- 0
- 0
- 種族
-
- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
満ちるのは月か心か、それとも？
夕飯づくりのあと、賑やかにカラフルなお月見団子を作るのも楽しかったけれど。
窓辺にお供えした時に見上げた月が、とても綺麗だったから。
（少し遊びにいくつもりで、月に行っちゃったらどうしようか）
くすりと笑って、鴻上 彰尋は不思議な列車のことを思い出す。
あの時、月に住まないかと誘われた七夜 あおいは断った。だから、知らぬ間に消えてしまうことはないと信じているけれど。
（そういえば、月に行けそうなバスが走るって）
まだ、その時間に間に合うだろうか。彰尋は身支度を調えてふらりと乗り場まで足を伸ばした。
どうせならと、縁日も一巡りだけして。寝子島神社の駐車場では、バスにのるための待機列ができていた。
観光を兼ねているため、ぎゅうぎゅう詰めで乗せられない分、運行本数は多いようだしそんなに待たないかな……と列を眺めていると、あおいが並んでいるのが見えた。
友達と話しているようだったので、片手をひらりとあげて笑顔で挨拶だけすると、彼女も同じように振り返してくれる。この月夜に、ひとめ会えただけでも良かったかなと思って列に並ぼうとしたのだけれど。
「え、なら私も」
「ダメだよ、あおいは寮じゃん。早く帰らないと」
何かトラブルでも起きたのか、あおいが慌てた声を上げている。どうしたのかと様子を見やれば、目が合ったのはその友達のほうだ。
「ごめんねー、家族にお土産頼まれてるの忘れてて！ あおいをお願いしてもいいかな？」
「えっ」
「遅くなると思うから、先帰ってて！ じゃーあおい、また学校でね～」
言うが早いか列から抜けて駆けていく子に呆然とし、周囲からの目もあったので彰尋はそそくさと入れ替わるようにして空いたスペースに入れさせて貰う。
「ご、ごめんね彰尋くん……巻き込んじゃって」
友達と乗ることを楽しみにしていたのではないだろうか。挨拶をしたせいで邪魔をしてしまったなら申し訳ないなと思う気持ちもあるけれど、余計に気を遣わせてしまいそうだから、不安の声は飲み込んだ。
「あおいさんと一緒に乗れるだなんて、嬉しいよ」
微笑むことで彼女がこのバスを楽しめたらいいなと思いながら、彰尋はこの偶然の巡り合わせに少し感謝をした。
バスが走り出し、屋根がないというだけで解放感があるんだなと空を見上げる。
今日ばかりは、月に遠慮をして見えない星も多いけれど、月明かりは様々な物に反射して、星空をばらまいているかのようだ。
海沿いの道にさしかかれば、海面がキラキラと揺らめく。月が少しのぼってしまったから、ムーンロードもちょっと短めだけれど、月の近くまで観光に行って帰ってくる……そんな道のように思えて、それなら安心だなと思ったり。
「どうしたの？」
「ほら、前に……うさぎに誘われていたから。月に来ないかって」
月への道が途中で途絶えていて、安心したんだ。そう笑い話にしようと思ったら、あおいの肩に小さなうさぎがのっている。
「それでそれで!?」
……気のせいで無ければ、喋っている。
「私が住むのは寝子島だよって、そうお断りしたんだよ」
優しく肩から下ろして膝に乗せるあおいは、今も変わらないよと笑ってみせる。小さなうさぎは残念がって耳を寝かせてしまったけれど、この子も無理強いをするタイプのうさぎじゃなくて良かった。
「あ！ もうすぐ海に入るんじゃない？」
わっと窓を覗き込むように顔を寄せるあおいの後ろから、彰尋もそぉっと覗き込む。暗い海に光る１本の道へ車体がゆっくりと進んでいくのは、やっぱり不思議な場所に繋がっていそうだけれど。
「綺麗だねっ」
そう笑うあおいの隣で、こうして海上の月を眺められる。そんな幸せな場所に繋がる道だったかもしれない。
「やっとかえってきたー！」
バスが車から船へと切り替わり、光の道を少し進んだ後。海で遊んでいたうさぎたちがわらわらとバスへ乗ってきた。どうやら、先のバスに乗ってしまい降りるタイミングを失ったうさぎが帰ってくるのを待っていたようだ。
バス内を跳びはねて、歌え踊れの大騒ぎをしている子もいれば、人が珍しいのか撫でて貰おう構って貰おうとする子もいて。
「おつきみといえばー！」
まるで神社の餅まきのようにして小さなお餅を配ってくれる。それは、小さなうさぎたちでも食べられるようにか小さなサイズだったけれど、指先にはちょっと余るくらいの大きさのうさぎ型。
お月見で供えた団子を食べると、健康と幸せが得られるというくらいだ。月のうさぎたちがくれたお餅は、もっと縁起が良いだろう。
「ありがとう、頂くね」
お礼になるかわからないけど、頭をひと撫でさせてもらって。
良いことが起こるといいねと、２人で笑った。
窓辺にお供えした時に見上げた月が、とても綺麗だったから。
（少し遊びにいくつもりで、月に行っちゃったらどうしようか）
くすりと笑って、鴻上 彰尋は不思議な列車のことを思い出す。
あの時、月に住まないかと誘われた七夜 あおいは断った。だから、知らぬ間に消えてしまうことはないと信じているけれど。
（そういえば、月に行けそうなバスが走るって）
まだ、その時間に間に合うだろうか。彰尋は身支度を調えてふらりと乗り場まで足を伸ばした。
どうせならと、縁日も一巡りだけして。寝子島神社の駐車場では、バスにのるための待機列ができていた。
観光を兼ねているため、ぎゅうぎゅう詰めで乗せられない分、運行本数は多いようだしそんなに待たないかな……と列を眺めていると、あおいが並んでいるのが見えた。
友達と話しているようだったので、片手をひらりとあげて笑顔で挨拶だけすると、彼女も同じように振り返してくれる。この月夜に、ひとめ会えただけでも良かったかなと思って列に並ぼうとしたのだけれど。
「え、なら私も」
「ダメだよ、あおいは寮じゃん。早く帰らないと」
何かトラブルでも起きたのか、あおいが慌てた声を上げている。どうしたのかと様子を見やれば、目が合ったのはその友達のほうだ。
「ごめんねー、家族にお土産頼まれてるの忘れてて！ あおいをお願いしてもいいかな？」
「えっ」
「遅くなると思うから、先帰ってて！ じゃーあおい、また学校でね～」
言うが早いか列から抜けて駆けていく子に呆然とし、周囲からの目もあったので彰尋はそそくさと入れ替わるようにして空いたスペースに入れさせて貰う。
「ご、ごめんね彰尋くん……巻き込んじゃって」
友達と乗ることを楽しみにしていたのではないだろうか。挨拶をしたせいで邪魔をしてしまったなら申し訳ないなと思う気持ちもあるけれど、余計に気を遣わせてしまいそうだから、不安の声は飲み込んだ。
「あおいさんと一緒に乗れるだなんて、嬉しいよ」
微笑むことで彼女がこのバスを楽しめたらいいなと思いながら、彰尋はこの偶然の巡り合わせに少し感謝をした。
バスが走り出し、屋根がないというだけで解放感があるんだなと空を見上げる。
今日ばかりは、月に遠慮をして見えない星も多いけれど、月明かりは様々な物に反射して、星空をばらまいているかのようだ。
海沿いの道にさしかかれば、海面がキラキラと揺らめく。月が少しのぼってしまったから、ムーンロードもちょっと短めだけれど、月の近くまで観光に行って帰ってくる……そんな道のように思えて、それなら安心だなと思ったり。
「どうしたの？」
「ほら、前に……うさぎに誘われていたから。月に来ないかって」
月への道が途中で途絶えていて、安心したんだ。そう笑い話にしようと思ったら、あおいの肩に小さなうさぎがのっている。
「それでそれで!?」
……気のせいで無ければ、喋っている。
「私が住むのは寝子島だよって、そうお断りしたんだよ」
優しく肩から下ろして膝に乗せるあおいは、今も変わらないよと笑ってみせる。小さなうさぎは残念がって耳を寝かせてしまったけれど、この子も無理強いをするタイプのうさぎじゃなくて良かった。
「あ！ もうすぐ海に入るんじゃない？」
わっと窓を覗き込むように顔を寄せるあおいの後ろから、彰尋もそぉっと覗き込む。暗い海に光る１本の道へ車体がゆっくりと進んでいくのは、やっぱり不思議な場所に繋がっていそうだけれど。
「綺麗だねっ」
そう笑うあおいの隣で、こうして海上の月を眺められる。そんな幸せな場所に繋がる道だったかもしれない。
「やっとかえってきたー！」
バスが車から船へと切り替わり、光の道を少し進んだ後。海で遊んでいたうさぎたちがわらわらとバスへ乗ってきた。どうやら、先のバスに乗ってしまい降りるタイミングを失ったうさぎが帰ってくるのを待っていたようだ。
バス内を跳びはねて、歌え踊れの大騒ぎをしている子もいれば、人が珍しいのか撫でて貰おう構って貰おうとする子もいて。
「おつきみといえばー！」
まるで神社の餅まきのようにして小さなお餅を配ってくれる。それは、小さなうさぎたちでも食べられるようにか小さなサイズだったけれど、指先にはちょっと余るくらいの大きさのうさぎ型。
お月見で供えた団子を食べると、健康と幸せが得られるというくらいだ。月のうさぎたちがくれたお餅は、もっと縁起が良いだろう。
「ありがとう、頂くね」
お礼になるかわからないけど、頭をひと撫でさせてもらって。
良いことが起こるといいねと、２人で笑った。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2022年08月20日
- 参加申し込みの期限
-
- 2022年08月27日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2022年08月27日 11時00分
