【１０周年】吾輩は見た～週刊かぎしっぽのねこねこ記者｜リアクション

【１０周年】吾輩は見た～週刊かぎしっぽのねこねこ記者

●ねこねこ記者の取材ノート『スクープ！　杜の湯の赤毛の『猫洗い』のナゾに迫る！』

　銭湯『杜の湯』の番台あたりで一休みしようと立ち寄ったときのことにゃ。
　吾輩は見たにゃ！
　赤い髪を振り乱した猫洗いが、野良猫たちを次から次へと引っ掴んで、ごしごし洗ってしまうのにゃ。
　吾輩、掴まる前に逃げてきてしまったが、これは継続取材が必要にゃ。

「……ナニよコレ？　赤毛の『猫洗い』ってあたしのこと？」

　夕べ取材したばかりの杜の湯に来た時、赤毛の『猫洗い』は吾輩の取材メモを片手に憤慨していた。
　よくよく見ると覚えのある顔。猫とも仲良し、神薙焔ちゃんにゃ。
「にゃー（こんにちはー）」
　タルトちゃんが人懐こく近づいていくと、焔ちゃんは吾輩たちに気付いて二匹とも掴まってしまったにゃ。
「にゃにゃー（離すにゃー）」
　焔ちゃんには吾輩の言葉はにゃーにゃー猫語にしか聞こえないはずにゃが、どういうわけか以心伝心？
　妙に噛み合った会話を返してくるにゃ。
「あんた、このメモの持ち主でしょ。あたしのこと妖怪みたいに書くのやめてよね。ほら、来なさい。あたしがしっかり汚れを落としてあげる」
「にゃにゃにゃーっ（殺生なー！）」

　そんなわけで、吾輩とタルトちゃんは女湯の洗い場に連れていかれて、あわあわごしごし。
　吾輩はちょっと苦手にゃけど、もともと人間のタルトちゃんは気持ちよさそうにしているにゃ。
「にゃー（１点だけ不満があるとすれば、男湯じゃないってことだよね）」
「にゃ？（なんで男湯がいいにゃ？）」
「にゃーにゃー（だって男湯ならオス同士の絡みを妄想してムフフできるじゃない。あ、そうだ、ねこねこ記者、このあたりで縄張り争いしてるオス猫知らない？）」
「にゃ（餌やメスを争うところにはいるけどにゃ……見たいのかにゃ？）」
「にゃあ（あれも一つの愛の形だよ。飼い主と愛猫との種族を超えた禁断の愛もいいね！）」
「にゃー……（タルトちゃん）」

　洗い終えてタオルでくるまれ、吾輩たち毛がふかふかになったにゃ。
　今日のことはさっそくメモしなきゃにゃ。
「洗われるのが気持ちいいって書いてよね。記事を読んで汚れたまま湯船に入る猫が減るといいわ」
　にゃるほど。
　焔ちゃんは、汚れたまま湯船に入る猫がいやで、妖怪猫洗いになったのにゃ。
　強い想いは妖怪を生むというからにゃー。
「だ・か・ら。あたしは妖怪じゃないってーの」
　けど、取材対象に言われたままに書くだけじゃあ記者魂が廃るにゃ。
　吾輩、思ったままのことを書くにゃ。
「にゃーにゃー」
「えーと……意外とあるムネが当たって――気持ちいい？　なっ、ナニ言ってんのよ、検閲削除するわよ！」
　言葉は通じにゃいのに、なんとなく考えていることが分かるとは、やっぱり恐るべしなのにゃ。

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