ピョンっ！と跳ねて、新春☆初夢フェア２０２３！　～茄子編～｜リアクション

ピョンっ！と跳ねて、新春☆初夢フェア２０２３！　～茄子編～

　空には歌が満ちていた。いつも、いつでも。
　歌は、祈りだ。人間達の祈りであり、動物達の祈りであり、天使達の祈りであり――数多の祈りが歌となり、歌がまた祈りとなる。
　それを、弥逢遊琳は知っていた。知っていて、もうずっと長い間、その祈りの歌に揺蕩っていた。
　遊琳は、地上の人間達を愛していた。人間達の営みを、慈しみを、悲しみを、愛おしみを、苦しみを、その目まぐるしいあらゆる感情に輝く人間を、心の底から愛していた。
　人間。いと高き所にいます方の姿を模して生み出された、小さく、か弱く、愚かな者たち。
　その――愚かさを遊琳は知っていた。見つめていた。彼の方が悲しみ嘆くその横で、遊琳も同じように悲しみ嘆きながら、あの小さき者達を愛しんだ。

「―――」

　声が聞こえる。ふ、と目を開いていと高き空を、遊琳の敬愛する主人であり想像主であり、優しい守護者である彼の方が居る場所を見上げた。
　姿は、見えない。いつの頃からか、遊琳のような天使達の前にすら、彼の方は姿を現さなくなってしまった。
　けれども、そこに居る事はいつでも感じているから。
　遊琳はそっと、笑みを零す。

「どうしたんだい？」
「――祈りを」

　それに返ってきた答えは短くて、変わらないな、と遊琳は今度は親しみのこもった笑みを浮かべた。いと高き天にいます尊き方、彼をけれども親しき友と呼んでいた日々はもう、遥かな時の向こうに流れ去ってしまったはずなのに。
　声の響きも何もかも、まるで昨日の続きのようで遊琳は数瞬、瞑目する。それからそっと瞳を開いて、うん、と頷きを返した。
　囁くような声色は、空に満ちる祈りの歌にかき消されて、自分自身にすら聞こえない。けれども彼には聞こえているはずだから、うん、ともう1度小さな小さな応えを返す。

「祈るよ。地上に満ちる命のために――そして君のために」

　遍く祈りを言葉にのせて、紡ぐ響きは歌となって。静かに、静かに、静かに。
　すぐ傍でそぅっと耳をそばだてて、注意深く聞いていなければすぐにも聞き逃してしまいそうな、さやかで透明な祈りの歌を、遊琳は歌い、祈る。祈り、歌う。

　だって――あの人間達を、君は嘆き、悲しみ、それでも愛しんだのだから。

　厳かな面持ちで慈愛の歌を、遊琳は細く、静かに歌う。歌い、祈る。

　どうか、どうか、どうか。
　嗚呼、どうか、願わくば。
　地上に生きる命達に、幸いがありますように。
　優しきもので、世界が満ち満ちますように。
　――僕の誰より大切な君が、心安らかに過ごせますように。
　どうか、どうか、どうか――嗚呼、どうか。

　それは遥かな過去から未来へととこしえに続く、小さな小さな愛の歌。

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あとがき

担当マスター：蓮華・水無月
ファンレターはマスターページから！

いつもお世話になっております、または初めまして、蓮華・水無月と申します。
この度はご参加頂きまして、本当にありがとうございました。

皆さまのイラストに水無月が好きなように（ええ、もう本当に好きなように！）綴らせて頂いた物語、いかがでしたでしょうか。
初夢だしこんなのも良いかしら、こんな感じも面白いかな、と頑張って執筆させて頂きました。
どのイラストもそれぞれに素晴らしく、素敵でしたので、どんなお話が良いかなと考えるのはとても楽しく、大変に眼福なひと時でございました。
いえあの、もう本当に好き勝手にさせて頂いてしまったのですが……ほら、夢だし……

お届けさせて頂きましたリアクションが、皆様に僅かなりとも楽しんで頂ける物であれば、心から嬉しく思います。
またのご縁がございましたら、どうぞ宜しくお願いいたします（深々と

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