夏の林間学校、いざゆかん歴史と美食の郷！｜リアクション

夏の林間学校、いざゆかん歴史と美食の郷！

　八神修も遠海と同じように自由時間を待ち焦がれていたが、理由は少々違った。
「桃パフェ楽しみだね、修君」
「そうだな」
　なにせ、想いを寄せる七夜あおいと一緒に、パフェを食べに行くのだ。
　しかも、誘うためにスマホを見せたら、彼女が行きたいと思っている店と同じだったのだから、１７歳の少年が運命を感じてしまうのも無理はない。
「ここだよ、あおい。……おや」
「あっ、ののこちゃん！」
「あおいちゃん！」
　フルーツカフェのドアを開けると、そこには野々ののこと佐藤英二の姿があった。
「ののこちゃん達もパフェを食べに来たの？」
「うん。さっき、英二君と別のお店でラーメン食べてきたんだけど、デザートは桃パフェにしようって事になって」
　どうぞと招かれたので、修とあおいは一つのテーブルに４人で座ることにした。
「佐藤たちはどんなラーメンを食べたんだ？」
「あぁ、喜多方ラーメンって看板が出てたよね、野々さん。麺がモチモチでさ」
「うん。会津の空のように、澄み切った塩味のスープを一口……ふわふわチャーシューに、メンマの歯ごたえとぴりっとしたネギが……えーっと、まり、なんとかってやつで」
「マリアージュかな？　ののこちゃん」
「そう、それ！」
　ラーメンの話で盛り上がっているうちに、注文した桃パフェが到着。
「すごいボリュームだな。桃が丸ごと１個乗ってる」
「ふふっ、可愛らしいカップルさん、デートを楽しんでいってね」
「い、いや、桃に呼ばれたんです！」
「ねー」
　形良く切られた桃の大きさに驚く修だったが、店主の言葉にあおいと目を合わせて苦笑する。
「修君、ののこちゃんと一緒のとこ、撮ってもらえる？」
「いいとも」
　修はあおいとののこがパフェに驚いている顔を写真に収め、恥ずかしがる英二と、口にクリームをつけたののこを引きの構図で撮り、４人一緒の写真と、あおいと２人のものは店主にシャッターをお願いした。
「ふぅ、たくさん写真撮ったねー」
「それにしても美味いな」
　英二が器からこぼさないように苦労して桃を食べる様に、修もならう。
　パフェの桃は固い食感と芳醇な甘さが売りらしく、お抱えシェフの料理を食べ慣れている修にとっても、新鮮な味わいだ。
「はぁ～、これ、うちで食べられたら良いのになぁ」
「作れるかなぁ……挑戦してみる？」
　ののこがあおいと料理について話しているのを聞きつつ、修の目に入ったのは、店の壁に貼られた『果物狩りカレンダー』だった。
「料理もいいが、果物狩りもいいな。佐藤はどうだ？」
「うわー、福島はサクランボからリンゴまで色々あるんだねー。僕は梨とか行きたいな。八神君は行ったことあるの？」
「俺は……あったかな？　よく覚えていないが……サクランボなんか、食べてみたいな」
「いいね！　３つくらい一度に食べてみたいなぁ」
　うっとりと頬を染めるあおいに、英二とののこも笑顔だ。
　４人は果物狩りの話題でさんざん盛り上がった後、ドライフルーツのお土産を買って、店を後にしたのだった。