モフれ！第３６回寝子ヶ浜ビーチ☆スターズコンテスト！｜リアクション

モフれ！第３６回寝子ヶ浜ビーチ☆スターズコンテスト！

●モッフモッフです♪

「今年の海は耳と尻尾を付ける決まりなんですねぇ」
　狼の耳と尻尾を付けたセクシーな水着姿で、ふわっふわっと尻尾を振って巫部紫苑は歩いている。
　海に来た時に手渡された狼のケモ耳と尻尾を特に疑うでもなく装着し、手にしたロシアンルーレットたこ焼きをもぐもぐしながら、屋台を端から端へと制覇中だ。
「今年の屋台の料理もどれも美味しいですねぇ♪」
　寝子まんま丼を食べたかと思ったら、その流れで寝子ヶ浜スペシャルラーメンを二杯啜る。それでお腹がいっぱいかと思えばまだまだ入るデザートの数々。際限というものが感じられない。はじめて見た人なら、異次元ポケットのような胃袋に驚愕すること間違いなしだが、これが毎度のことなので、中には「今年もさすがだね！」なんて声をかけてくれる顔なじみの屋台のあるじもいたりする。
　そうして屋台を流していたら、実行委員に指名された。
「水着コンテスト？　実行委員会？　とりあえずそのコンテストに出ればいいんですか？　いいですよ」
　浮世離れした素直さも、紫苑の取り柄である。
　もう一つの彼女の取り柄は、けしからんほどのナイスバディなのに、恥じらいのようなものが微塵もないところだ。いってみれば天然なのである。

「えっと……ステージの中央まで進んで……ここで一回転、でしたね」
　クルっと優雅に回りながら、無意識に突き出された胸が、たわんたわん。
　零れ落ちそうで、観客のみなさんは、おもわずきゃっと手で目を覆ってしまう。
　その指の隙間から、イケナイものでも見るような気持ちで見ていると、紫苑さんときたら、
「このあと皆さんに水着をお見せして……あら、尻尾がちょとズレてる？」
　なんて独り言をいいながら、いそいそとお尻のあたりに手をやって、尻尾の位置を直したりするじゃあありませんか。
　尻尾の位置が気に入ると、にこっと笑って一礼し、その場にぺたっと座り込んで狼さんポーズをする。

「自己紹介ですか？　寝子高3年の巫部紫苑と申します。
　一応これでも生徒会の書記を担当してまして、
　高校最後の一年を色々と楽しみながら過ごしていきたいと思います♪
　……こんな感じでしょうか？」

　自己紹介の台詞はみんなの耳を右から左へ素通りする。
　何しろ。
　胸が！　谷間が！
　本当にもう、危なっかしくて見ていられないのである！
　いや、目が離せないというべきか。

「最後にアピールですか？　そうですね……」
　んー、と紫苑は人差し指を唇のあたりに当ててしばし思案したのちに。
　またにっこりとしてこう言った。

「まだ屋台巡りの途中でしたので、これが終わったらまた屋台を食べ歩いて全制覇をしてみたいですね♪
　モッフモッフです♪」

「ブ……ブラボー！！」
　リッカルド町長のスタンディングオベーションにつられて、観客たちも我に返って大きな拍手。
　モフメーターもうなぎ上り。
　モッフモッフなのか、ユッサユッサなのか。どこを見ていいか戸惑う観客たちを置き去りにして、ふんふんと鼻歌交じりに紫苑はステージを後にする。

「ふぅ、突然呼び出されましたけど、これはこれで楽しかったですし、動いたおかげでお腹もいい具合すきました……さぁ、屋台巡りの再開です♪」

　そのまま屋台メニュー全制覇に挑む呑気な紫苑でありましたとさ。