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わけもなく、こころから
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得体の知れない世界の底へと共に落ちて行く生徒を護るべくその頭を胸に抱き締めた瞬間、ふわり、レモンの香りがした。
(……)
爽やかな柑橘の香に混ざって、花のような果実のような甘い香。
彼女はいつも良い香りを纏って現れる。己が傍に立ったときや、こちらを見仰いできたときにその香は強くなる。
「ウォルターさん」
勇気を振り絞るようにして名を呼んで来た、今も。
「……僕はまだ、君の先生だからねぇ」
慣れない呼び名にドキリとしたことを隠したくて、彼女の声に覆いかぶせ気味に訂正を求める。
「今はまだ、先生って呼んでねぇ」
「……ウォルター、先生」
「はい、よくできました」
大人の余裕ぶって微笑んだとき、彼女の背後から鋭い視線を感じた。見遣ってみれば、ついさっきぶつかってきた彼女のカプセルギアがどこか不満げにゆらゆらと揺れている。
今にも体当たりをしてきそうな雰囲気を感じながら、小さく瞬く。光の加減ではあるのだろうけれど、きつく睨まれているようにも思えてしまうのは何故だろう。
動けぬはずのただの人形に意思を感じてしまうのは、ここが見知らぬ不思議の世界だからか。
抱いた少女に気取られぬよう、そっと息を零す。
(僕は先生で、)
彼女は生徒だ。
たとえアクシデントで唇が接触してしまったことがあったとしても、それはただの事故でしかない。『先生』と『生徒』の間に引いた線を揺るがせてはならない。
(……そうしなければ)
続けざまに漏れそうになる息を噛み殺したとき、周囲に舞う幾冊もの本のうちの一冊がぱらりと捲れた。風もなしにぱらぱらと捲れて行く頁に警戒して、柚春の頭と身体を抱き寄せる。けれどそれ以外に出来ることを思いつけぬうち、ぱらり、頁が定まった。知らず引き寄せられる視線が捉えたのは、銀行らしき場所の長椅子の陰に身を潜めカウンターを見つめるふたりの少年の挿絵。
カウンターの向こうでは覆面をした男が女性従業員に銃を突き付けている。
「ッ……」
見覚えがある。
そう思った瞬間、息が詰まった。
──どうしよう
──助けなきゃ
今しも腕の中にいる少女と同じ年頃の少年ふたりの緊迫した声が耳の奥に蘇って、
「でも、僕らはまだ、」
「……俺が取り押さえる」
否、はっきりと、傍らにその声を聞いた。
足の裏に床の感覚あった。強盗犯が威嚇に発砲した火薬の臭気が鼻を突いた。
「な、……」
唇から零れそうになる声を必死に殺す。胸の中でもがく柚春の身体をますます強く抱きしめ、その場に膝をつく。出来るだけ低く、物陰に身を隠す。
心臓の音が身体中に轟いている。
(これは何だ)
あの不思議な本が開いた次の瞬間、ここに居た。
震える視線を巡らせる。長椅子の陰にふたりの少年。ひとりは黒髪、ひとりは己と同じ金髪碧眼。
(あれは僕だ)
二十年前の、あの日の。
そうして隣にいるのは、共に警察官を志し、警察学校への入学を目指して日々勉学に鍛錬にと励んでいた友人。
(……何故)
動揺に乱れてしまいがちになる息を整えつつ、周囲に視線を巡らせる。
興奮して怒鳴り散らす強盗犯、怯えて固まるばかりの従業員や客、今にも気絶してしまわんばかりの人質の女性従業員。
窓の外から差し込む穏やかな日差しが靴先に触れている。平日の午後の人通りは少なく、犯行はまだ外には知られていない。
何もかもが、あの日と同じだった。
「俺なら出来る、信じろ」
「……分かった」
友人の強気なまなざしに圧されて頷く己の声に唇を噛む。
──優しい男だった。勇敢な男だった。
ひとの役に立つ仕事がしたい、が口癖だった。たとえば教師、たとえば警察官。
(僕の夢に巻き込んだ)
警察官になりたいという己の夢に合わせてくれた。一緒に目指そうと笑ってくれた。
(その挙句が、……)
あの日の、最悪の顛末。
(止めろ)
チ、と舌打ちが漏れた。腕の中、ぎくりと少女が身を固まらせる。
「……ごめんねぇ」
「吃驚しただけ、です」
気丈に微笑む柚春の背中を子供にするように撫でながら、傍らの少年たちを見つめる。彼らはこちらを見ようともしていない。周囲の人々も、──彼らからしてみれば突然現れただろう自分たちに気づいた様子もない。
(過去の再現、……夢みたいなもの、かなぁ)
であるならば、この先に起こる出来事を止める術は己には無い。
(……嫌だなぁ)
顔を上げようとする柚春の頭を再度胸に抱き込む。
「見ない方がいいよぉ」
出来得る限り、のんびりと話しかける。
『生徒』である彼女が『先生』である己に向けるまなざしの熱は知っている。であれば、好意を抱いた人間の過去を知りたいと興味を持つのは自然なことだろうとも思う。それでも、ここから先は誰にも見られたくなかった。
警察官になる夢を断つ、その転機の出来事。
「でも、」
「……見ない方がいい」
低く言えば、柚春は一度は黙して瞼を閉ざした。
それでいいと思うのに、それなのに、柚春はすぐに頭をもたげる。まっすぐにこちらを見上げてくる。
ふわり、檸檬と花の香がした。
「知ってた?」
囁く声に、なにものにも揺らがぬ決意が潜んでいる気がした。
「今の私は『生徒』じゃない」
絡めたままずっと離さずにいた指に、少女の力が籠められる。振りほどこうと思えば容易く解けるほどの力であるのに、解けないのはどうしてだろう。
「『大切な人』を受け入れる覚悟をした『女の子』です」
だから、と菫色の瞳が強い光に輝く。
「苦しんでるあなたをそのままにできない」
「……二十年も前のことだよ」
「これが何年前でも、あなたは今苦しんでる」
手を離さず、目を逸らさず、彼女は告げる。たった十六歳の、二十歳も年下の女の子にともすれば縋りつきたくなって自制する。今は、己の心よりも、目の前で行われようとしている少年たちの蛮行を彼女に見せないようにすることの方が大事だ。
この先は凄惨だ。
長椅子の陰から黒髪の少年が身を低くして飛び出す。それに合わせ、金髪の少年が立ち上がる。
「あのー、やめましょうよー」
幼い正義感で、ひとを助けようとした。
あの頃は、がんばればなんだって出来ると信じていた。
強盗犯が怒鳴る。人質に向けていた銃口が少年に向く。
柚春の瞳を塞ぐため頭を抱えようとした途端、
「だめ……っ!」
繋いだ手を解き、柚春が物陰から飛び出した。彼らに自分たちが見えているのかいないのかすらも考えていない動きで、金髪の少年と銃口の間へ飛び込む。両手を広げ、幼い『
ウォルター・B
』をその背に護ろうとする。
「稲積……っ?!」
そんなことをしたところで何にもならない、と言い放とうとした瞬間、突如として何者かに背中を蹴られた。転がるように物陰から飛び出しながら振り返って見れば、立っていたのは今の今までそこには居なかったはずの黒髪の少年。
こちらの背中を躊躇なく蹴とばした長い足もそのまま、少年は切れ長の瞳を剣呑に細め、
「てめェ、こッの、……ウォルター! 何してやがる!」
過去に目を瞑ろうとする己を喝破した。それきりこちらには目もくれず、柚春に向けて駆ける。
「ッ……」
少年の言葉に、横面を殴られた気がした。
黒髪の少年の背を追って地面を蹴る。隠れていた長椅子の背を蹴る。こちらに背を向けている柚春の肩を、少年よりも早く掴み、引き倒す勢いでその場に抱きかかえて伏せさせる。
「ウォルター、先生……」
「稲積、……ごめんねぇ、まだ『先生』でいさせてねぇ」
少女の耳を塞ぐ。胸に抱きしめることで目を塞ぐ。
目を逸らしてはならないと思った。だから見た。
夢を同じくしていた友人が強盗犯に掴みかかるのを。
幼い己に向けられていた銃口が友人に押し付けられるのを。
友人の身体が他愛もなく吹っ飛ぶのを。銃弾を数発受けたその身が血に塗れるのを。
激昂した強盗犯が人質を撃つのを。
──幼い己と同じように、見続けた。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
プライベートシナリオSS(500)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
NPC交流
定員
1人
参加キャラクター数
1人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2022年05月25日
参加申し込みの期限
2022年06月01日 11時00分
アクション投稿の期限
2022年06月01日 11時00分
参加キャラクター一覧
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