【ハロウィン】可笑しなお菓子な甘い島｜リアクション

【ハロウィン】可笑しなお菓子な甘い島

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「あめだまぺーろぺろおいしいなぁー」
「どんな歌詞やねん。ほら、いくで」

陽気に歌を口ずさむ小島海美の右手を引いて、苑下ちかが先へと進む。
海美は残った左手で飴細工の電信柱をなでなで、ぺろぺろ。

「またそんなん舐めて。あかんで？あやしいもん口にいれたら」

ちかはそんな海美の左手を時折ハンカチで拭いてやる。
海美はにこにこしながら綺麗になった手でまた壁をなでなで。

ふたりともテオの言葉を聞いて家から出てきたのだ。
予想以上のお菓子の島に、海美は目を輝かせ、ちかは小さく「たこやきちゃうんか」と残念そうにしながら。
そんなこんなでお菓子にまみれた島の中、偶然にもであったふたりは一緒に飴屋を探すことにしたのだった。
……と、いうよりも、放っておくとなんでも食べてしまいそうな海美の様子に、ちかがお姉さんぶりを発揮した、というのが正しいのだろうか。

「あめやさんないねー」
「せやな。ほんまは性悪猫の言う事やし気にせんでええような気もするねんけどな」
「そしたらずっとお菓子のままなのかな！？だったらわたしこのままがいい！」
「そらあかんわ。ここたこやきあらへんし」

ふたりは近場のお店を開いてはここではない、ここではないと進んでいく。
キャットロードにはたくさんのお店が存在していたはずだが、今はそのすべてがお菓子になっていた。
淡い色合いの砂糖菓子から、お茶が進みそうな和菓子。足元に落ちている金平糖は、きっと流れ星。
街路樹は綿菓子のようにふわふわで、お花は砂糖漬けのように華奢なシルエットを伸ばしていた。

「わたしね、このまえおそらからおかしがふってくるゆめ、みたんだー」
「空から飴ちゃん降ってきたら普通にこわいわ。当たったら痛いで」

テオから「徐々に体がお菓子になる」という情報は得ているものの、海美は全く気にしていない様子。
ちかは、
「これがたこやきやったらあぶなかってんて。ちか、お菓子につられるほど子供やないで」
と後に語ったという。

「ののこ、って誰や知らんけど、飴ちゃんぎょうさん売ってる店があるんやろ」
「あめがいっぱい！それってしあわせだね」

ちかの言葉に海美は大はしゃぎ。今まさに食べようとしていたお星さまの形の金平糖をちかの手に乗せる。

「おとうさんがね、しあわせはおすそわけしなさいって！」
「ほな、ありがとうもろとくわ」

海美の無邪気な笑顔につられてちかもにかっと笑顔を見せた。

「せやけど飴ちゃんなぁ。なんや前そないな店行ったような気ぃすんねんけど」

カシャッ

ちかがアイシングで彩られたクッキーの扉を開くと同時に、カメラのシャッター音が響く。
びっくりして立ち止まったちかの背中に、よそ見をしていた海美がぽすん、と衝突した。

「えっ、えっ、どうしたの？」

海美がちかの後ろからひょこっと顔を出すと、そこには店内のディスプレイチェア(だったと思わしきカップケーキ)に腰掛け、自分にカメラを向けた弘明寺能美子の姿があった。

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