夏の林間学校、いざゆかん歴史と美食の郷！｜リアクション

夏の林間学校、いざゆかん歴史と美食の郷！

　鴻上彰尋は、ガイドの案内に従って赤沼に到着した時、目を見張った。
　赤沼の言葉通り、緑色の沼は所々赤茶色に染まっている。
　ガイドの説明によると、水中の鉄分と繁茂する苔がこの幻想的な光景を作り出しているんらしい。
　鳥のさえずりを聞きながら深呼吸。たっぷりと空気を味わってから、目を開く。

（今夜は湖畔のキャンプ場に泊まるんだったな。夜は湖に映る星空が見れたらいいんだけど）

　彰尋は、知るはずの無い、自分が生まれた日の夜に想いを馳せる。聞く話では、それは星のとても綺麗な夜だったそうだ。
　
　――それから。
　夜眠れない時には、自然と星を見ることが多くなった。
　いい思い出が作れるかも、口元がほころぶのは彰尋ばかりではなく。
　白真白もまた、様々な色を見せる五色沼にシャッターが止まらない人間だった。
「うーん、いいね！　ゲームの世界みたい！」
　あっちもこっちもと撮りまくり、ふと足下の散策路に目を留める。
「この道もいい雰囲気だなー。あの、シャッター押して貰ってもいいですか？」
「はい、かまいませんよ」
　真白がスマホを渡したのは梓智依子だ。彼女は同行していた『まゆ先生を慰め隊』に一言断ると、真白のリクエストに応えて撮影をする。
「こんなに沢山、ありがとうございます！　次は何を撮ろうかな！」
　お礼を言って、ぴょんぴょん飛び跳ねながら道を進む真白を見て、まゆ先生は「若いわねぇ……」とため息をつく。
「真白ちゃんもそうだけれど、智依子ちゃんもスタイルいいわね」
　まゆ先生の熱い眼差しを全身に浴びつつ、智依子は苦笑した。
「やっぱその身長！　いいなぁ、私もそれぐらいあれば……」
　何を食べればそんなに？　と聞かれて、「ば、バイト先でまかないを頂いてます……」と答えたりしつつ、なぐさめ隊の皆と散策を楽しむ。
「みんなー！　弁天沼が見えてきたわよー！」
　まゆ先生の呼び声に答え、智依子は展望台にのぼる。
　そこからはそびえ立つ山の緑と、沼のターコイズブルーを見渡せるのだ。
「わぁ……」
　宝石を溶かし込んだような美しい水面をスマホで撮影し、娘の楓の元へ送信した。

（今度、楓と一緒に行きたいな）

　そう思いながら。
　智依子は、髪を揺らす風に身をゆだねた。