【生徒会選挙】威風堂々。挑め、生徒会甲子園！！｜リアクション

【生徒会選挙】威風堂々。挑め、生徒会甲子園！！

◆知略縦横

　月原想花は生徒会役員に立候補したものの、対立候補が出なかったため選挙を行うことなく生徒会役員になった。しかしそれで終わりとはならず、なぜか生徒会甲子園というイベントが開催され、それに出場することになった。

「なんでこう派手なことをするんだろう。ぼくはこういうの苦手なんだけど……」

　会場には各学校の生徒会執行部と、その応援にやってきた人たちでにぎわっていた。今年は１０回目というメモリアルな大会ということもあり、大いに盛り上がっていた。とはいえ、逃げの手を打つのもなんだか癪だった。仕方なしという気持ちはありつつも、やれるだけのことはやろうと気持ちを切り替える。
　彼女が出場するのは『バンカラ競歩＜威風堂々＞』。走者は学ランとマントを身に着け、学帽をかぶる。そして細長いランウェイを歩き、いかに生徒会らしく威風堂々と歩き切れるかを競う。ただ想花は走者ではなく援護側として参加する。
　この競技では他校の走者を巨大送風機や巨大うちわで風を起こして攻撃することができる。また、自校の走者に後ろから追い風を送ることで援護も可能だ。競技中に帽子が吹き飛ばされると走者が拾いに行き、飛ばされたポイントから再スタートとなる。

「タイミングが合わないと味方の帽子が飛んじゃうから、慎重にしないと」

　スタートの合図と同時に走者が一斉に歩き出す。あくまで威風堂々と歩き切れるかが勝負なので、短距離走のようにいかにタイムを短くするか、といった感覚とはかなり異なる。
　どの選手もそれなりに進んでいるが、想花は巨大送風機を構えたまま動かずにいた。彼女は風をやみくもにあてたところで効果がないと考えている。だから『狙い撃ち』をするために頭を回転させる。

（味方走者と相手走者の位置関係と移動速度、体格など……考えることは多い）

　おそらく仕掛けて成功する瞬間は限られている。それを逃さないように集中して状況を見定める。

（今だ！）

　ここというタイミングで風を相手校の選手にたたきつける。狙いすました一点攻撃で見事に帽子を吹き飛ばした。

（よし、今の感覚を基に他校の生徒にも攻撃を仕掛けよう）

　この『狙い撃ち戦法』は他校の生徒にプレッシャーを与えた。ずっと吹きつける風に耐えながら、突然鋭い矢が飛んでくるような感覚。想花自身はそこまでの効果を予見していなかったかもしれないが、場に対してかなり効いている。
　また妨害だけでなく味方へのサポートも忘れない。こちらは援護側の他メンバーと息を合わせて一気に追い風を作り出す。この追い風が効果的に働き、寝子島高校は上位をキープしたままゴールに到着した。