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【１０周年】吾輩は見た ～週刊かぎしっぽのねこねこ記者
ここでしばし場所を変える。
緑の葉が濃い影を落とし、夏の終わりの蝉がせわしなく鳴き響く寝子島神社の境内。
人気のない参道を、シオ・レイゼルオークとハルキ・イエハナが仲よく散策している。
ふたりは別姓ながら夫婦だ。
夫婦は似てくるというが、ふたりとも北欧の森のような落ち着きや静けさを漂わせている。
「阿と口を開けているほうが心配性の一之助さん。吽と口を閉じているほうがしっかり者の二右衛門さん」
「そして、寝子島神社のご神体が黒猫のお三夜様。シオさんは本当に彼らが好きだね」
「それはもう。一目惚れみたいなものだもの。秋のお三夜まつりも今から楽しみで楽しみで」
「すこし妬けるな」
「ふふっ」
境内には寝子島の案内板があった。
ちょうど日陰になっていて、看板の下では猫たちが休んでいた。
ふと見ると、猫たちのそばに小さな雑誌が落ちている。
「なにかしら？」
「週刊かぎしっぽだって」
ハルキはそれを拾い上げ、パラパラとめくってみる。
「ふふ、見てよ。シオさんが好きなお三夜さまが出ているよ」
●週刊かぎしっぽvol.XX033『大変にゃー！ 水だらけにゃ！ あくあ・あるたにゃ！？』
たたたたいへんにゃ！
寝子島の街の低いところが大水におおわれたにゃ。
あくあ・あるたっていう異常潮位らしいにゃ。
人間はくるぶしまでの水をぱしゃぱしゃ楽しんでるけど、吾輩たち猫は首までひたひた。溺れてしまうにゃ。
昼間は吾輩たち猫も水と戯れたり、高いところでやり過ごしたりしてたにゃが……
夜はにゃんと、お三夜さまから集会の招集がかかったにゃ！
もちろん吾輩も取材に行ったにゃ。
旧市街の空地には、島じゅうの猫が集まったんじゃないかというほどたくさんの猫が集っていたにゃ。
人間の姿もちらほら。
猫の面を被ったシオさんや、猫好きで有名な夏朝ちゃん、パペットのハルくんもいるにゃ。
『こんばんはなのにゃ。皆、元気にしておったかにゃ。今宵はぞんぶんに楽しむにゃ』
にゃんと！ お三夜様は一之助と二右衛門を従えて、黒髪おかっぱの少女姿でご登場にゃ。お三夜まつり以外でこのお姿をお目にかかれるとは、今宵は本当に不思議な夜にゃ。
おまつりのときはとてもじゃにゃいがお話出来る雰囲気ではないけど、今日は気さくに人間ともお話なさっているようす。
吾輩も突撃インタビューを試みるにゃ！
記者 ：こんばんにゃ。吾輩、週刊かぎしっぽのねこねこ記者にゃ。
お三夜様：存じておるぞ、近頃巷で噂の雑誌じゃな。よいよい、近うよるにゃ。何が聞きたいにゃ？
記者 ：まずは失礼ながらご年齢を……。
（一之助、二右衛門、刀に手をかけ、がたっと立ちあがる）
記者 ：ひいっ。お許しにゃ～～～。
お三夜様：よいよい。
そうじゃにゃあ、九夜山から火を噴いて暴れていた大きなナマズを
三夜かけて鎮めたのが数百年前じゃったか、千年前じゃったか。
とりあえず数百歳ってことにしておくかにゃ。
記者 ：数百……さばを読んでてもわからないにゃ。
（一之助、二右衛門、再び刀に手をかけ、がたっと立ちあがる）
記者 ：にゃ～～～～っ。
お三夜様：よいよい。今宵は無礼講にゃ。ほかに聞きたいことはあるかにゃ？
記者 ：お三夜様が鎮めたというナマズはどんなやつだったかにゃ？
お三夜様：それはもう山みたいに大きいやつだったにゃ。大きいくせに涙もろくてにゃあ。
酒を飲ませたらおいおい泣きおって、ずっと身の上話をきいておったにゃ。
記者 ：それはどういう……
お三夜様：昔のことすぎてほとんど忘れてしまったが、ナマズなりに辛かったらしいにゃ。
そうこうして三日三晩泣き続けたら、やつの涙が三夜湖になってしまったにゃ。
いやそれとも、ナマズに飲ませるためにかき集めた酒を山頂のくぼみに注ぎこんだら
三夜湖になってしまったんだったかにゃ……？
（お三夜様ほどの方でも、記憶は月日による風化にたえられないものらしいにゃ）
ハルキは寝子島の案内板の隣に掲げられていたもう一つの看板を読んだ。
お三夜大明神とは
その昔、九夜山から火を噴いて暴れていた大きなナマズを三夜かけて鎮めて
寝子島を救ったといわれる猫が“お三夜さま”として祭られるようになりました。
その時ナマズが流した涙ともナマズに呑ませた酒とも言われているのが、今の“三夜湖”です。
「お三夜さまでも真相はわからないんですねー」
「そのようだね。ともあれ」
「これからもずっと宜しくね。狛猫さんたち、お三夜様」
緑の葉が濃い影を落とし、夏の終わりの蝉がせわしなく鳴き響く寝子島神社の境内。
人気のない参道を、シオ・レイゼルオークとハルキ・イエハナが仲よく散策している。
ふたりは別姓ながら夫婦だ。
夫婦は似てくるというが、ふたりとも北欧の森のような落ち着きや静けさを漂わせている。
「阿と口を開けているほうが心配性の一之助さん。吽と口を閉じているほうがしっかり者の二右衛門さん」
「そして、寝子島神社のご神体が黒猫のお三夜様。シオさんは本当に彼らが好きだね」
「それはもう。一目惚れみたいなものだもの。秋のお三夜まつりも今から楽しみで楽しみで」
「すこし妬けるな」
「ふふっ」
境内には寝子島の案内板があった。
ちょうど日陰になっていて、看板の下では猫たちが休んでいた。
ふと見ると、猫たちのそばに小さな雑誌が落ちている。
「なにかしら？」
「週刊かぎしっぽだって」
ハルキはそれを拾い上げ、パラパラとめくってみる。
「ふふ、見てよ。シオさんが好きなお三夜さまが出ているよ」
●週刊かぎしっぽvol.XX033『大変にゃー！ 水だらけにゃ！ あくあ・あるたにゃ！？』
たたたたいへんにゃ！
寝子島の街の低いところが大水におおわれたにゃ。
あくあ・あるたっていう異常潮位らしいにゃ。
人間はくるぶしまでの水をぱしゃぱしゃ楽しんでるけど、吾輩たち猫は首までひたひた。溺れてしまうにゃ。
昼間は吾輩たち猫も水と戯れたり、高いところでやり過ごしたりしてたにゃが……
夜はにゃんと、お三夜さまから集会の招集がかかったにゃ！
もちろん吾輩も取材に行ったにゃ。
旧市街の空地には、島じゅうの猫が集まったんじゃないかというほどたくさんの猫が集っていたにゃ。
人間の姿もちらほら。
猫の面を被ったシオさんや、猫好きで有名な夏朝ちゃん、パペットのハルくんもいるにゃ。
にゃんと！ お三夜様は一之助と二右衛門を従えて、黒髪おかっぱの少女姿でご登場にゃ。お三夜まつり以外でこのお姿をお目にかかれるとは、今宵は本当に不思議な夜にゃ。
おまつりのときはとてもじゃにゃいがお話出来る雰囲気ではないけど、今日は気さくに人間ともお話なさっているようす。
吾輩も突撃インタビューを試みるにゃ！
記者 ：こんばんにゃ。吾輩、週刊かぎしっぽのねこねこ記者にゃ。
お三夜様：存じておるぞ、近頃巷で噂の雑誌じゃな。よいよい、近うよるにゃ。何が聞きたいにゃ？
記者 ：まずは失礼ながらご年齢を……。
（一之助、二右衛門、刀に手をかけ、がたっと立ちあがる）
記者 ：ひいっ。お許しにゃ～～～。
お三夜様：よいよい。
そうじゃにゃあ、九夜山から火を噴いて暴れていた大きなナマズを
三夜かけて鎮めたのが数百年前じゃったか、千年前じゃったか。
とりあえず数百歳ってことにしておくかにゃ。
記者 ：数百……さばを読んでてもわからないにゃ。
（一之助、二右衛門、再び刀に手をかけ、がたっと立ちあがる）
記者 ：にゃ～～～～っ。
お三夜様：よいよい。今宵は無礼講にゃ。ほかに聞きたいことはあるかにゃ？
記者 ：お三夜様が鎮めたというナマズはどんなやつだったかにゃ？
お三夜様：それはもう山みたいに大きいやつだったにゃ。大きいくせに涙もろくてにゃあ。
酒を飲ませたらおいおい泣きおって、ずっと身の上話をきいておったにゃ。
記者 ：それはどういう……
お三夜様：昔のことすぎてほとんど忘れてしまったが、ナマズなりに辛かったらしいにゃ。
そうこうして三日三晩泣き続けたら、やつの涙が三夜湖になってしまったにゃ。
いやそれとも、ナマズに飲ませるためにかき集めた酒を山頂のくぼみに注ぎこんだら
三夜湖になってしまったんだったかにゃ……？
（お三夜様ほどの方でも、記憶は月日による風化にたえられないものらしいにゃ）
ハルキは寝子島の案内板の隣に掲げられていたもう一つの看板を読んだ。
お三夜大明神とは
その昔、九夜山から火を噴いて暴れていた大きなナマズを三夜かけて鎮めて
寝子島を救ったといわれる猫が“お三夜さま”として祭られるようになりました。
その時ナマズが流した涙ともナマズに呑ませた酒とも言われているのが、今の“三夜湖”です。
「お三夜さまでも真相はわからないんですねー」
「そのようだね。ともあれ」
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2022年06月09日
- 参加申し込みの期限
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- 2022年06月16日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2022年06月16日 11時00分
