たとえばこんな出会い方｜リアクション

たとえばこんな出会い方

●立場が違っても仲良し

　七夜あおいとお菓子作りの材料を買い出しに行きながら、八神修は昨晩見た夢のことを話した。
「昨日、面白い夢を見たんだ。別の世界の俺達の夢さ」
　驚いたのは、別の自分達が今の自分達を話題にしていたことだった。
「どんな内容だったの？」
　話の続きが気になったのか、あおいは興味深そうに聞く。

　夢の中の修は某進学校に入った庶民。あおいは才女として君臨する名家の令嬢だった。
　現実の２人の立場が入れ替わってしまったような設定といえる。
　そんな身分違いの２人の出会いは、中間テストの結果発表の日。成績順掲示の下で。
　結果が貼りだされたことを知るなり、順位が気になる生徒達は大急ぎで掲示板へ。
　慌てることはない、と修は人混みが落ち着くのを待ってから見に行った。
「さて、結果はどうかな」
　順位の中にある自分の名前を探す。
　常日頃から勉強を頑張っていることもあり、見つけた成績は上位のほうだった。
　一安心して立ち去ろうとした時、入れ違いに順位を見に来たあおいの視界に彼が入った。
「俺に何か用？」
「ううん、別に。あなた、順位はどうだったの？」
　あおいにそう聞かれたので、修はここ、と順位にある自分の名前を指す。
「なかなかいい成績じゃない」
　そう言っているが、彼がそのうち自分を脅かす存在になりそうだと不安になるあおいだった。
「私に追いつくこと、楽しみにしているわよ」
「ああ。楽しみにしていてくれ」
　この日を境に、２人は成績上位を争うライバルに。

　それからいろいろあったが、今では仲良しだ。
　中間テストの結果発表の日から修をライバル視していたあおいだったが、次第に心境が変化していった。
　修を少しずつ異性として意識するようになり、友達になりたいと思い始めた。
　あおいの心境に気づいた修も彼女を意識するようになり、彼のほうから自分の思いを告げた。
　家柄が違うと振られることを覚悟していたが、そんなこと関係ないとあおいは受け入れてくれた。
　
「勉強もだけど、遊ぶことも大事だよ。このゲーム、気分転換にどうかな？」
　やってみよう、と修はあおいにあるゲームを勧めた。
　何事も経験、とゲームのキャラクターの作成も勧める。
　自分達そのままでも面白そうだが、せっかくなので別の自分達を作ろうかと盛り上がる。
　どのようなキャラクターにしようかと考えていると、あおいがこう言った。
「出会った頃は喧嘩ばかりしてたけど、私のこと嫌いだったの？」
　拗ねたように聞くので、修は優しくこう答えた。
「そうだな……。俺とは色々違う世界の人だなと思ったけど、嫉妬とかの悪い感情は無かったな」
　名家令嬢という環境に甘えず、研鑽したあおいは凄い。だから、そんなあおいに並び立てるようになりたい。
「あおいと会った日から、俺は頑張ろうと誓ったんだ」
　多分……出会ったその日から、修は俺はあおいに恋をしていた。

　２人がやってみることにしたゲームのタイトルは『らっかみ！』。
　彼らがいる世界とは別世界が舞台だが、主なキャラクターは高校生なので近い年頃のキャラクターを作れる。
「どんな学生生活になるのかな？　楽しみだね。ゲームでも仲良くなれるかな？」
「仲良く？　なれるに決まってるさ。だって、あおいと俺だもの」
　今いる世界でもゲームの世界でも、あおいと仲良くできる。楽しく過ごせる。
　そう確信する修は「こういうキャラクターにしようと思うんだけど……」と考えていることを話し始めた。

　立場や世界が変わっても、２人の仲の良さは変わらないようだ。

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