寝子島ビーチグランピング！｜リアクション

寝子島ビーチグランピング！

●切り取れない眩しさ

　梓智依子は４歳になる娘・楓とともに、鈴島の東側にある島へ向かっている。
　きっかけは『寝子島ビーチグランピング　すずしま』が行っていたモニター抽選会。オープンを記念して行われ、当選者には一泊二日の宿泊券がプレゼントされる。それが幸運にも２人分あたり、今こうして船に揺られている。
　現地に到着するとキャンプというよりはホテルのような雰囲気。グランピング用の高級テントは内装も煌びやかで、各種設備もひととおり揃っている。

「すごーい！」
「おとなしくしなさい」

　智依子はそう注意するが、表情は穏やかだった。
　楓は目の前に広がる光景にすっかりはしゃいでいる。荷物を置いてから２人は水着に着替えてビーチに向かう。
　浮き輪でただ浮かんでゆったりしたり、波打ち際で戯れたりと落ち着いた時間を過ごす。寝子島からも海は見えるが、ここで感じる時間は一味違う。智依子は楓が砂遊びやおままごとをしたりする様子をスマホで何枚も撮影する。でもどんなに撮影しても、楓の持つ眩しさを切り取ることなんてできなかった。

「ママー、あんなところにバナナがあるよー！」

　そんな気持ちになっていると、楓が遠くを指さしながら声を掛けてきた。

（ああ、あれのことね）

　指先を辿っていくとバナナボートが置かれていた。楓はそれがボートであることが分かると乗ってみたいと主張する。

（４歳の子供を乗せられるのだろうか……）

　懸念を抱きつつ智依子がスタッフに尋ねると、一般的には４歳以上なら乗っても大丈夫な年齢らしい。それに楓のことを考慮してスタッフも牽引するパワーボートの速度を調整するという。
　その心遣いに感謝しつつ、楓に伝えるととても嬉しそうだ。２人でバナナボートに跨ると、その勢いを楽しんだ。

「すごかったね～」

　楓の無邪気な声がとても嬉しそうで、智依子は微笑んだ。海を満喫したあとは、燻製づくり体験に参加する。

（意外に難しいのね）

　食材を燻すだけといえば確かにその通りなのだが、温度の調整や管理がなかなか大変だ。手慣れたスタッフがいるおかげでなんとかなっているのは否めない。けれど、貴重な体験だと感じる。
　そして夕食はＢＢＱ、焼きマシュマロ、旬のフルーツ盛り合わせ。贅沢な食材が並び、グランピングと呼ぶのにふさわしい食事となった。

「おいしかった！」
「そうだね」

　食事を終えてのんびりしていると、日が暮れて辺りが暗くなる。智依子はビーチで売っていた花火を買って、楓と２人で楽しむ。
　花火を全て使い切る頃には時刻は夜８時を過ぎていた。２人で露天風呂に入り、楓と星座がどこにあるかを指さして教えた。

（すごく充実した１日だったわ）

　智依子は風呂から出る頃にはすっかり疲れていた。しかしとても心地よいものだった。その心地よさを胸に抱いたまま、２人で仲良く眠った。

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