ハッピーバースデー！　７月☆｜リアクション

ハッピーバースデー！　７月☆

●家族でお祝い

　琳子が寝子高を卒業し、寝子島信用金庫の窓口担当として働き始めて３ヶ月。
　入社同期の同僚と仲良くしたり、仕事に余裕が出てきたり。
　忙しいながらも、それなりに充実した社会人生活を送っている。
　今日もよほどのことがない限り、残業無しで帰宅できるだろう。

「……そういえば、お父さんが亡くなってから、家族の誕生日って祝ったこと、あったかな？」
　出勤中、ふと、そんなことを思い出した。
　琳子が就職したので、今年からは保険外交員の母の収入と合わせたら親子3人慎ましく生活する分には十分な程度には楽になった。
　それまでは本当に大変で、高校の学費や就職に備えて、簿記や情報処理など就職に有利な資格を取るのに結構お金かかった。
　だから今年の5月、誕生日に奏子から変なお菓子を貰った時は面食らった。
（レビュー評価で体が砂糖になりそうなガツンとした甘さのレインボーなグミには参ったわ……）
　ショッキングピンクと原色の紫のグラデーションのお菓子箱に入っていたので、中身はとんでもないものだというのは予測できていた。
　呆れつつも味見をすると、ガツンとした甘さにビックリ。けど、内心は嬉しかった。
　それを表面に出したら、奏子が調子に乗るので黙ってはいたが。
「そういえば、今日は奏子の誕生日だったわね。プレゼント、何をしたらいいかな……」
　残業が無かったら、何か買って帰ろうと決めた。

　幸いなことに、残業が無かったので琳子は仕事帰りにプレゼントを買いに行くことにした。
　何がいいかしら？　とあれこれ考えたが、結局は無難にバースデーケーキを購入。
　これだけでは物足りないかもと思い、たまたま見かけたアクセサリーショップで、見つけた飴玉っぽい感じのアクセサリーを購入。
「あの子、駄菓子っぽいのが好きだったよね」
　でなければ、琳子の誕生日プレゼントにガツンと甘いグミを選ばないだろう。
　ついでに、ということで、駄菓子屋に寄ってお菓子の詰め合わせを買うことにした。

　帰宅すると、上機嫌な奏子が出迎えてくれた。
「お姉ちゃん、おかえりー！　これ、お母さんにもらったの！」
　そう言って奏子が見せたのは、チョコレートの形をした消しゴムや棒キャンディのシャーペンといった文房具一式だった。
「良かったわね。それでちゃんと、夏休みの宿題をするのよ」
「わかってるって！」
　夕食を済ませた後は、琳子が買ってきたバースデーケーキに10本のロウソクを立てた。
　皆で『Happy Birthday to You』を歌ってから、奏子がロウソクの火を吹き消す。
「10歳の誕生日おめでとう、奏子」
　琳子と母がクラッカーを鳴らすと、奏子は満面の笑みで「ありがとう！」とお礼を言う。
「これは私からのプレゼントよ」
　そう言って、琳子は駄菓子屋で買ったお菓子の詰め合わせと飴玉っぽいアクセサリーが入った赤いリボン付きの紙袋を手渡した。
「ありがとう、お姉ちゃん。開けていい？」
「いいわよ」
　何かなー？　とワクワクしながら開けるなり「可愛い！」と大喜び。
　自分の好きなものをプレゼントしてくれもらったので、本日の主役は大満足。

　誕生日のお祝いが終わった夜。
　奏子は嬉しそうな顔で眠りについた……かと思いきや、母と琳子が寝静まったのを見計らい『お姉チャンネル』の生配信を始めた。
「お母さんとお姉ちゃんから、プレゼントをもらったよー！」
　コメントに「プレゼントに枯山水ないの？」とあったので、なんでそんなもの出てくるの？　と不思議に思う奏子だった。