モフれ！第３６回寝子ヶ浜ビーチ☆スターズコンテスト！｜リアクション

モフれ！第３６回寝子ヶ浜ビーチ☆スターズコンテスト！

●特殊メイク？　いいえ自前です

　続いてステージに登場したのは、アイオ・キャンドライト。その正体は、先に登場した寝子高生の喜矢武あいおといっしょにMewTuberグループあいおシスターズとして活躍するほしびとである。
　ほしびとは、寝子島の南、鈴島近海の上空に浮かぶ異世界『星幽塔』に住まう人々のことである。
　地球人とは違う寿命、違う姿かたちをした彼らは、寝子島に来た時は不思議な力によってこちらの世界で常識的な、いわゆる『人間』のような姿に変化するのが常であるのだが、今日は勝手が違ったようだ。
「星幽塔のままの姿でネコジマにこれちゃいましたわ！？　テーマがけものなら優勝間違いなし！　ですわ！」
　ほしびとの猫獣人の姿はアイオにとって素のままだが、地球の人間が真似をしようとしたら、ハリウッド並みの特殊メイク技術が必要だろう。会場から漏れるのは「すごい！」「本物みたい！」という感嘆の声。

「はいはい！　アイオを選んでくださいなっ。
このモフモフ度を見て無視はできないでしょう？」

　CHU♡と観客に向かって投げキッス。
　水着はヒョウ柄のビキニで、猫がヒョウを着るユーモアも見せどこである。
「別におかしいことではないのです、人間だっていろんな動物の柄の服を着てますからね」
　それはそうだ。
　ヒョウも着ればトラも着る。ウシも着ればハムスターも着るじゃないか。
　人間のやることと比べたら、違和感なんてない。
（もっとも今のアイオは体中にモフモフの毛があるので服が無くても別に気にしないのですけど）
　と内心思ったりもするが、さすがに人のかたちで真っ裸は、地球のルールとして警察っていう人が来たりしていろいろまずそうなので、止めておいたほうがいいだろう。

　配信でステージに立つのは慣れているアイオは、ファッションモデルさんみたいにきれいにステージを歩いてゆく。くるり一回転するときは、自慢のしっぽもふよふよ振ってアピール。作り物ではありえない尻尾の動きに、会場はまたどよめくが、一方で高度な特殊メイクだと信じてもいるようである。

「会場のみなさまーっ！　初めてじゃないけど初めましてのアイオ・キャンドライトですわ。
　え、どこかの姉妹MewTuberに似てる？　それは……ご想像におまかせしますわ」

　アピールはもちろん歌だ。
　流行りの曲をメドレーで歌う。
「みなさま手拍子でご一緒にぃ」
　歌の合間に両手を高く上げて手拍子のジェスチャーをすれば、会場もノリノリで手拍子が起きる。
「素晴らしいね～っ！」
　審査員席の野々ととおも楽しそうに手拍子していて、娘とお揃いのアホ毛がぴょこぴょこ揺れる。
　二曲、三曲とサビをメドレーで歌い終えたアイオは、最後に全力でシャウトした。

「けもの、最高ですわ！　モフーーー！」

　モフーーー！　とレスポンスが会場を揺るがす。
「ありがとうございましたわ、チュッ」
　来たとき同様、去り際にも投げキッスを残して、アイオはステージを後にした。

「ふー、いいライブが出来ましたわ」
　出番を終えたアイオは、ドリンク片手にパラソルの下のデッキチェアでくつろぐ。
　反応はどうだったか気になってスマホをチェックすると。
「ねこったーには『MewTuberあいおシスターズが着ぐるみライブ』と出ていますわね。『いや特殊メイクだ』ってツッコミもありますわ。今回はほしびと姿に本名名義で出たのに何でバレたのか謎ですわ……」

　外見が違えど声とやってることは完全にあいおシスターズだったので、ファンにはまるっとお見通しだったようである。