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BABY STRANGE
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バックヤードの丸椅子に座り、九鬼姫はぼんやりと鏡を見つめている。
真遠にみちる、アーナンドも来ている。黒服の
ゴンザレス
もいる。九鬼姫以外は全員、眉間にしわがきざまれていた。店とバックを区切るカーテンのむこうでは、映画のサントラでおなじみのゆったりとしたスローバラードが流れ、ときおり笑い声が起こっているだけに異様だった。
「悪いが財布を見るぞ」
「……おう」
真遠はひざまずくようにして、九鬼姫の私物入れから財布をとって中身を調べた。『八幡かなえ』名義の健康保険証があった。
いまさらながら感謝したい真遠である。キャバ嬢であれ黒服であれ、よくあるこの手の店のように個人事業主扱い――ていのいい無責任契約――をせず、れっきとした正社員契約をしているアーナンドに対してだ。おかげで賃金はいくらか少ないかもしれないが、万が一彼ら彼女らが長期入院することがあっても、健康保険の傷病手当など保障を受けることができるのだから。そんな想像はしたくないが、不幸にして障がいを負うことになったとしても、その後受けられるものに個人事業主と社員とでは天地の差があるのだ。
「大丈夫じゃ。鼻血は止まった。救急車はいらんよ……」
つぶやくように九鬼姫は言った。
「……ただ、あやつを呼んでくれんか」
九鬼姫はふふっと、夢見心地の赤ん坊みたいに笑った。
「あとで、『なんで教えてくれなかったのよー』などと怒られてはかなわんからの」
「星太郎さんですね」
アーナンドは察している。精一杯の笑顔でうなずいた。
「さっきNYAINメッセージ、来ました。もうこっちに向かってるそうです」
叫んだり錯乱したりと、尋常でない反応を示さないよう自分に言い聞かせてここまできた。
けれどどうしても、
「……九鬼姫ちゃん!」
木野 星太郎
は声はうわずるのを感じていた。天井の低いトンネルにいるかのようにエコーする。
「ちょっとアーナンドちゃん、若先生も、何がどうなったの?」
九鬼姫がバックヤードに来てからまだ、ものの数分も経過していない。もともと星太郎は来店予定だったのだ。知らせを受けて猛ダッシュしたおかげで、時間がいくらか早くなったにすぎない。
「びょ、病院行って……えっと、きゅ、救急車かしら。それとも鼻に何か詰める?! ……ああもう何したらいいのよう!」
「うろたえるでない」
ほかならぬ九鬼姫自身が星太郎に言った。血に染まった布をとりのけ、穏やかな表情を向ける。
「そういう状態は終わっておる。まあ、なんとかなっとるわえ」
いくらか血色が悪いが、微笑していた。
「……木野さん、どうやら九鬼姫の事情をご存じのようですが」
真遠の言葉に星太郎はうなずく。
「ええ、この子から聞いたわ。状況も、ホントの名前も……」
後がないことも、という言葉は呑みこんだ。急に十数年老けこんだような声色だった。
「なあ、悪いが皆よ」
ぐるりと周囲を見渡したのは九鬼姫である。
「星太郎とふたりにしてくれんか? わらわは大丈夫じゃ。急を要する状況ではない。病院は明日行く。約束する」
だが、とか、でも、と言おうとした真遠とアーナンドを止めたのはみちるだった。
「彼女の言うとおりにしてあげましょう。私たちは、店で打ち上げのつづきを」
「……すまんの」
九鬼姫にしてはめずらしいことだが、彼女は頭を下げたのだった。どういたしましてと告げてみちるは真遠の背を押し、アーナンドとゴンザレスにも退場をうながした。
みちるが断じる以上仕方がない。真遠も従うことにした。カーテンのむこうは明るい。頼みましたと告げてアーナンドたちも店に戻る。
真遠らを見送って、星太郎は自分も丸椅子を引っ張ってきて座った。
「九鬼姫ちゃん……」
「おい」
判決を言い渡す裁判官のように、奇妙なほど落ち着いた声で九鬼姫が言った。
「どんな話をするつもりかしらんがここはキャバクラじゃ。酒を飲んで憂(う)さをはらす場所じゃろう。なんか呑め。注文ならわらわが聞く」
時間制の料金はもう発生しとるからな、と言って九鬼姫はにやりとした。
この発言が九鬼姫の強がりだと星太郎は理解している。けれど、強がりを無視するつもりはなかった。
「そう……」
星太郎はなんとか笑顔になるよう努める。
「じゃ、じゃあなにか軽いお酒えもいただこうかしら……」
「悪い。ここにはこれしかないわい」
棚からウイスキーのボトルを取り出すと、九鬼姫はどんと鏡台に置いた。有名な銘柄だ。スモーキーだが芯の強いブレンデッドウイスキーである。もしかしたら九鬼姫の私物かもしれない。
「許せ。そして、付き合え」
九鬼姫はねじ切るようにしてキャップを取ると、ボトルごとぐいとあおってそのまま差し出した。つまり、グラスすらもないということだ。
「間接キッス……」
「嫌ならいいぞ」
「そんなわけないじゃないの!」
見くびらないでよねと声を上げ、星太郎はボトルを受け取って口づけた。まろやかな味のスコッチだ。どすんと力強くもけれんみのない味である。どことなく甘いのは気のせいだろうか。
星太郎の動きを満足げに眺めて九鬼姫は言った。
「すまなんだな、沖縄旅行。タイミングがあわなくて」
星太郎もプロムナードファミリーの一人として旅行に呼ばれていた。だが参加はかなわなかった。
「九鬼姫ちゃんのせいじゃないわ。アタシこそ、行けなくてごめんなさい」
「おう」
それで、と星太郎は唇を一度かんでから告げた。
「調べたの、アタシ。アナタが自分のことを打ち明けてくれてから」
「何をじゃ?」
「治療法……アタシは、九鬼姫ちゃんに治療を受けてほしいと思ってるの。だから学んだわ。身体への負担の少ない手術があること、放射線治療があること、投薬する方法があることも……できる範囲でぜんぶ調べたから。料金も、寝子島でできる病院も、寝子島外で大丈夫な所も調査ずみよ。金銭的な負担は気にしないで。アタシが全部出すから」
九鬼姫が紙芝居みたいに破顔一笑し、『ならば左様にしようぞ!』と小躍りするところなど星太郎は期待していなかった。それでも、いくらかは前向きな姿勢や、興味を示すものとは思っていた。
しかれど九鬼姫の反応はいずれとも異なり、至極淡々としたものだった。
「よすがいい」
説得される側は自分のはずなのに、むしろ言い聞かせるように九鬼姫は言ったのだった。
「……星太郎よ、無駄づかいはやめておけ。わらわの命運は決まっておる。そも、赤の他人のわらわに、なぜそこまでする?」
星太郎から受け取ったボトルをまた一口して、口もぬぐわず九鬼姫は差し出した。
星太郎はボトルのネック部分を握る。
ええいままよ、琥珀の液体を大きくあおった。視線は九鬼姫に向けたままだ。
水でもソーダでも氷でも割らぬ蒸留酒特有の、釘バットでぶん殴ってくるような味が舌をしびれさせる。だが味は悪くない。いや、強いがまろやかで芳醇で、はっきり美味だといっていい。胃から炎が上がってくるような後味も平気だ。
「なんでそこまで、って……アタシもわかんないわ」
アルコール度数三十七パーセントなにするものぞ、星太郎は見せつけるようにさらに呑んだ。
「好きな人には笑ってもらいたい、ただそれだけなのよ!」
「好きな人って……わらわのことがか?」
「ほかに誰がいるのよ」
九鬼姫ちゃんのためなら、と星太郎はきっぱりと一切の迷いなく言った。
「どんな労力だって、お金だって、問題ないの」
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
NPC交流
オールジャンル
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2022年08月23日
参加申し込みの期限
2022年08月30日 11時00分
アクション投稿の期限
2022年08月30日 11時00分
参加キャラクター一覧
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