夏の林間学校、いざゆかん歴史と美食の郷！｜リアクション

夏の林間学校、いざゆかん歴史と美食の郷！

　もしかしたら、と恐れてはいたものの。
　莉鳥は元カレの夢を見ずに熟睡し、朝を迎えることができた。
「……よかった」
　朝食を軽く済ませ、ぼんやりと湖畔を歩いていると、インストラクターにカヤックに誘われた。
　他の２人の生徒――愛と蒼と共に説明を受けて乗り込み、パドルを握る。
「椎井さんは、どうしてカヤックやろうと思ったの？」
　湖上にて、蒼に問われた莉鳥は、はて、何故だっけと首を傾げた。
「特にやること無かったからだけど……実際にやってみると、爽快だね。何も考えずにパドルを動かすのは、
すっきりするわ」
　莉鳥の答えに、蒼がくすりと笑う。
「あぁ、それは私もある。涼しげな湖をカヤックで進むっていうのは気持ちがいいよね」
「仙藤さんのきっかけは？」
「あー、私はね……眠気覚ましのためかな」
　眠気覚まし！？　と、愛と莉鳥の声がハモる。
「昨日の夜、ゲームに熱中しちゃって。すごく眠いんだけど、今寝たら昼まで爆睡しそうだし……その点カヤックなら緊張感をもって臨むし、スリルもあって眠くならないかなと思って。霧生さんは？」
「うん、もともと興味はあったんだけど、きっかけは……ちょっと苦手な先輩がいてね」
　蒼が問うと、苦笑しつつ答えてくれた。
　何でも、件の先輩が釣りに行くというので、彼女は別の場所に行こうと思ったから、らしい。
「浅見先輩、ボウズにならなきゃいいんだけどね」
　愛は、遠くに見える釣り人らしき人影を見やり、呟いた。

◆

「佐藤先輩、引いてます！」
「うわっ、ほんとだ」
　英二と柚乃は、釣りの道具を借りる途中で一緒になり、共に釣り糸を垂れることにした。
「すごいね、浅見さんは……さっきも大漁で、アドバイス通りにしたら、僕も釣れるようになったし。どうも
ありがとう」
　英二はバケツの中で泳ぐ魚を見ながら、柚乃を賞賛のまなざしで見る。
「え、そんなぁ……とんでもないです」
　柚乃は恐縮するばかりだ。
　何せ、いけ好かない後輩と一緒にいたくなくて釣りにきただけなのに、どうしてだか大漁に恵まれてしまっただけなのだから。

（まったく、本当に霧生ったら一年でレギュラーになれたからって自信過剰っていうか……それに引き替え佐藤先輩は謙虚で……羽生先輩もそうだけど、２歳差でこうも違うものかしら）

　遠い湖上にカヤックらしきものを認め、柚乃は小さくぼやいた。

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