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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
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寝子暦1371年のハッピー・ハッピー・ハロウィン☆デイズ！
仮装パレードの先頭付近は、いよいよシーサイドタウンを抜けようとしていた。
けれど末尾はまだまだ街中だ。
「あのあたりから入ろうよ！」
野々 ののこがぴょんと飛び込む。
けれど今のののこを、ののこだと認識できる人がどれだけいるだろうか。完璧なまでにコスプレしていたからだ。
オレンジに近い赤毛のカツラを装着し、さらに金の角飾りのついたヘルメットをかぶっている。鼻から下すべてを覆う紫のマスクで顔の半分以上は隠れているし、この紫マスクは首から下はもちろん、ほぼ全身ぴったりと包むタイツ状になっているのだ。広げた翼のような金の肩飾り、赤い裏地の黒マント、肘まである白い手袋、つま先が地面に刺さりそうな白ブーツも威嚇度満点である。バックルの太い白ベルトはファッショナブルといえないこともないが、ライフルらしきものをぶら下げていてものものしい。もっと面長だったらそれこそ悪の組織の女幹部といった風体だったろう。けれど童顔丸顔のののこが扮しているため、ディフォルメされたキャラクターフィギュアっぽくもあった。
僕のこの格好だと、と佐藤 英二は思う。『野々さん』じゃなくて『閣下』とか呼びかけたくなる。
ハロウィンパレードに参加しない？ とののこを誘ったのは英二だ。先週のことである。
「一応、仮装して行こうと思ってるんだ。あ、野々さんは普段着でもいいよ」
もちろんそんな楽しそうな話に、ののこが乗ってこないはずはない。
「仮装？ やるやるー、私もやるー！ 英二くんはどんな格好するの？」
「僕は無難にニャンダムのラクシーン公国の軍服っぽくした服装で行くけど」
はたしてラクシーン兵が無難かどうかについては意見がわかれるところだろう。しかし寝子島であれば別だ。ニャンダムとは今でも連綿と新作が作られるアニメシリーズで、ラクシーン公国は元祖作品の敵側にあたる。ニャンダム系の仮装は寝子島ハロウィンでは定番であり、秋口から大型玩具店ハローニャックでは大量に衣装が陳列されていたものだ。以前はもっとずっとアニメっぽい色使いにチープな質感だったそうだが、最近のニャンダム衣装はできがよく、本物の軍服に近い手触りであった。ラクシーンの一般兵ならベースがカーキ色なので悪目立ちしにくく、それでも非日常感が出せるためパレードに着ていくには無難かつ秀逸なチョイスといえよう。
英二の発言を聞いて、ののこは「ふーん」と言っただけだった。なので当日まで、英二は彼女がどんな衣装を選ぶのかは知らないままだった。
やがて本日夕方となり、英二はののこにNYAINメッセージを送ったのである。
『じゃあ現地集合ってことにしない？ 待ち合わせの時間を決めようよ』
これが英二の文面だ。すると高速でののこからレスがついた。
『待って待って。同じ桜花寮住まいじゃん、一緒に行こうよ☆』
ぽにょにょんとしたアイコン付きである。
『あ……でも一緒に出発するのは何となく照れるような……』
『えーなにそれー？ あっ、わかった。これが世に言う【友達に噂とかされると恥ずかしいし…。】ってやつか！』
『いやそういうのじゃなくて』
『だったら行こうよー。ていうか私、英二くんとおそろだから♪』
おそろ → お揃い → ペアルック！？
ラクシーン公国の女性兵士（ウェーブ）の軍服を着てくるとか。
まさかという驚き、衣装をあわせてくれたんだという喜び、だとしたら傍目からすれば完全にカップルじゃないかという胸の高鳴りと緊張、いろいろな感情に支配されながら英二は桜花寮の玄関でののこを待った。そして、
「お待たせー」
「と、突撃機動軍総司令官！」
あらわれた少将閣下の御姿に、膝を折ってくずれ落ちそうになったのであった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
水樹とヒューはハロウィンパレードと、パレードに沸くシーサイドタウンをそぞろ歩いた。
パレードは漫然と見たというのが正確なところだ。楽しい仮装には笑ったし、手の込んだ仮装には賞賛を送った。けれどもそろって、うわべをなぞるような時間だったというほかない。印象的な瞬間はあるにはあったが、他愛もないと言い換えるほうが適切な数分ないし数十秒でしかなかったから。
目に見えるものではなく会話でもなく、互いの体温が貴重だった。いつしかふたりは手を握り合い、指を絡めて互いの熱を味わっていた。
離したくない。
水樹は思った。離したくないから、つないだ手に力が入る。
異国での空気に流されたとはいえ――水樹は唇をかむ。
こんなにも暖かい手を持つ人を、裏切ってしまった自分が許せない。
パレードにはあまり熱を感じることはなかった。
けれど末尾はまだまだ街中だ。
「あのあたりから入ろうよ！」
野々 ののこがぴょんと飛び込む。
けれど今のののこを、ののこだと認識できる人がどれだけいるだろうか。完璧なまでにコスプレしていたからだ。
オレンジに近い赤毛のカツラを装着し、さらに金の角飾りのついたヘルメットをかぶっている。鼻から下すべてを覆う紫のマスクで顔の半分以上は隠れているし、この紫マスクは首から下はもちろん、ほぼ全身ぴったりと包むタイツ状になっているのだ。広げた翼のような金の肩飾り、赤い裏地の黒マント、肘まである白い手袋、つま先が地面に刺さりそうな白ブーツも威嚇度満点である。バックルの太い白ベルトはファッショナブルといえないこともないが、ライフルらしきものをぶら下げていてものものしい。もっと面長だったらそれこそ悪の組織の女幹部といった風体だったろう。けれど童顔丸顔のののこが扮しているため、ディフォルメされたキャラクターフィギュアっぽくもあった。
僕のこの格好だと、と佐藤 英二は思う。『野々さん』じゃなくて『閣下』とか呼びかけたくなる。
ハロウィンパレードに参加しない？ とののこを誘ったのは英二だ。先週のことである。
「一応、仮装して行こうと思ってるんだ。あ、野々さんは普段着でもいいよ」
もちろんそんな楽しそうな話に、ののこが乗ってこないはずはない。
「仮装？ やるやるー、私もやるー！ 英二くんはどんな格好するの？」
「僕は無難にニャンダムのラクシーン公国の軍服っぽくした服装で行くけど」
はたしてラクシーン兵が無難かどうかについては意見がわかれるところだろう。しかし寝子島であれば別だ。ニャンダムとは今でも連綿と新作が作られるアニメシリーズで、ラクシーン公国は元祖作品の敵側にあたる。ニャンダム系の仮装は寝子島ハロウィンでは定番であり、秋口から大型玩具店ハローニャックでは大量に衣装が陳列されていたものだ。以前はもっとずっとアニメっぽい色使いにチープな質感だったそうだが、最近のニャンダム衣装はできがよく、本物の軍服に近い手触りであった。ラクシーンの一般兵ならベースがカーキ色なので悪目立ちしにくく、それでも非日常感が出せるためパレードに着ていくには無難かつ秀逸なチョイスといえよう。
英二の発言を聞いて、ののこは「ふーん」と言っただけだった。なので当日まで、英二は彼女がどんな衣装を選ぶのかは知らないままだった。
やがて本日夕方となり、英二はののこにNYAINメッセージを送ったのである。
『じゃあ現地集合ってことにしない？ 待ち合わせの時間を決めようよ』
これが英二の文面だ。すると高速でののこからレスがついた。
『待って待って。同じ桜花寮住まいじゃん、一緒に行こうよ☆』
ぽにょにょんとしたアイコン付きである。
『あ……でも一緒に出発するのは何となく照れるような……』
『えーなにそれー？ あっ、わかった。これが世に言う【友達に噂とかされると恥ずかしいし…。】ってやつか！』
『いやそういうのじゃなくて』
『だったら行こうよー。ていうか私、英二くんとおそろだから♪』
おそろ → お揃い → ペアルック！？
ラクシーン公国の女性兵士（ウェーブ）の軍服を着てくるとか。
まさかという驚き、衣装をあわせてくれたんだという喜び、だとしたら傍目からすれば完全にカップルじゃないかという胸の高鳴りと緊張、いろいろな感情に支配されながら英二は桜花寮の玄関でののこを待った。そして、
「お待たせー」
「と、突撃機動軍総司令官！」
あらわれた少将閣下の御姿に、膝を折ってくずれ落ちそうになったのであった。
水樹とヒューはハロウィンパレードと、パレードに沸くシーサイドタウンをそぞろ歩いた。
パレードは漫然と見たというのが正確なところだ。楽しい仮装には笑ったし、手の込んだ仮装には賞賛を送った。けれどもそろって、うわべをなぞるような時間だったというほかない。印象的な瞬間はあるにはあったが、他愛もないと言い換えるほうが適切な数分ないし数十秒でしかなかったから。
目に見えるものではなく会話でもなく、互いの体温が貴重だった。いつしかふたりは手を握り合い、指を絡めて互いの熱を味わっていた。
離したくない。
水樹は思った。離したくないから、つないだ手に力が入る。
異国での空気に流されたとはいえ――水樹は唇をかむ。
こんなにも暖かい手を持つ人を、裏切ってしまった自分が許せない。
パレードにはあまり熱を感じることはなかった。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2023年01月15日
- 参加申し込みの期限
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- 2023年01月22日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2023年01月22日 11時00分
