華やかなステージにようこそ｜リアクション

華やかなステージにようこそ

　広々としたフロアに銀色のポールが何本も立ち並び、絡み付いた人々が個々のトリックの完成度を高めていく。
　その一本に城山水樹がいた。手足を露出した格好でトリックを繋げていく。定番のフロースピンやバックスピンをこなし、軽く跳んでポールを抱え込むようにして回るタックスピンを決めた。
　水樹はポールを離れた。壁際に置いていた私物のタオルで顔や首筋を拭いた。両手を髪の中に潜り込ませて軽く汗を払う。
　フロアに座ると置いていたペットボトルの栓を開けた。口を付けて傾ける。半分を一気に喉に流し込んで息を吐き出す。
　一息入れたところで他の者達のポールダンスを眺める。中には初心者も含まれていた。ポールを脚で挟んだ部分が痛むのか。降りたあと、やたらと手で摩る。
　――私も最初はあんな感じで苦労したわ。今は身体が慣れてきていろんな技が使えるようになった。完成度を極めようとするとまた大変なんだけど、その深みが魅力なのよね。
　別のポールに目をやると若い女性が難度の高いトリックに挑戦していた。姿勢が維持できないのか。すぐにポールを離してフロアにへたり込む。
　水樹は労わるような目で小さく頷いた。
　――難しい技を試してみたくなるよね。私もポールダンスを初めて一年が経つから、その気持ちはよくわかるよ。
　水樹は視線を落とし、スマートフォンを手にした。気分転換とばかりに起動させて、ねこったーの情報に目を通した。
「……ポールダンスの募集ね」
　内容を読み込むと即座に檜原友美へ電話を掛ける。
　――友美が切っ掛けで始めたポールダンスだけど、たまにはこちらから巻き込んでもいいよね。
「あ、友美。面白い話があるんだけど」
『どんな話？』
　世間話を交えながら二人は一日限定のポールダンスに参加することを決めた。

このページにイラストを設定する