ピョンっ！と跳ねて、新春☆初夢フェア２０２３！　～茄子編～｜リアクション

ピョンっ！と跳ねて、新春☆初夢フェア２０２３！　～茄子編～

　昔々、ある所に小さな王国がありました。賢い王様と、優しい王妃様が治めておられるその王国は、誰もが飢える事なく幸せに暮らしておりました。
　さて、ある日の事です。今年で16歳になられた王子様が、お妃様をお選びになるための、舞踏会が開かれることになりました。
　舞踏会には、貴族も庶民も、国中の年頃の娘たち誰もが参加することが出来ました。だから佐和崎紗月のところにも、その舞踏会の招待状が、お城から届けられました。
　受け取った紗月は、びっくりしてしまいました。

「え、あの……私も……？」
「はい。国中の、すべての娘さんが参加できるのですよ」

　どうやら紗月が緊張しているらしい、と思ったお城のお使いは、安心させるようににっこりして、次の娘さんへの家へと向かいました。けれども残された紗月は、とても困った顔で俯いてしまいます。
　舞踏会に参加するなんて、想像しただけでとても、とても恐ろしい事でした。ぎゅっと我が身を抱いて小さく震える紗月を、けれども両親は喜んでドレスを着せて、楽しんでいらっしゃいと送り出しました。
　うぅ……とお城に着いた紗月は、困り顔でおどおどしながら、大広間を見回します。右を向いても、左を向いても、綺麗に着飾った年頃の少女達が楽しげに、あるいは誇らしげに頬を紅潮させ、舞踏会が始まるのを待っていました。
　と、その中に見知った顔を見つけ、紗月はほっと安堵の息を漏らして駆け寄りました。

「理緒ちゃん」
「あ、やっぱり紗月も来てたんだ？」

　それは紗月にとって特別な存在である、初瀬川理緒でした。奇麗な髪を高く結って背に流し、身体に沿う紫のドレスを身に纏った理緒はとても綺麗で、紗月はうっとりと目を細めました。
　そんな紗月をじっと見て、理緒がにっこりします。

「紗月、すごく綺麗だね。そのドレス、やっぱり良く似合ってる」
「本当？　ありがとう、理緒ちゃん。理緒ちゃんも、とても綺麗」

　紗月が身に纏っているドレスは、実は理緒が以前に仕立てに付き合って、紗月に似合うものをと誂えてくれた物でした。鮮やかな黄色のスカートが、紗月の動きに合わせてふわりと揺れます。
　大好きな理緒に褒めてもらって、紗月は嬉しそうに頬を染め、はにかみました。そうして相変わらずうっとりしながら理緒のドレスを褒めた紗月に、ありがとう、と理緒が嬉しそうに笑います。
　そんな話をしておりましたら、ふいに、大きなラッパの音が鳴り響きました。

――パッパ―！　パッパラッパパー！
「王様と王妃様、王子様のおなーりー！」

　次いで高らかな声がそう告げると共に、広間の入り口が大きく開かれ、まずは王様と王妃様が、その後ろから王子様が、しずしずしず、と入って来られます。
　広間に集まったお妃候補の少女達は、頭を下げて王様達をお迎えしました。その中で、理緒と紗月は寄り添って頭を下げながら、こそこそと小さな声で話していました。

「ねえ紗月、このままこっそり抜け出さない？　あたしのお妃さまは紗月だけだもん」
「うん。私のお妃さまも理緒ちゃんだけだよ」

　そう言いながら紗月はこっそり、でも理緒ちゃんはどちらかと言えば王子様かもしれない、と思いましたが、口には出しませんでした。へへ、と理緒が嬉しそうに紗月の手をぎゅっと握ります。
　そうして2人のお姫さまは手に手を取り合って、仲良くお城から逃げ出しましたとさ。