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わけもなく、こころから
全部ひっくるめてあなただから
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心臓の音は己のものだろうか、それともきつく抱いた少女のものだろうか。
耳に響く恐ろしく速い鼓動に堪えきれず、息を吐き出す。
「ウォルター先生」
指に絡む細い指の感覚に瞼を開けば、そこは柚春と出会った夜空の真ん中だった。
雨に濡れた土の匂いがした。それは彼が埋められた土の臭いだ。
強盗犯を捕らえたのは、銃声を聞きつけて飛び込んで来た警察官だったと聞いている。
撃たれた友人と女性従業員はほぼ即死、その他重軽傷者多数。
その多数の中には己も居て、病院で目覚めたときには、
──警官を目指した少年たちの一線を越えた愚行
──少年たちの行き過ぎた『正義感』
──自らの能力を過信する若者たち
テレビでも雑誌でも、身の程をわきまえず銀行強盗に立ち向かった挙句、多くの死傷者を出した『無謀な少年たち』の話題で持ち切りだった。
両親も祖母も、己に近しい大人たちは皆、無責任な人々が好き勝手に喚いているだけだと、気にするなと言ってくれはした。
両親や祖母の存在がありがたくて、だから一度は元の生活に戻ろうとした。悔しさも悲しさも全て、ひたすらに勉強に打ち込むことで誤魔化して、誤魔化し続けて大学生になった。
頭に知識を詰め込んでいる間は彼のことを考えずに済んだ。あの銃声を心の底に封じることが出来た。それでも、どれだけ睡眠時間を削って勉強しても気に病み続ける己を見かねて、祖母が故郷であるこの地に送り出してくれた。いいところだからと。
少しの間の滞在のつもりだった寝子島で教師となるに至ったのは、祖母の言葉通りの居心地の良さが主たるものだが、──もうひとつ。
──ひとの役に立つ仕事がしたいな! 教師とか、警察官とか!
知識を詰め込むばかりだった頭に、いつしか蘇るようになっていた彼の言葉。彼の、遺志。
警察官になる夢など、彼の死を知ったときに捨てた。何もかもにきちんと線を引き、そこから外れぬように生きようと己の人生を定めた。そうしなければ彼のように最悪の結末を迎えてしまう。
夜色に舞う芍薬の花びらがひどく不穏に見えて瞼を閉ざし、次に開いたときには花びらも土の臭いも消えていた。
ひとりであったのなら喚いていた。彼の死を侮辱した大人たちを口汚く罵っていた。彼を助けられなかった己を呪っていた。
それをしなかったのは、傍らに柚春がいてくれたからだ。
己を覗き込んでくる心配げな菫色の瞳に微笑んで、微笑むことができると安堵した。絡めた指に籠る少女らしい儚くも強い力と指の温もりに不覚にも安らぎを覚えてしまった。
「ウォルター先生」
「……うん」
人が死ぬ凄惨な場面を『生徒』に見せずに済んだ、とは思う。それでも、彼女には今まで誰にも語らずに来た心の奥の傷を知られてしまった。
いつかのように、内緒だよと笑って見せようとして失敗する。
ぱらり、頁が捲れる音が耳に届いてドキリとする。巡らせた視線の先には、開いた本の中、病院のベッドの上で背中を丸める少年の挿絵。
「もう、……許してくれないかなぁ」
思わず手を伸ばす。本を閉ざそうとした手が触れたのは、ぐるりと小さく丸まった十六歳の少年の背中だった。
包帯塗れの背中が震えている。
点滴の管が捩れるのも構わず、少年は両手で顔を覆っている。
友人を亡くしたことを嘆き、友人を詰る世の中と何も出来ない自分に怒る少年に、けれど掛ける言葉は見つからない。二十年を経ても、まだ見つけられていない。
嘆息して、気が付いた。隣に柚春が立っている。
菫色の瞳が十六歳の己を映す。三十六歳の己を映す。
何も口にせぬまま、十六歳の少女は腕を伸ばした。片腕に少年を抱きしめ、もう片腕に己を抱きしめる。
過去の幻影である少年が気付かなくても、
「稲積、……僕は大丈夫だから、稲積」
今現在の己が焦った声を上げても、柚春は離してくれなかった。
「……全部ひっくるめてあなただから」
「僕、は……」
忘れてしまった方が楽になれると思ったこともある。
二十年も前の自分など別人と同じだと思ったこともある。
(そうではなかったのかもしれない)
レモンと花の香を胸に満たす。抱きしめてくれる小さな手を、感謝を込めて握り返す。
(僕は)
全てを認めてくれる誰かを、必要としていたのかもしれない。
「……ウォルター先生」
耳朶に柚春の声を聞いたとき、目前にはもう病院のベッドも泣きじゃくる十六歳の少年の姿もなかった。夢のように消えた過去の幻影に、それでも深く抉られた胸を抑えて息を吐く。繋いだままの柚春の手に力をこめ、少女の優しさに対する言葉を考えるも考えつかずに少し途方に暮れる。
「傷を癒すとか分かち合いたいとか、そんな大層なことは言えないけど」
黙するばかりの己に、それでも柚春は語り掛けてくれた。
「でも、色々と抱え過ぎて潰れそうなあなたを心配して声をかけるのは許して欲しい」
夜に浮かぶ小瓶から光が零れ、薄紫の竜胆の花をかたち作る。心を落ち着かせ眠りに誘うようなラベンダーの香りを感じるまま、気の利いた言葉のひとつも浮かばぬ己を今は許すことにする。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
プライベートシナリオSS(500)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
NPC交流
定員
1人
参加キャラクター数
1人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2022年05月25日
参加申し込みの期限
2022年06月01日 11時00分
アクション投稿の期限
2022年06月01日 11時00分
参加キャラクター一覧
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