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モフれ！ 第３６回寝子ヶ浜ビーチ☆スターズコンテスト！
●三毛猫協奏曲
梓 智依子は緊張していた。
智依子は１４歳で子供を出産し、今は４歳の娘を持つシングルマザーの智依子である。
子育てで大変な時期を乗り越えて、今年の春、寝子高に入学することができた彼女にとって、女子高生としてのはじめての夏は、いつもの年とは違う特別感がある。
娘の楓とは、今年４度目の海。寝子ヶ浜海岸もすっかり慣れた感じ……と思いきや、普段以上の賑わいで、何事だろうかと思えば毎年恒例の「ビーチスターズ」が開催されていた。
「もうそんな時期だったのね」
偶然にも、智依子と楓はお揃いの三毛猫柄の水着だった。
智依子はセパレート、楓はワンピースタイプで耳としっぽも装着済みだ。
そんな可愛らしい親子を、実行委員が見逃すはずがない。
ステージで様々なけものな水着を見て、「あの猫さんかわいいねー」などと観客として催しを楽しんでいたところを声を掛けられ、親子そろって出場することになったのである。
（……まさかビーチスターズに出場するなんて思ってなかった。もちろん出場するなんて初めてだし）
娘の楓は喜んでキャッキャしている。
（楓が喜んでいるなら、いいかしら）
智依子は自分のことは頭から抜けて母の顔である。
はしゃいだテンションのまま、楓がステージに飛び出していく。
「あっ、待って、楓」
ショートカットで涼し気なガラス細工のような灰色の瞳、ファッションモデルのような体型をした智依子は、本来であれば人の目を引くところであったろう。けれど今は、はしゃいでる娘をどう嗜めるか、はしゃぎすぎて転んで怪我でもしたら大変、とそちらにばかり気がいって、ウォークどころではない。
ステージ中央でようやく娘を掴まえると、抱きあげてまずは自己紹介。
「梓智依子、寝子高１年生です。この子は娘の楓、４歳です」
可愛らしい三毛猫母子の登場に、相好を崩すのは審査委員席の中沢 リッカルド町長と野々 ととおだ。
「やあやあ、なんて可愛らしい」
「うちの娘もあんな頃があったなあ」
なんて、気分はおじいちゃん。目尻の皺を深めて目を細めている。
みんなに見つめられて、楓も急に緊張してきたようで背筋を伸ばしている。
娘を安心させるように手を繋ぐと、智依子はしゃがんで娘と自分の顔の真ん中にマイクを構えた。
「最近アニメ化された人気絵本『けもの幼稚園』の主題歌を歌います」
愉快な音楽だ。
歌詞は「もふもふ」が繰り返され、いろんなけものの子による楽しい幼稚園生活が歌われている。
緊張でいつもより声の小さい娘と、もーふもふもふ♪ とサビを合唱していると、突然、三毛猫――道哉が飛び入り参加してきた。
「あっ、さっきのねこさん！ いっしょにうたいたいのね！」
楓は道哉を抱き上げた。
モフモフと頬ずりすると、さっきより大きな声で元気にもーふもふもふ♪ と歌いだす。
道哉は楓が元気に、自分らしく歌い出したのを見て嬉しく思っていた。
（もーふもふもふ♪ 変わった歌だが気持ちが楽しくなるね）
歌が終わると、最後の「モフ―！」なアピールタイムである。
（と言われても、何をどうやら……）
楓と顔を見合わせて、智依子は少し恥ずかしいけれど、今の気持ちを伝えることにした。
「私は楓が大好き！」
「ママだいすき！」
ほとんど同時に娘からもラブが返ってくる。
思わず赤面する智依子と元気にキャッキャとはしゃぐ楓が好対照で、おじいちゃん気分のおじさんたちはまたまたほっこりだ。
最後はふたりで声を揃えて。
「モフーーーー！！！」
（おやおや、思いがけずいいものを見せて貰ったよ）
三毛猫の道哉も声を合わせて。
「にゃーーー！」
「皆すごいにゃ、かわいいにゃ！ かっこいいにゃ！」
観客席ではえみな ハルくんが楽しそうに拍手をしている。
猫好きな恵御納 夏朝と恵御納 夏夜も、猫と親娘の共演に、メロメロ蕩けそうな顔であった。
◇
「やっほー。三毛谷さん見てたよ！」
やり過ぎぬうちにと母子と別れて、また屋台のあたりに戻ってきた道哉は、タルトに声を掛けられた。
「にゃー（見てたんだね、響の嬢ちゃん）」
「おつかれさま。ね、よかったら、海鮮丼食べに行かない？ 三毛谷さん今日猫だから僕がご馳走しちゃうよ」
「にゃにゃー（それじゃあ、お言葉に甘えて、ご相伴に与ろうかねぇ）」
いつもは猫になったタルトが道哉の頭に乗ることが多いのだが、今日は逆だ。
タルトの頭に道哉が乗って、ふたりは屋台の天幕の向こうに消えていった。
梓 智依子は緊張していた。
智依子は１４歳で子供を出産し、今は４歳の娘を持つシングルマザーの智依子である。
子育てで大変な時期を乗り越えて、今年の春、寝子高に入学することができた彼女にとって、女子高生としてのはじめての夏は、いつもの年とは違う特別感がある。
娘の楓とは、今年４度目の海。寝子ヶ浜海岸もすっかり慣れた感じ……と思いきや、普段以上の賑わいで、何事だろうかと思えば毎年恒例の「ビーチスターズ」が開催されていた。
「もうそんな時期だったのね」
偶然にも、智依子と楓はお揃いの三毛猫柄の水着だった。
智依子はセパレート、楓はワンピースタイプで耳としっぽも装着済みだ。
そんな可愛らしい親子を、実行委員が見逃すはずがない。
ステージで様々なけものな水着を見て、「あの猫さんかわいいねー」などと観客として催しを楽しんでいたところを声を掛けられ、親子そろって出場することになったのである。
（……まさかビーチスターズに出場するなんて思ってなかった。もちろん出場するなんて初めてだし）
娘の楓は喜んでキャッキャしている。
（楓が喜んでいるなら、いいかしら）
智依子は自分のことは頭から抜けて母の顔である。
はしゃいだテンションのまま、楓がステージに飛び出していく。
「あっ、待って、楓」
ショートカットで涼し気なガラス細工のような灰色の瞳、ファッションモデルのような体型をした智依子は、本来であれば人の目を引くところであったろう。けれど今は、はしゃいでる娘をどう嗜めるか、はしゃぎすぎて転んで怪我でもしたら大変、とそちらにばかり気がいって、ウォークどころではない。
ステージ中央でようやく娘を掴まえると、抱きあげてまずは自己紹介。
「梓智依子、寝子高１年生です。この子は娘の楓、４歳です」
可愛らしい三毛猫母子の登場に、相好を崩すのは審査委員席の中沢 リッカルド町長と野々 ととおだ。
「やあやあ、なんて可愛らしい」
「うちの娘もあんな頃があったなあ」
なんて、気分はおじいちゃん。目尻の皺を深めて目を細めている。
みんなに見つめられて、楓も急に緊張してきたようで背筋を伸ばしている。
娘を安心させるように手を繋ぐと、智依子はしゃがんで娘と自分の顔の真ん中にマイクを構えた。
「最近アニメ化された人気絵本『けもの幼稚園』の主題歌を歌います」
愉快な音楽だ。
歌詞は「もふもふ」が繰り返され、いろんなけものの子による楽しい幼稚園生活が歌われている。
緊張でいつもより声の小さい娘と、もーふもふもふ♪ とサビを合唱していると、突然、三毛猫――道哉が飛び入り参加してきた。
「あっ、さっきのねこさん！ いっしょにうたいたいのね！」
楓は道哉を抱き上げた。
モフモフと頬ずりすると、さっきより大きな声で元気にもーふもふもふ♪ と歌いだす。
道哉は楓が元気に、自分らしく歌い出したのを見て嬉しく思っていた。
（もーふもふもふ♪ 変わった歌だが気持ちが楽しくなるね）
歌が終わると、最後の「モフ―！」なアピールタイムである。
（と言われても、何をどうやら……）
楓と顔を見合わせて、智依子は少し恥ずかしいけれど、今の気持ちを伝えることにした。
「私は楓が大好き！」
「ママだいすき！」
ほとんど同時に娘からもラブが返ってくる。
思わず赤面する智依子と元気にキャッキャとはしゃぐ楓が好対照で、おじいちゃん気分のおじさんたちはまたまたほっこりだ。
最後はふたりで声を揃えて。
「モフーーーー！！！」
（おやおや、思いがけずいいものを見せて貰ったよ）
三毛猫の道哉も声を合わせて。
「にゃーーー！」
「皆すごいにゃ、かわいいにゃ！ かっこいいにゃ！」
観客席ではえみな ハルくんが楽しそうに拍手をしている。
猫好きな恵御納 夏朝と恵御納 夏夜も、猫と親娘の共演に、メロメロ蕩けそうな顔であった。
◇
「やっほー。三毛谷さん見てたよ！」
やり過ぎぬうちにと母子と別れて、また屋台のあたりに戻ってきた道哉は、タルトに声を掛けられた。
「にゃー（見てたんだね、響の嬢ちゃん）」
「おつかれさま。ね、よかったら、海鮮丼食べに行かない？ 三毛谷さん今日猫だから僕がご馳走しちゃうよ」
「にゃにゃー（それじゃあ、お言葉に甘えて、ご相伴に与ろうかねぇ）」
いつもは猫になったタルトが道哉の頭に乗ることが多いのだが、今日は逆だ。
タルトの頭に道哉が乗って、ふたりは屋台の天幕の向こうに消えていった。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2022年04月23日
- 参加申し込みの期限
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- 2022年04月30日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2022年04月30日 11時00分
