夏の林間学校、いざゆかん歴史と美食の郷！｜リアクション

夏の林間学校、いざゆかん歴史と美食の郷！

「会津戦争や白虎隊って時代劇とかでよく見るけど、史実とはやっぱり違うんですね、先生」
「そうねぇ。時代劇は、ドラマとして面白くするために脚色しているところがあるから」
　鶴ヶ城と日新館の見学を終えた桜たち『まゆ先生をなぐさめ隊』の面々は、昼食をとろうと喜多方ラーメンの店にやってきた。
「あらぁ、また学生さんと先生だわ。お腹いっぱい、召し上がってくださいね」
「また、とは……ウチの生徒がお邪魔しましたか？」
　店主に先生と呼ばれ、良い気分になったまゆ先生が問うと、店主はこう答えた。
　先ほど制服姿のほっそりした少女が来店し、熱いのと冷たいラーメンを大盛りで食べていったと。
「な、なんですって……あたしだってもっと食いまくるんじゃー！」
「まゆ先生、おちついて下さい。お腹壊したら大変ですよ」
「そうそう。早食いは美容に良くないもん」
　桜と絵梨奈は互いに目配せをしつつ、対抗意識を燃やすまゆ先生をなだめる。
「まゆちゃん先生！　このメニュー見て！　透き通ったスープが綺麗でＳＮＳ映えするよね。私、先生と一緒に写真撮りたいなー。皆も撮りたいよね？」
　絵梨奈がモデル仕事で鍛えた笑顔でお願いし、他の隊員が頷くと、まゆ先生の頬がぽっ、と染まった。
「みんな、写真は順番に撮りましょ。時間はあるし、ラーメンもゆっくり選びましょうね」
　桜は静かに椅子を引いて、まゆ先生を招く。別の隊員は荷物を預かったり、先生の隣に誰が座るかで少しもめたりした。
「まぁー、生徒さんに大人気なんですね。うちの子も行かせようかしら」
　という店主の言葉に、まゆ先生はもう鼻高々である。
「はぁぁ……この透き通るスープ、心までスッキリした気分だよぉ……桜ちゃんは？」
「うん、見た目ほどしつこくなくて、あっさりしてる」
　スープに酔いしれる絵梨奈の横で、桜はちょっと背脂多めのラーメンをすすっている。
「硬めに茹でた麺ってどんな感じ？」
「さっき店員さんがくれた小皿あるよー」
　隊員同士で取り分けたり、写真を撮ったり、大騒ぎである。
　ラーメンを食べ終えたらお次は馬刺しだと走り、辛味噌たれをつけすぎた絵梨奈が「スゴイ辛いよっ！」と悲鳴を上げたり、デザートにと食べた桃パフェの香りと甘さが一同の心を癒やしたり。
　道中は大盛り上がりであった。
「うーん、食べた食べた。さすがにこれでもう成長するわよね」
「もう成長したんじゃねーの、まゆ先生」
「そうそう。お店の人に『先生』って呼ばれたもんね」
「えー、そうかなー？」
　隊員達の言葉に照れるまゆ先生を見て、桜はほっと胸をなで下ろした。
　これでもう、「もっと食いまくるんじゃー！」なんて言わないだろう、と。