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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
満ちるのは月か心か、それとも？
これだけ明るい月明かりならば、本も読めただろうか。
けれど、せっかくのお月見に活字に魅入ってしまうのも勿体ない。倉前 七瀬はゆっくりお月見をするためには、と考えて。
「やはりお月見団子は外せませんよね」
兎にも角にも必要なのはお団子だ。老舗の和菓子屋、お祭りの露店……どれも悩ましいけれど、それを買ってどこで食べよう。
昼間は残暑が厳しくもあるが、夜には秋風も吹いてくる。そんな中で、まったりのんびりできる場所といえば――あれしかない。
温泉街には、縁日ほどの賑やかさはないものの、ぽつりぽつりと露店があった。
狙い通り団子の店もある、足湯もさほど遠くない。完璧な布陣にふふりと笑ってみたけれど、まだ飲み物が決まってない。
（大人やったら月見酒といきたいところですが、まだ飲めないですし……） 
月夜を連想させるネーミングのカラフルなゼリーが入ったソーダ水なんかもあるけれど、団子のお供にと考えると何かが違う。ここは無難にお茶かなあ、なんて考えていたところに見えたのぼりは甘酒。
「これですー！」
アルコールが入ってないけどお酒と名が付き、月夜にも団子にも合いそうだ。勢いのままに購入し、準備万端とばかりの笑顔で足湯に向かう。
これで月夜に必要な物は揃った。秋風で冷える心配も無いし、ひたすらのんびりまったり月を眺められる。
（……あとは）
会えたらいいなぁと、月を見上げる。
同じ月を眺めているだろうけど。こんな月夜だからこそ、伝えたい言葉。
どこか露店を覗いてないだろうか、足湯に来てやしないだろうか。ちょっとワクワクする気持ちとともに歩み進めれば、足湯の脇にかけられた温泉効能の看板をウォルター・Bが眺めていた。
「おや先生、奇遇ですねぇ」
「こんばんは、倉前。こんな所まで足を伸ばしてお月見？」
もちろんとばかりに団子と甘酒を見せて、笑ってみせる。
「足湯に浸かりながらお団子に月見酒です。大人でしょう？」
「お酒にこだわるところが、まだまだ子供っぽいけどねぇ」
手厳しい。
だけどこうやって、柔らかな口調で棘のある物言いをするのも、彼の魅力のひとつだ。こんな言葉で、すごすごと身を引くほどヤワではない。
「もしお時間あったらご一緒しましょうー」
時計を確認し、「少しだけね」と微笑む彼とお月見ができる。例えそれが僅かな時間でも、一緒に月を見上げられるということが嬉しかった。
月といえば。
以前観覧車に乗ったとき、ウォルターは月の模様の話をしてくれた。
日本では餅つきをしているうさぎがいると言われるように、彼の故郷では読書をする女性と言われていて、ただそれが見えないという話だったかもしれない。
けれど、脈絡も無くそんな話をするだろうか。何か、意図があったのではないだろうか。
月を見上げる度、七瀬は意味ある返しだったのかと思うけれど、そんなものはどんな本でも見た記憶が無い。
「先生は知っとったんですよね？ 『月が綺麗ですね』が何を訳した言葉かって」
「日本人の奥ゆかしさを表現した言葉だよねぇ、有名な話じゃないの？」
知っていて、何を含めたのだろう。
聞いてみたいようで……知らぬままでいたい気もする。
「本を読む人には有名だと思いますけど、知ってても使う人はおるんでしょうかねぇ」
自分は想いを込めたけれど。素敵な返しももらえたから、それで満足なのだ。
例えそれが、本当は意味がなくたって……色々模索する余地のある返しだと思えるから。
「ねぇ、先生」
だから今日は、あの時と違う。
夕空に煌めいていた物も、悪くなかったけど。この夜空でまあるく輝いているのも、ほら。
「月が綺麗ですねぇ」
ふわりと笑ってみせる七瀬に、ウォルターはどうしたものかと空を仰ぐ。
この言葉の意味を知っているかと改められ、告げられた言葉に意味はあるのか、ないのか。
そんなことで頭を悩ませる、彼の思考に潜り込めたらいいのにと、七瀬は思う。
自分のことをいっぱい考えてくれたとき、どんな顔をするのか見られたらいいのに、と。
「じゃあ、どうして月が綺麗に見えるのか教えてもらおうかな？」
「えっ、どうしてって……」
自分が知っている天文学な話など、ウォルターが知らぬはずもないのに。
そう思って、七瀬は気づく。この次に続く会話が天文の話なのか、彼の話題なのか――それは先の言葉をどう捉えたかによって変わる。
ウォルターはまだ、どんな意味で言ったか知らないんだ。
「ふふー。先生にもわからんこと、あるんですねぇ」
でも、お洒落な返しなど思い浮かばないから。無粋になってしまうから……なんて理由をこじつけて、七瀬は何も教えない。
だって今日は天気に恵まれた十五夜だから。それだけで、月はこんなにも美しい。
けれど、せっかくのお月見に活字に魅入ってしまうのも勿体ない。倉前 七瀬はゆっくりお月見をするためには、と考えて。
「やはりお月見団子は外せませんよね」
兎にも角にも必要なのはお団子だ。老舗の和菓子屋、お祭りの露店……どれも悩ましいけれど、それを買ってどこで食べよう。
昼間は残暑が厳しくもあるが、夜には秋風も吹いてくる。そんな中で、まったりのんびりできる場所といえば――あれしかない。
温泉街には、縁日ほどの賑やかさはないものの、ぽつりぽつりと露店があった。
狙い通り団子の店もある、足湯もさほど遠くない。完璧な布陣にふふりと笑ってみたけれど、まだ飲み物が決まってない。
月夜を連想させるネーミングのカラフルなゼリーが入ったソーダ水なんかもあるけれど、団子のお供にと考えると何かが違う。ここは無難にお茶かなあ、なんて考えていたところに見えたのぼりは甘酒。
「これですー！」
アルコールが入ってないけどお酒と名が付き、月夜にも団子にも合いそうだ。勢いのままに購入し、準備万端とばかりの笑顔で足湯に向かう。
これで月夜に必要な物は揃った。秋風で冷える心配も無いし、ひたすらのんびりまったり月を眺められる。
（……あとは）
会えたらいいなぁと、月を見上げる。
同じ月を眺めているだろうけど。こんな月夜だからこそ、伝えたい言葉。
どこか露店を覗いてないだろうか、足湯に来てやしないだろうか。ちょっとワクワクする気持ちとともに歩み進めれば、足湯の脇にかけられた温泉効能の看板をウォルター・Bが眺めていた。
「おや先生、奇遇ですねぇ」
「こんばんは、倉前。こんな所まで足を伸ばしてお月見？」
もちろんとばかりに団子と甘酒を見せて、笑ってみせる。
「足湯に浸かりながらお団子に月見酒です。大人でしょう？」
「お酒にこだわるところが、まだまだ子供っぽいけどねぇ」
手厳しい。
だけどこうやって、柔らかな口調で棘のある物言いをするのも、彼の魅力のひとつだ。こんな言葉で、すごすごと身を引くほどヤワではない。
「もしお時間あったらご一緒しましょうー」
時計を確認し、「少しだけね」と微笑む彼とお月見ができる。例えそれが僅かな時間でも、一緒に月を見上げられるということが嬉しかった。
月といえば。
以前観覧車に乗ったとき、ウォルターは月の模様の話をしてくれた。
日本では餅つきをしているうさぎがいると言われるように、彼の故郷では読書をする女性と言われていて、ただそれが見えないという話だったかもしれない。
けれど、脈絡も無くそんな話をするだろうか。何か、意図があったのではないだろうか。
月を見上げる度、七瀬は意味ある返しだったのかと思うけれど、そんなものはどんな本でも見た記憶が無い。
「先生は知っとったんですよね？ 『月が綺麗ですね』が何を訳した言葉かって」
「日本人の奥ゆかしさを表現した言葉だよねぇ、有名な話じゃないの？」
知っていて、何を含めたのだろう。
聞いてみたいようで……知らぬままでいたい気もする。
「本を読む人には有名だと思いますけど、知ってても使う人はおるんでしょうかねぇ」
自分は想いを込めたけれど。素敵な返しももらえたから、それで満足なのだ。
例えそれが、本当は意味がなくたって……色々模索する余地のある返しだと思えるから。
「ねぇ、先生」
だから今日は、あの時と違う。
夕空に煌めいていた物も、悪くなかったけど。この夜空でまあるく輝いているのも、ほら。
「月が綺麗ですねぇ」
ふわりと笑ってみせる七瀬に、ウォルターはどうしたものかと空を仰ぐ。
この言葉の意味を知っているかと改められ、告げられた言葉に意味はあるのか、ないのか。
そんなことで頭を悩ませる、彼の思考に潜り込めたらいいのにと、七瀬は思う。
自分のことをいっぱい考えてくれたとき、どんな顔をするのか見られたらいいのに、と。
「じゃあ、どうして月が綺麗に見えるのか教えてもらおうかな？」
「えっ、どうしてって……」
自分が知っている天文学な話など、ウォルターが知らぬはずもないのに。
そう思って、七瀬は気づく。この次に続く会話が天文の話なのか、彼の話題なのか――それは先の言葉をどう捉えたかによって変わる。
ウォルターはまだ、どんな意味で言ったか知らないんだ。
「ふふー。先生にもわからんこと、あるんですねぇ」
でも、お洒落な返しなど思い浮かばないから。無粋になってしまうから……なんて理由をこじつけて、七瀬は何も教えない。
だって今日は天気に恵まれた十五夜だから。それだけで、月はこんなにも美しい。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2022年08月20日
- 参加申し込みの期限
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- 2022年08月27日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2022年08月27日 11時00分
