【１０周年】吾輩は見た～週刊かぎしっぽのねこねこ記者｜リアクション

【１０周年】吾輩は見た～週刊かぎしっぽのねこねこ記者

●ねこねこ記者の取材ノート『修羅場なう』

　さてさて。
　取材ノートの残りの紙片を求めて、吾輩は猫／タルトちゃんとあっちこっちと走り回ったにゃ。
「にゃにゃー（最近取材した場所に落してないかな？）」
　タルトちゃんの進言で、吾輩は夕べ取材したばかりの工藤来夢ちゃんのところへ向かったにゃ。
　来夢ちゃんはマンガカっていうほとんど寝ない仕事の人にゃ！

「あら？　何かしらこのノート。窓は閉めているのにどこからきたのかしらね？」

　あったにゃー！
　来夢ちゃんがもっているのは吾輩のメモにゃ！
　あれはたしか、前にこの部屋を取材に来た時のもの……。
「『怪奇！　髪振り乱し妖怪――お絵かきときどき奇声』……。ふむふむ、あたしが漫画を描いてる様子が書かれているみたいだけど、どこから見てるのかしら？　この辺にいるのは猫くらいだし……」
　目線を上げた来夢ちゃんと、窓の外で焦っていた吾輩、ばっちり目が合う。
　来夢ちゃんは窓を開けると吾輩を抱え上げて目をキラキラさせたにゃ。
「ってこの猫が記者？！　なにそれとても面白いネタになりそうじゃないの！」
　『先生、猫と遊んでいる場合じゃないです！』ってアシスタントサンっていう目の下に真っ黒なクマが出来ている人が怒ってるけど、来夢ちゃんはお構いなしにゃ。
「取材は大歓迎だけど、あたしからも取材させてもらうわよ！　といってもあたしは猫の言葉なんてわからないし、取材の回答はこのノートに記入をおねがいね！」
　こ、困ったにゃあ……。
　吾輩、字を書く猫って人間のニュースになったら困るにゃあ。
　そう思っていたらタルトちゃんが言ったにゃ。
「にゃー（大丈夫。徹夜しすぎた人が見た幻覚ってことにすればいいよ）」
　そういうものかにゃー。
　それならば、と、吾輩、ノートに適当に書いてみたにゃ。
　書き終えて鼻先で押しやると、来夢ちゃんは満足そうにそれを読んだにゃ。
「ありがとう、お互いにいい取材になったわね、せっかくだし何かご飯でも食べていく？　猫用のご飯ちょっと買ってくるからまっててね」
「にゃー（いやいや、結構にゃ）」
　断ったけど来夢ちゃんは財布を手にお出かけ準備。
　話を聞かない人にゃー。
　アシスタントサンの苦労が偲ばれるにゃ。
　出て行きかけて、また戻ってきた来夢ちゃんは、吾輩の鼻先に一枚の紙を置いたにゃ。
「そうだ、これさっきの取材光景をスケッチしたものだけどキミにあげるわ。感謝して記事にそえなさいよね！」

　来夢ちゃんが部屋を出て行った途端、アシスタントサンがぱったり倒れたにゃ。
「にゃ」
　タルトちゃんはもう窓の桟の上。
　分かってるにゃ。この隙に吾輩たちはお暇するにゃ。
　スケッチはありがたくいただくにゃ。

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