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- 00月00日生 00歳
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寝子暦1371年のハッピー・ハッピー・ハロウィン☆デイズ！
仮面をつけての婚活パーティ、略してかぁ。
今道 芽衣子は思う。
名前、いまひとつピリッとしないよね。
なんのかんのいって寝子島は人口保持、むしろ増加傾向をキープしているものの、日本全土はもちろん木天蓼市全体もちゃくちゃくと少子化が進んでいるのは事実だ。これはうかうかしていられないと、寝子島町議会が積極的に予算投入し実現したイベントである。目標は『カップル三十組成立！』と勇ましいことこのうえない。男女各百人に満たない規模でよくもまあと言いたくもなる。
だが実現性はさておいても名称だ。行政センスの悲しさよ。『仮面コン』だなんて、安食堂の定食料理みたいではないか。
いちおう主催者発表では、「『コン』は『婚』に通ず！」などと勇ましい言葉が躍っていた。コンを経て婚にいたればすべてよろしいというわけか。だがそれを言うなら『混』も『痕』も『困』も『コン』ではないか。『恨』だったりしたら目も当てられない。
なんでまあ、期待はしてないけどね。
芽衣子の温度感はこの程度だった。ヒマだし一応、くらいのノリで参加したのだ。寝子島中学講師（＝町職員）たる身の恩恵で無料招待されたのも大きかった。出逢いがあればよし、なければないでイソラ・ガレッジャンテからの夜景と、ビッフェ料理を堪能して帰ろうと思っている。
それにしてもこの仮面、邪魔だなあ。
芽衣子は指でマスクをはじく。入り口で渡されたものだ。極彩色のバタフライマスクである。でもこれ蝶じゃなくて蛾ではなかろうか。こんなことなら飛行機で使うアイマスクでも持ってくればよかったと思う。いや、あれじゃ前は見えないか。
参加者の動きはあまり活発ではない。たいていはもそもそと、草食動物みたいに料理を取りに行くのみである。まだ開始まもないの状態だ。これから転がる展開もあるかもしれない。
でもあの彼は別ね。
すごい勢いで会場に飛び込んできた姿があった。魔法使いみたいなローブを着て、頭もフードですっぽりと覆っている。顔を飾るのはオペラ座の怪人みたいな半仮面だ。土埃の立つ勢いで会場を駆け抜けていった。
若いのかなぁ。
なんだか微笑ましい気持ちで芽衣子はその背を見送った。
しかし彼、ジェイド・アドラムの心境たるやそんな穏やかなものではない。
亜美佳！
文字通り血眼になって、イソラ・ガレッジャンテの広い空間に目をこらしている。薬師寺亜美佳の姿を探して。
仮面の存在がありがたかった。ジェイドが素顔だったら、未成年とみなされつまみだされていたからかもしれない。
しかし未成年ではない。断じてちがう。少なくとも人間界の基準なら、とっくの昔に成人だ。ジェイドは数百年生きているのである。そもそも人間の基準を当てはめるのがおかしいだろう。ジェイドはほしびと、普段はドラゴンの姿をしているからだ。
だが種族のちがいが愛の障壁になりえようか。亜美佳を思うジェイドの気持ちは純粋だ。生まれた世界がちがっても、想いは通じると信じている。
そして世界がちがっても、人の口に戸は立てられぬものだ。どこからか流れてきた情報で、ジェイドは亜美佳が仮面コンに参加予定だと伝え聞いた。仮面コンと聞いた当初はピンとこなかったが、それがいわゆる合コン、結婚相手を探す儀式だと知っては穏やかではいられない。気が気でなくなり悍馬のように猛って、ジェイドはこの場に乗り込んできたのだ。
なのにジェイドは開場時間に間に合わなかった。もちろん理由あってのことだ。
なぜ亜美佳の世界では年少者とみなされるのか。
噴飯やるかたないジェイドである。星幽塔にあっても子ども扱いなのは、このさい考えないことにする。
偽装に手間取ったのだ。身長を底上げするシークレットシューズを用意し、仮装はフード付きロープを探した。おかげで入り口で止められることはなかったが時間がかかりすぎた。ジェイドがたどり着いたとき、すでに仮面コンははじまっていたのだ。出遅れたという焦りがジェイドを駆り立てている。
どうしてこんなことまでして、とは何度も考えた。
亜美佳は人間だ。こちらの世界で人間の恋人と暮らすのが一番ではないのか。
それでも……それでも嫌だった。
亜美佳が別の人間と星幽塔に降りてくるなど、想像するだけで気絶しそうになる。
亜美佳！
どうか無事でいてくれ、祈るような気持ちでジェイドは彼女を探す。無事でいるに決まっているが、いま冷静に考えられる余裕は彼にない。
まもなくジェイドは大きく安堵の息をついた。
薬師寺 亜美佳はひとり窓際にいた。
夜の海をぼんやりと眺めている。
今道 芽衣子は思う。
名前、いまひとつピリッとしないよね。
なんのかんのいって寝子島は人口保持、むしろ増加傾向をキープしているものの、日本全土はもちろん木天蓼市全体もちゃくちゃくと少子化が進んでいるのは事実だ。これはうかうかしていられないと、寝子島町議会が積極的に予算投入し実現したイベントである。目標は『カップル三十組成立！』と勇ましいことこのうえない。男女各百人に満たない規模でよくもまあと言いたくもなる。
だが実現性はさておいても名称だ。行政センスの悲しさよ。『仮面コン』だなんて、安食堂の定食料理みたいではないか。
いちおう主催者発表では、「『コン』は『婚』に通ず！」などと勇ましい言葉が躍っていた。コンを経て婚にいたればすべてよろしいというわけか。だがそれを言うなら『混』も『痕』も『困』も『コン』ではないか。『恨』だったりしたら目も当てられない。
なんでまあ、期待はしてないけどね。
芽衣子の温度感はこの程度だった。ヒマだし一応、くらいのノリで参加したのだ。寝子島中学講師（＝町職員）たる身の恩恵で無料招待されたのも大きかった。出逢いがあればよし、なければないでイソラ・ガレッジャンテからの夜景と、ビッフェ料理を堪能して帰ろうと思っている。
それにしてもこの仮面、邪魔だなあ。
芽衣子は指でマスクをはじく。入り口で渡されたものだ。極彩色のバタフライマスクである。でもこれ蝶じゃなくて蛾ではなかろうか。こんなことなら飛行機で使うアイマスクでも持ってくればよかったと思う。いや、あれじゃ前は見えないか。
参加者の動きはあまり活発ではない。たいていはもそもそと、草食動物みたいに料理を取りに行くのみである。まだ開始まもないの状態だ。これから転がる展開もあるかもしれない。
でもあの彼は別ね。
すごい勢いで会場に飛び込んできた姿があった。魔法使いみたいなローブを着て、頭もフードですっぽりと覆っている。顔を飾るのはオペラ座の怪人みたいな半仮面だ。土埃の立つ勢いで会場を駆け抜けていった。
若いのかなぁ。
なんだか微笑ましい気持ちで芽衣子はその背を見送った。
しかし彼、ジェイド・アドラムの心境たるやそんな穏やかなものではない。
亜美佳！
文字通り血眼になって、イソラ・ガレッジャンテの広い空間に目をこらしている。薬師寺亜美佳の姿を探して。
仮面の存在がありがたかった。ジェイドが素顔だったら、未成年とみなされつまみだされていたからかもしれない。
しかし未成年ではない。断じてちがう。少なくとも人間界の基準なら、とっくの昔に成人だ。ジェイドは数百年生きているのである。そもそも人間の基準を当てはめるのがおかしいだろう。ジェイドはほしびと、普段はドラゴンの姿をしているからだ。
だが種族のちがいが愛の障壁になりえようか。亜美佳を思うジェイドの気持ちは純粋だ。生まれた世界がちがっても、想いは通じると信じている。
そして世界がちがっても、人の口に戸は立てられぬものだ。どこからか流れてきた情報で、ジェイドは亜美佳が仮面コンに参加予定だと伝え聞いた。仮面コンと聞いた当初はピンとこなかったが、それがいわゆる合コン、結婚相手を探す儀式だと知っては穏やかではいられない。気が気でなくなり悍馬のように猛って、ジェイドはこの場に乗り込んできたのだ。
なのにジェイドは開場時間に間に合わなかった。もちろん理由あってのことだ。
なぜ亜美佳の世界では年少者とみなされるのか。
噴飯やるかたないジェイドである。星幽塔にあっても子ども扱いなのは、このさい考えないことにする。
偽装に手間取ったのだ。身長を底上げするシークレットシューズを用意し、仮装はフード付きロープを探した。おかげで入り口で止められることはなかったが時間がかかりすぎた。ジェイドがたどり着いたとき、すでに仮面コンははじまっていたのだ。出遅れたという焦りがジェイドを駆り立てている。
どうしてこんなことまでして、とは何度も考えた。
亜美佳は人間だ。こちらの世界で人間の恋人と暮らすのが一番ではないのか。
それでも……それでも嫌だった。
亜美佳が別の人間と星幽塔に降りてくるなど、想像するだけで気絶しそうになる。
亜美佳！
どうか無事でいてくれ、祈るような気持ちでジェイドは彼女を探す。無事でいるに決まっているが、いま冷静に考えられる余裕は彼にない。
まもなくジェイドは大きく安堵の息をついた。
薬師寺 亜美佳はひとり窓際にいた。
夜の海をぼんやりと眺めている。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2023年01月15日
- 参加申し込みの期限
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- 2023年01月22日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2023年01月22日 11時00分
