【体育祭3rd】Light and shadow !!｜リアクション

【体育祭3rd】Light and shadow !!

　八神修は少し困っていた。
　というのも、借り物競走のお題が中々に難しいのだ。
「え、トドの北斗？」
　隣にきた夏朝が思わずと行った様子で呟いた。
「トドの北斗を、連れてくるということか？」
　難易度は灰色の猫以上だろうが。
「あ、八神君。いや、写真だって。水族館だなぁ。じゃあね！」
「俺の、難易度どうなっているんだ」
　夏朝の背中を見送ったものの、自分も急がなくては。
　すぐにスマホを取り出して、何人かの知人にメッセージを送ることにした。
　最初に返信が来たのは光村日向である。
『騎馬戦まで時間があるから探すよ』
「……助かる」
　人海戦術は大事だ。
「俺もこうしちゃいられないな」
　校内を片っ端から回るしかないだろう。
　と、校舎の入り口にののこを発見した。
「丁度良いところに」
　駆け寄って声をかける。
「へ？　テオ？」
　ののこが不思議そうに首を傾げる。
「ああ、探しているんだ」
「んー。じゃあ、見かけたら言っておいてあげるよ！」
　ののこは親指を立てて、そのまま去って行った。

　正門前に来てーと叫んでもらいつつ、捜索を続ける。
「修くーん」
　手を振りながらやってくるのは、七夜あおいだった。彼女も借り物競走に出場すると言っていたが。
「借り物競見つかった？」
「いいや。それよりあおいは、なんでここに？　学校外じゃないのか」
「その、耳がぴんと立ったしっぽがある灰色の」
　そこまで聞いて、修は苦笑を浮かべた。
「そういうことか」
「やっぱり修君も？」
　二人で探すことになった。
　校舎の各階を手分けを探し回ったが、見つからず、グラウンドへ戻ってくると、日向が駆け寄ってきた。
「八神、正門の方にいたぞ」
「！　本当か。ありがとう。急ごう」
「あっ」
　ゴールする参加者が多くなってきた。少し慌てて、修はあおいの手を掴んで引いた。
　実質手を繋いでの移動である。
「本当だ、いたぞ」
「う、うん」
　あおいは頬を赤くしながら答える。修はあおいの様子に首を傾げながら振り返る。
「！　悪い、いきなりひっぱってしまって」
「ううん。リードしてくれるの嬉しいから」
　修は照れ隠しに前へ顔を戻し頷いた。
　見ると正門の上に灰色の尻尾がふわふわと揺れていた。
「テオ」
　修が小声で声をかける。
「……ん？」
　体を起こしたテオドロス・バルツァが首を傾げる。
「借り物競走中なんだが、一緒に来てもらえないか」
「……やがみ？　なんなんだ、それは」
「一緒にきてもらうだけで良いんだ。テオを連れていくと勝てる……というか」
「……」
「少しの間この籠に入ってくれれば良いんだ。すぐ終わる」
「俺じゃなきゃだめなのか。やがみの周りは猫がたくさんいるイメージだ」
「今回はテオでなくてはだめなんだ。……チュールと猫美味サバテリーヌ」
　ぴくんと耳が動く。
「等価交換的な交渉か」
「良ければ、もう少しご馳走できるかもしれない」
　テオは籠へ飛び込んだ。
「魅力的ではある」
　修とあおいは顔を見合わせる。ひとまず借り物ゲットだ。
「ありがとう」
　急いでグラウンドを周り、無事ゴール。借り物男爵のチェックも問題なく、無事得点を手に入れるのだった。
「今度うちに来てくれ。ジャーキーもあるから」
「私も行こうかな？　ご馳走持っていくね」
「ふむ。良いだろう」
　こうして、借り物競走は終わった。