。
心が騒ぐ。
人々の目にさらされてきた期間なら、理緒は紗月より圧倒的に長い。だから知っているつもりだ。世間なるものの残酷さを。
SNS活動だって、訊かれればいつも「楽しいよ」とこたえてきたが、本当は重荷でもあった。非難、嘲笑、こき下ろし、一般的なファンレターとはちがって、事務所という保護のない生身の自分に直接、辛辣な言葉が飛んでくるのは茶飯事だったから。ちょっと顔色が悪い写真をあげれば『劣化した』と断じられ、高校を卒業したと書けば『ババアになったな！ もういらねぇよ！』とメッセージが届く。交際発覚となれば暴言はこのレベルにとどまらないだろう。しかも相手は同性なのだ。そもそも自分に興味関心すらなかったはずの層まで、『地獄に落ちろ』『生産性の無いやつイラネ』『自然の摂理に反してる』などと暴言と叩きに加わり炎上するかもしれない。これまでグラドルとして築き上げてきたものが、一気に崩壊したっておかしくなかった。
でも、紗月との二者択一なら答えは決まってる。
肚（はら）を据えると不安も恐れも嘘のように消えた。
楽屋といっても壁は薄いので、外の声は聞こえてくる。司会のサンマさんがマイクパフォーマンスで客席を盛り上げていた。
「そろそろだね、紗月」
鏡のなかの理緒が席を立った。
「行こう」
おなじく鏡のなかの紗月に手を伸ばす。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2023年01月15日
- 参加申し込みの期限
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- 2023年01月22日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2023年01月22日 11時00分
