異世界転生・ギガンティックバトル｜リアクション

異世界転生・ギガンティックバトル

【再会】

　リリー・ベッド・イン（略してLBM）の中で、秘月は混乱状態に陥っていた。
「……な、なにこれ！　これは何の冗談かなっ！？」
「卵城さん、落ち着いて！」
　楓香は秘月の肩をぎゅっと掴む。楓香は秘月よりも年下だが、ひとたび戦場に出れば、経験において楓香に一日の長がある。
「……大丈夫！　卵城さんはあたしが守るから！　だから、私のサポートをお願い！」
「……さ、サポート？　はっ……そ、そうだったね！　よし！　じゃあ、早速だけどもっと密着させて貰っていいかな！？」
「え、立ち直り早っ……って、はにゃああ！？」
　返事を待たずに、秘月が楓香の胸に思いきり頭を埋める。
「ちょ……ら、卵城さん、近いっ！　近過ぎるからっ！」
　薄いパイロットスーツで一枚で女同士密着している状況に、楓香は顔を耳まで真っ赤にして叫ぶ。
「何を言う。いいかい、楓香くん。きみの力を私の能力で支援するには、これがもっとも理想的な形なんだ！」
「そ、それはそうかもしれないけどっ！」
　と、そのとき、指令室から通信が入る。
『雨崎隊員、何をしている！　ボサッとするな！』
「こ、荒太郎っ！？　わ、わかってる！　これから、本気出すんだから！」
　兄妹げんかをするように叫べば、視界に新しいビーストの姿が飛び込んでくる。
「来た！　え？　あれは……」
　楓香の瞳が大きく見開かれ、そこに様々な感情が生まれる。
　目の前に現れたそのビーストの姿を、楓香はよく知っていた。

　愛猫萌々子は転生してすぐに記憶を失い、ビーストの手先になっていた。
　ただし、ただのビーストではなく、寄生されたビーストの洗脳によってビーストの配下となった元A.B.I隊員に、である。
「ハンターとパイロットに告ぐ。ビースト様への攻撃を直ちにやめなさい」
　愛機のハンターである『アイビーレオヘッド』の内部から、萌々子は同胞にして、愚かなる人類に最後通告を行う。
　と、そのとき。
『……萌々子ちゃん？　そのハンター、萌々子ちゃんだよね？』
「え……？」
　目の前のハンターから通信が入る。
『あたしだよ！　同僚の雨崎だよ！　忘れちゃったの！？』
「……アマ、サキ？　……っ！？」
　刹那、ズキンと頭に鈍い痛みが走る。
「……うるさいです！　私はあなたなんて知りません！」
　拒絶の言葉とともに、アイビーレオの側頭に備えられた鋼のツインテールが振りまわされる。
『……っ！　萌々子ちゃん、もしかしてビーストに操られているの！？』
　LBMは目の前に念動障壁を展開し、アイビーレオの攻撃を弾く。
　彼女の念動能力は極めて高く、これまでに何度自分も救われたことか――。
（……え？）
　ふっと頭に一瞬だけ浮かんだ情景に、萌々子は思わず息を止める。
　が、次の瞬間、またズキズキとした痛みが萌々子を襲い、彼女はビーストの尖兵として使命を思い出す。
『おねがい、正気に戻って！』
「うるさい！　ビースト様に仇なす者は死あるのみです！　くらいなさい、アイビーキック！」　
『きゃあああ！？』
　自分の中にある「ナニカ」を揺り起こす声を遮るように、萌々子はアイビーレオの鋭い脚蹴がLBMを襲った。