夏の林間学校、いざゆかん歴史と美食の郷！｜リアクション

夏の林間学校、いざゆかん歴史と美食の郷！

　妹よりも早く目覚めた夏夜は、そっとテントから出た。
「さて。昨日の火は、っと」
　消し炭を焚き火台の中央に集め、枯葉を乗せて、酸素を送り込む。
「ふぁ……夏夜ちゃんおはよう」
「おはよう、夏朝。僕の方が起きるのが早かったね」
　くべた薪が燃えだしたあたりで、寝ぼけ眼の妹がテントから這い出してきた。
「はー、ゆっくり寝ちゃってたぁ」
「まぁ、僕も早く起きすぎて少し眠い気はするね」
　火にやかんをかけ、お湯を沸かしてコーヒーを入れる。トーストと目玉焼きも作って、朝食の出来上がりだ。
　熱々のコーヒーには砂糖とミルクを入れ、２人とも猫舌なので少し冷ましてから。
「あつあつ！」
「この位がおいしいね」
　さわやかな湖畔の朝、至福の朝食。後はここに猫が居てくれたなら、との思いを夏朝は口にした。
「キャンプ場の猫さん……いないかな？」
「近くにいるといいね」
　夏夜が答えた時。
「みゃ～ご」
　足下から鳴き声がした。
「わー、猫さんだ！」
「おや、嬉しいね」
　しゃがむ２人にすりよって来たのは、少し太めの三毛猫である。鼻の周りが黒く、ヒゲを生やしているような顔だ。
「呼吸音がぷすぷすいうのが可愛いね」
「いわゆるブサカワ系というやつかな」
　撫でさせてくれる三毛猫の首輪には、『看板猫　まちこ』と書かれてある。
「えっ、看板猫？」
　驚く夏夜の横で夏朝がスマホを構えると、まちこは心得ているという風に、寝そべってポーズをとった。
「すてき！　まちこさん、目線お願いします！」
「僕も撮らせてもらおう」
　目玉焼きの端っこをあげたり、猫じゃらしで遊んだりするうちに、まちこは満足したらしい。
　ぷすんと鼻を鳴らして去った――と思ったら、別のテントに行って鳴き、朝食のお裾分けをもらっている。
「さすがは看板猫だ」
「いい猫タイムだったね」
　後片付けをしながら、湖の景色を楽しみ、鳥の声に耳を傾ける。
「来年もその先も、寝子高の皆が林間学校を楽しめますように」
　夏朝の言葉に、夏夜も深く頷く。
「そうだね。来年以降の林間学校と、寝子高の皆に幸あれ」