- 0
- 0
- 種族
-
- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
BABY STRANGE
意外と手間取ったなぁ。
日が落ちるのが早くなったようで、教室の外ではいつのまにか昼が終わっていた。空はソフトフォーカスの黄金色、いわゆるマジックアワーの時間帯なのだった。ハトだろうかカラスだろうか、鳥のシルエットが羽を広げ飛んでいくのが見える。
教室には自分ひとりだ。
ふと思いたって学校に残り、稲積 柚春は無人の教室でその日の宿題を終えてしまうことにしたのだった。
帰宅すると誘惑が多い。ついMewTubeアプリをだらだら観たり、アロマオイルの調合に夢中になったり、カプギアворの調整、いや、おめかしに没頭したりと、時間がごっそり消え失せる罠で満載だ。たとえ課題をてがけはじめても、ちょっと休憩のつもりでベッドに倒れこんで、そのまま熟睡朝にタイムワープなどという危険もある。宿題遂行をさまたげる要素はもりだくさんといっていいだろう。
無人の教室での作業ははかどった。冷房の効きが悪くていささか空気はじったりしているものの、机に向かっているうちに忘れてしまった。BGMはずっとシャープペンシルのカリカリと消しゴムのゴシゴシくらい。あとはひたすら課題の消化だ。自分でも満足いく出来にしあがったノートと、ノンストップで動かしていた利き腕の筋肉痛が成果として残った。
「さて」
つぶやいて柚春は立つと、直立したミニチュアダックスの気分でうーんと伸びをする。関節がパキパキと鳴る音すらこころよい。
せっかくだし、このまま職員室に提出してしまおうか。
まちがいなく一番乗りだろう。帰宅しても宿題のことを考えずにすむというのも気持ちがよさそうだ。
それに、とつぶやくと柚春の頬はゆるんだ。
ウォルターさん――いやいや、学校では『ウォルター先生』に会えるかもしれないし。
「どうしたんだい、こんな時間まで学校にいるなんて」
彼は自分を見てこう言うだろう。
「部活か……？ いや、稲積は部活は入っていなかったなぁ」
「居残りで宿題をやってました！」
力いっぱいこうこたえたい。
「感心だねぇ」
こんな風に褒めてもらいたいから。
でも僕はこう言うんだ。
「ちがいます。家にいたら、先生のことばかり考えてしまいそうだからです！」
「ちょっ、おい稲積っ、ここ学校、ここ学校……っ」
彼は水色の綺麗な瞳を見はって慌てるかもしれないし、逆に、
「なんにせよ雑念はよくないなぁ」
クールにこう返すかもしれない。でも色素の薄い頬を、ほんの少し赤く染めていたりして。
どちらの反応でもウォルター先生っぽいと思う。どちらの反応でも、きっと稲積は嬉しくなるだろう。
先生がどんな反応をするのか見たいな。すぐ見たい。
なので柚春はスキップするようにして、廊下を駆けて職員室への階段を目指した。
「失礼しまーす」
で職員室に入って、
「失礼しましたー」
で柚春は職員室を出た。この間わずか数分だった。仕方なく校門を目指し歩き出す。
胸のなかでふくらみかけた風船が、しおしおとしぼんでいくのを柚春は感じている。
ウォルター先生は席を外していたのだ。ぐるり見回すと三年生の担任は全員姿を消していた。連れだって飲み会にでも行ったか、どこか空き教室で学年担任会議でもやっているのだろう。
時間帯からして後者の可能性のほうが高い。
でなければひょっとして、校庭で奇数クラスチームと偶数クラスチームにわかれてバレーボールでもしているとか……？
「はい、トース」
と雛鶴 さゆりが打ち上げたボールを、
「アタック！」
と樋口 弥生がスパイクする。想像のなかなので、こんな状況下でも弥生は着物姿だ。
急回転し稲妻のごとく相手コートに突き刺さらんとする白いボール。
「うわー」
白衣姿の五十嵐尚輝はまったく取ることができずただオロオロするだけなのに、
「五十嵐先生、大丈夫ですからねぇ」
優しいウォルターは彼を責めたりせずに、ワイシャツが破けようが気にせずスライディングレシーブを決めるのだ。ウォルターに打ち上げられた球ははるか成層圏に届くほど高く高く上昇し、三年担任教師陣は落下をじりじりと待ち受ける……。
やはり想像のなかでもウォルター先生は格好いい。
まあ、ありえないシチュエーションではあるけど。
！？
柚春は目を疑った。雛鶴さゆり先生その人が、柚春のなかの想像よろしく、トスを上げるポーズを取っているのを目撃したからだ。
といってもこれは、頭上にある棚に両手を伸ばす姿勢だった。柚春が通りかかった部屋は給湯室、さゆりはそのなかにいる。
「雛鶴先生、お茶でも入れるんですか？」
「えっ？」
とさゆりが言ったとき、棚からお茶っ葉を入れた丸い缶が落下して、彼女の頭を直撃した。
日が落ちるのが早くなったようで、教室の外ではいつのまにか昼が終わっていた。空はソフトフォーカスの黄金色、いわゆるマジックアワーの時間帯なのだった。ハトだろうかカラスだろうか、鳥のシルエットが羽を広げ飛んでいくのが見える。
教室には自分ひとりだ。
ふと思いたって学校に残り、稲積 柚春は無人の教室でその日の宿題を終えてしまうことにしたのだった。
帰宅すると誘惑が多い。ついMewTubeアプリをだらだら観たり、アロマオイルの調合に夢中になったり、カプギアворの調整、いや、おめかしに没頭したりと、時間がごっそり消え失せる罠で満載だ。たとえ課題をてがけはじめても、ちょっと休憩のつもりでベッドに倒れこんで、そのまま熟睡朝にタイムワープなどという危険もある。宿題遂行をさまたげる要素はもりだくさんといっていいだろう。
無人の教室での作業ははかどった。冷房の効きが悪くていささか空気はじったりしているものの、机に向かっているうちに忘れてしまった。BGMはずっとシャープペンシルのカリカリと消しゴムのゴシゴシくらい。あとはひたすら課題の消化だ。自分でも満足いく出来にしあがったノートと、ノンストップで動かしていた利き腕の筋肉痛が成果として残った。
「さて」
つぶやいて柚春は立つと、直立したミニチュアダックスの気分でうーんと伸びをする。関節がパキパキと鳴る音すらこころよい。
せっかくだし、このまま職員室に提出してしまおうか。
まちがいなく一番乗りだろう。帰宅しても宿題のことを考えずにすむというのも気持ちがよさそうだ。
それに、とつぶやくと柚春の頬はゆるんだ。
ウォルターさん――いやいや、学校では『ウォルター先生』に会えるかもしれないし。
「どうしたんだい、こんな時間まで学校にいるなんて」
彼は自分を見てこう言うだろう。
「部活か……？ いや、稲積は部活は入っていなかったなぁ」
「居残りで宿題をやってました！」
力いっぱいこうこたえたい。
「感心だねぇ」
こんな風に褒めてもらいたいから。
でも僕はこう言うんだ。
「ちがいます。家にいたら、先生のことばかり考えてしまいそうだからです！」
「ちょっ、おい稲積っ、ここ学校、ここ学校……っ」
彼は水色の綺麗な瞳を見はって慌てるかもしれないし、逆に、
「なんにせよ雑念はよくないなぁ」
クールにこう返すかもしれない。でも色素の薄い頬を、ほんの少し赤く染めていたりして。
どちらの反応でもウォルター先生っぽいと思う。どちらの反応でも、きっと稲積は嬉しくなるだろう。
先生がどんな反応をするのか見たいな。すぐ見たい。
なので柚春はスキップするようにして、廊下を駆けて職員室への階段を目指した。
「失礼しまーす」
で職員室に入って、
「失礼しましたー」
で柚春は職員室を出た。この間わずか数分だった。仕方なく校門を目指し歩き出す。
胸のなかでふくらみかけた風船が、しおしおとしぼんでいくのを柚春は感じている。
ウォルター先生は席を外していたのだ。ぐるり見回すと三年生の担任は全員姿を消していた。連れだって飲み会にでも行ったか、どこか空き教室で学年担任会議でもやっているのだろう。
時間帯からして後者の可能性のほうが高い。
でなければひょっとして、校庭で奇数クラスチームと偶数クラスチームにわかれてバレーボールでもしているとか……？
「はい、トース」
と雛鶴 さゆりが打ち上げたボールを、
「アタック！」
と樋口 弥生がスパイクする。想像のなかなので、こんな状況下でも弥生は着物姿だ。
急回転し稲妻のごとく相手コートに突き刺さらんとする白いボール。
「うわー」
白衣姿の五十嵐尚輝はまったく取ることができずただオロオロするだけなのに、
「五十嵐先生、大丈夫ですからねぇ」
優しいウォルターは彼を責めたりせずに、ワイシャツが破けようが気にせずスライディングレシーブを決めるのだ。ウォルターに打ち上げられた球ははるか成層圏に届くほど高く高く上昇し、三年担任教師陣は落下をじりじりと待ち受ける……。
やはり想像のなかでもウォルター先生は格好いい。
まあ、ありえないシチュエーションではあるけど。
！？
柚春は目を疑った。雛鶴さゆり先生その人が、柚春のなかの想像よろしく、トスを上げるポーズを取っているのを目撃したからだ。
といってもこれは、頭上にある棚に両手を伸ばす姿勢だった。柚春が通りかかった部屋は給湯室、さゆりはそのなかにいる。
「雛鶴先生、お茶でも入れるんですか？」
「えっ？」
とさゆりが言ったとき、棚からお茶っ葉を入れた丸い缶が落下して、彼女の頭を直撃した。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2022年08月23日
- 参加申し込みの期限
-
- 2022年08月30日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2022年08月30日 11時00分
