【シェアハウス・ウィズ・マオウサマ】

　というわけで本日は、こちらの魔王さまのプライベートに密着していきたいと思います。
　魔王のアロエさまです、どうぞ！
「うむ！　脆弱なる人間どもよ、ごきげんよう。魔王のアロエである。今日は儂の華麗なる日々の一端をお見せするから、人類は存分に畏怖するように！」
　さすが魔王さま、のっけからイケイケですね。今日はどうぞよろしくお願いします。
　ちなみに、今日のお召し物も素敵ですね。


「うむ？　ああうむ、そうであろう。魔王たるもの、ほら、気品あふれる姿を人間どもには見せつけねばならんからのう」
　こういう服って、どこで買うんですか？　人間界じゃ売ってませんよね。
「ええとこれは、魔印良品かONIQLOあたりでセールの時に安く……」
　えっ、セール？
「あ、いや、違う。違うぞ！　普段はジャネルとかアラクネ＆ヴァンパイアとかヘルメスとかオリ・ハルコンとかをびしっとな、着てるのじゃ！　今日はたまたま！」
　そうですか、ではまずアロエさまのお住まいから見せていただきたいと思います。
「う、うむ……こっちじゃ、ついてまいれ！」



　アロエさまは人間界で、何人かの魔王とシェアハウスをされているということですが。
　魔王さまならおひとりで、もっと良いお部屋に住めるのでは？
「ふふん、人間は浅はかよのう。ひとりでも畏怖されるべき存在である偉大な魔王が二人、三人と顔を揃えたならば、人間界にとってどれほどの脅威となろうか？」
　へえ～、すごいですね。アロエさまのお部屋はどっちですか？
「どうじゃ、畏怖ってもいいんじゃぞ……あっちょ、勝手に入るな！　乙女の部屋じゃぞ！」
　わあ～、可愛いお部屋ですね！　狐柄のシーツに狐のぬいぐるみに……狐が好きなんですか？
「おまっ、ここは撮るでない！　もっと撮るとこあるじゃろ、リビングとか！」
　いやあアロエさまの乙女な匂いが充満して、イイですね。興奮します。
「へっ変態かお主……！」
　ではそのリビングを見せていただきましょうか。ここで魔王さまたちが夜な夜な、世界征服について語りあかすわけですね？
「う、うむ。儂ら魔王は日夜人間どもを畏怖させるため、恐るべき魔の謀略や召喚すべき魔物の選定、攻めるに易い人間の都など活発に情報交換をしており、来たる一斉攻撃の日に向けて着々と……」
「ふわぁぁぁ……おっは～、アロエちゃん。あれ？　あ～、例の取材って今日だっけ？」
「ちょ、なんっつーカッコをしとんのじゃお主！？　服を着よ、服を！」
「昨日朝帰りだったからさあ、まだ眠くって……ふぁ、あふっ」
　おおっ、これまた麗しい魔王さま！　こちらがアロエさまのルームシェア仲間ですね。お邪魔してます。
　朝帰りというと、もしかして……？
「あ～、NYAINで知り合った勇者くんと朝までね～。彼ってば激しくって、もう腰がガクガク……」
「下ネタは止めんか色ボケ魔王がぁ！！　てゆーかお主、勇者なんぞと逢引しとったのか！？」
　ああ、最近よく聞きますね、魔王と勇者がデキちゃうなんて話。僕の知り合いの戦士にも女勇者と魔王の二股かけてたらバレちゃって、パーティー崩壊しちゃったって人いますよ。
「なんじゃそのクズは、恥を知れ！　遊び人にでもジョブチェンジせい！」
「アロエちゃんはおカタいからねえ。せっかく人間界に来てるんだから、もっとハメ外してもいいのにさ～」
「うるさい、お主は服を着ろ！　見えっ、見えるじゃろ！　バカ！　駄魔王めが！」
　さて、そろそろお昼時ですね。魔王さまのお食事、気になります！　今日はなにを召し上がるんですか？
「自由か！　お主！　今儂怒っとったじゃろが！　ええいお前は服を着んなら部屋に戻れ、そんで寝てしまえ！　人間、お主はついてこい！　今日は外食じゃ、魔王さまの畏怖すべきランチというものを存分に見せてやろうではないか！」
　はい、お供します。
　魔王の昼食、楽しみですね。



　……あの、魔王さま。これは？
「なんじゃ、知らんのか？　やはり人間はモノを知らんのう。これはの、きつねそば、という食べ物じゃ。いただきまーす」
　知ってるわ。いつも食ってるわ。
　いえ、礼儀正しいのはいいことですがそうではなくて、魔王のお食事といったらこう……血のソースがしたたるステーキとか、地獄のマグマで煮込んだ臓物スープとか……？　あるでしょなんか、そういうの。
「なんじゃそれグロッ、そんなもん食うわけないじゃろが。魔王でもヒくわ」
　ですよね。まあ高級フレンチかせめてイタリアンあたりだったら、まだ魔王っぽいと言い張れないこともないかなーなんて思ってたんですけど。
「別にいいじゃろ、魔王が和食好きでも。う～ん、このそばのこし、おあげからじゅわっと染み出るダシのきいたおつゆがまた……」
　あの、もしかしてなんですけど、アロエさま。人間界のこと、かなり気に入ってます？
「ぶはっ、ぶほっ！？　げっほ、ぐほっ、ぐほほっ。んなっ、なぁーにを言うのかこの人間は！？　そそそそそんなわけ、ないじゃろうが！」
　だって好きじゃなきゃ、こんな場末のそば屋できつねそば注文しないでしょ。ていうか常連でしょ、このお店。
「違うわバカめ、魔王が人間の食べ物をありがたがったりするわけないじゃろバカめ。これは人間界を征服するための、そのあれじゃほら、実地調査というかなんというか」
「あら～魔王ちゃん、いつも食べに来てくれてありがとねえ！　おあげ一枚、おまけしたげる♪」
「ありがとうおばちゃん、嬉しいが今はちょっと向こうに行っててくれ……！」
　常連じゃん。
「違う。それは違うぞ人間、そうではないのじゃ。よいか、魔王たるもの、人間を畏怖らせるためには人間を知らねばならぬ、これは先代先々代の魔王の教えでもあり決して人間界を満喫しているなどとは見当違いもはなはだしく」
　というわけで本日は、魔王アロエさまの貴重なプライベートを拝見させていただきました。とっても可愛らしかったですね♪
　次はどんな魔王さまが登場しますやら。それでは次回をお楽しみに、アディオス！
「ちょっ待、このまま終わる気か！？　これでは儂がまるで人間界マニアの道楽者にでも見えてしまうではないか、ちゃんと真実を映さんか！　もっと儂を畏怖れ、人間！　聞いとるのかお前、この、お前、儂はこの……お前、バカーーーっ！！」