忘れられた大木の大蛇伝説！｜リアクション

忘れられた大木の大蛇伝説！

　逆巻天野は法衣姿で寺の境内の掃き掃除をしている。
　そうしながらも、頭の活動の一部は巷を騒がす大蛇騒動に向けられている。とはいえそこまで深く考えているわけではない。軽い興味、というだけである。
　と、寺の入り口で立ち話をしている住職と、お年寄りの声が聞こえてくる。話題の内容は、まさに大蛇について。
　天野は掃き掃除の手を止めた。二人のもとへ歩み寄っていく。
「……すみません、その白い服がどうこうって…一体なんの話でしょうか？僕にも、教えてもらえませんか？」
　軽い興味が好奇心に変わった瞬間である。
　お年寄りの話によると、蛇が出た時は白い服を着てはいけない。
「――それはなぜです？」
「さあ、わしも知らん。ただ、白い服を着るなということだけ。それと」
「それと？」
「このことについてはあまり深く聞くな、と言われたな」
「誰からその話を聞いたんですか？」
「わしの祖母だよ。迷信深い人だった。今はこのお寺に眠ってるがね」
「そうそう、お墓参りに来てくださったんだ。あんま邪魔するでないよ」
「これはこれは……」
「はは、邪魔だなんて」
　と会話は終わる。老人は墓参りに向かい、天野は掃き掃除に戻る。しかし、彼の頭には一つの言葉が引っかかる。
「墓、か」
　視線の先には、この寺で一番古い墓。

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