アニマル☆スパリゾート｜リアクション

アニマル☆スパリゾート

●岩風呂でビックリ、まったり

「……なぜ動物がいるの？」
　フロントで招待状を手渡した森篠琳子が森篠奏子と一緒に水着に着替えて室内スパへ入ってみると、人に混じって動物がたくさんいることに面食らった。
「ロビーとかにもいたけど、お風呂の中にもいるんだね、動物さん」
　常識的な琳子は目を白黒させつつ疑問を覚えずにいられないが、奏子はというとテンション上がりまくりだ。
「お姉ちゃん、早く行こう！」
「え、ええ……」

　三宅葉月はロッカールームで黒のビキニに着替え、水着と同系色の花柄パレオを巻いた。
　水着に着替え終え、最初に訪れたのは屋外の岩風呂。
　岩風呂は人気があるのか、老若男女、様々なお客さんが肩までお湯に浸かってまったりしている。
　小さい子供が泳いでいるので、とある大人が泳いじゃ駄目だよと注意した。
「岩風呂は人気があるのね」
　体にお湯をかけてから、葉月はゆっくり、足からお湯の中へ。
「ふう……」
　肩まで浸かってゆったりしていると、隣に誰かがやって来た。
　誰かの毛が腕に触れたので、すごく毛深いお客さんかしらと思い隣を見ると……そこにいたのは熊だった。
　普通の人間ならギョッとしたり、そーっと逃げ出すところだろうが葉月は特に動ずることもなく、静かに岩風呂にその身を滑らせている。
　静謐な存在感ゆえにアンティークドールにも、高貴な森の精霊などに疑えるほどの葉月が持つ雰囲気に、熊も最初は胡散臭げに葉月を見ていた。
　しばらく見ていた熊は、葉月が鋭い視線にもまったく動じないばかりか、悠然と温泉を楽しむ様子に敵ではないと見做したらしい。
　襲うでもなく、ちょっかいを出すでもなく、熊はじっと湯に浸かることにしたようだ。
　隣でじっとしている熊と一緒に、葉月は岩風呂を満喫。
　ゆっくり浸かっていたいが、のぼせてしまいそうだったので岩風呂を上がり次のお風呂へ。

　葉月と入れ違いで、琳子と奏子が岩風呂へやって来た。
　人間のお客さんだけでなく、温泉でお馴染みの猿やカピバラがまったりしているので「可愛いー」と奏子は大はしゃぎ。
「これ、着ぐるみか何かな？」
　動物の中に熊がいると思いつつ近づくと、それは着ぐるみではなく本物の熊だった。
　大人しくお湯に浸かっているようだが、奏子は熊を刺激しないよう岩風呂に入る。
（もし襲ってきたら……！）
　襲われたら大変！　と琳子も慌てて岩風呂に入る。
　すっかりハラハラして全然温泉を楽しんでいる様子がない琳子に対し、奏子は岩風呂を楽しんでいるようだ。
「お姉ちゃん、この熊さん大人しいから大丈夫だよー」
「そ、そう……」
　いつ牙をむき襲いかかるか心配だったが、熊はいい湯加減で気持ちいいのか特に何もしてこなかった。
　大人しい熊に慣れたのか、奏子は大胆に熊に近づいてお湯をかけた。
「熊さん、お湯のかけあいっこしよう！」
　はしゃいでお湯をかけるが、熊は無反応。微動だにしない。
（お願いだから、そのまま悠然と岩風呂を楽しんで……！）
　岩風呂に入っている間、何度も心臓が止まりそうな思いをしたので堪能どころか精神疲労でダウンしかかった琳子だった。