【演劇祭】舞い廻れ、ロミジュリたちよ！｜リアクション

【演劇祭】舞い廻れ、ロミジュリたちよ！

●第六幕　海賊黄金時代のロミジュリ

　ざざん、ざざんと波音。
　ステージの背景を覆うように風でたなびく青い布は、広大なカリブ海の波。
　黒い布にざっくり書かれた白い髑髏は海賊旗ジョリーロジャー。
　ラッセルが買ってきた布とペンキで、ソラが急ごしらえで作ったものだが、勢いのある描きっぷりが却って、海賊の荒々しさが出ていていい。

「時は海賊黄金時代。海賊たちが横行するカリブ海に、ロミオと呼ばれる海賊の女首領がいました」

　上手側から手下を従え登場したのは、引き締まったくびれを惜しげもなく晒した朝鳥さゆるだ。
　同居中の恋人と演劇祭を観に来たところを、フジコの指名を受けて舞台に上がることになったさゆるだったが、ガーネット色のロングコートといい、頭に巻いたバンダナといい、海賊衣装が似合っている。

「そんなロミオの運命の相手は、カリブの黒魔女の異名をとる女海賊ジュリエット！」

　ロミオ海賊団とは反対側に、手下を従え登場したのは、姫木じゅん。

「ああ、ロミオ！　私たちは互いに敵対する海賊団の首領！　ここで会ったが百年目！」
「ええそうね。幾度干戈を交えたかしら！　行くわよ、カリブの黒魔女ジュリエット！」

　同時に剣を振り上げ号令する。
　手下たちが乱れて戦いあう中を縫って、舞台中央に躍り出るロミオ／さゆるとジュリエット／じゅん。
　刃を交えた瞬間、戦いあう手下たちは時が止まったように静止し、二人だけにスポットライトが当たる。
　戦いの中、手下たちにはバレぬよう交わされる二人だけの秘密の会話。
「逢いたかったわ、ロミオ。今宵、いつもの浜辺で会える？」
「勿論よ、ジュリエット。私も貴女との逢瀬が待ち遠しかった」
「愛してるわ、ロミオ」
「私もよ、ジュリエット」
　二人は恋人同士なのだ。幾度も相まみえるうち互いにひかれあい、やがて恋に落ち、逢引を重ねて。

　二人の関係が観客に示されたところで手下たちが戦いの続きを始める。
　一進一退の戦いを続ける両陣営。そこに水夫の格好をしたモブ役のののこが駆けこんでくる。
「てえへんだ！　海軍提督マクベスの艦隊だ！」
　ずんと響く低音の太鼓に合わせ、双眼鏡を構えた白い海軍軍服のマクベスが部下を従え登場する。
「ロミオ海賊団とカリブの黒魔女ジュリエット……ああして戦っているけれど、二人が密かに逢引を重ねる恋人同士だという情報は掴んでいるのよ」
「マクベス提督、何か策が？」
　またしても部下役に駆り出されたラッセルが尋ねる。
「あるわ。二つの厄介な海賊団を一網打尽にする策がね。すでに内通者を送り込んであるの。敵対しあう海賊団の首領同士が愛し合っているなんて知ったら、手下たちはどう思うかしらね？　フフフ……」

　マクベスに当たっていたスポットライトが消えると、ロミオ陣営の手下の一人が声を上げた。
「おい、知ってるか！？　ロミオのボスは、カリブの黒魔女とデキてるらしいぜ！」
「なんだって！？」
「こうして戦っているフリをして、俺らを黒魔女に売るつもりなんだ！」
　一方、ジュリエット陣営でも。
「ジュリエットの姉御がロミオとデキてるって！？」
「姉御が俺らを裏切ってたっていうのか！？」
「うおおおーーー、俺たちの姉御が！？　ゆ、許せねえロミオ！」
　千々に乱れる海賊たちを見て、舞台袖のマクベスがほくそ笑む。
「フフ、そうよ、互いに疑いあい、消耗なさい！　さあ、我が海軍の諸君！　海賊船に船をつけ、渡し板をかけよ！　ロミオもジュリエットも手下たちごと殲滅しておしまい！」
　マクベス兵も剣を掲げて舞台の上に切り込んできて、ステージ上は三つ巴の混戦となる。
「手下ども、気に食わないでしょうけどここはジュリエットと共同戦線を張るわ！」
　ロミオ／さゆるが叫べば、ジュリエット／じゅんも叫ぶ。
「敵はマクベス！　ロミオ海賊団に続くのよ！」
　マクベスが参戦したことで皮肉にも、敵対していた海賊団は手を組んで海軍に戦いを挑むこととなる。
　が、時すでに遅し。
　互いの陣営で最初に噂を流した内通者により、ロミオ／さゆるとジュリエット／じゅんは捕えられてしまう。

　暗転ののち、場面が変わって。
　戦っていた手下や海軍たちは掃け、とある島の浜辺のシーンとなる。
　すでに十字架に掛けられているジュリエット／じゅんのもとへ、縄打たれたロミオ／さゆるがマクベスに引きずられるようにして連れられてくる。
「ジュリエット……！」
　十字架を見て愕然とするロミオ／さゆるは、マクベスを振り切り、ジュリエット／じゅんのもとへ駆け寄る。
「……ロミオ」
　ゆるゆると瞼を開けるジュリエット／じゅん。
　ロミオ／さゆるはつま先立ちになり。
「貴女ひとりでは逝かせないから」
　そう言って恋人の頬を撫でるロミオ／さゆるの背後では、マクベスが鬼気迫る表情で剣を振り上げていた。
「そうねっ、二人で逝きなさい、あの世へ！」
　ぐさりっ。効果音に合わせ、マクベスは二人いっぺんに串刺しにする。
「ロミ、オ……」
「ジュリ、エット……」
　二人はキスを交わしながら、哀しくも息絶える――。

このページにイラストを設定する

【演劇祭】舞い廻れ、ロミジュリたちよ！

シナリオ

シナリオデータ

シナリオスケジュール

参加キャラクター一覧