こんこん・ぽんぽこ化かし合い勝負｜リアクション

こんこん・ぽんぽこ化かし合い勝負

●勝負を見守る猫又

　これまでの結果は、花緑青駅と瑠璃紺駅は引き分け。
　赤朽葉駅と黄橡駅は、選り取り見取りなお化けに化けた狸の勝利。
　鉄紺駅と浅縹駅は、ケモ耳美女やケモ尻尾イケメンに化け人間を誑かした狐の勝利。
　ここまで2勝2敗2引き分け。決着をつける場は銀朱駅。
「儂が教えたことの成果、ここでも見せるのじゃ」
　狐達を従えた片夏阿呂江は突撃じゃ！　と狐をけしかける。

　三毛谷道哉は、銀朱駅周辺を散歩中に狐と狸の化かし合い勝負に遭遇した。
　不意打ちには弱いので、曲がり角で「ばあ！」と驚かされた時には瞬間的に二つに割れた猫又尻尾が出そうになりつつも堪えて状況を把握。
（狐と狸の例の勝負か）
　昔から続いている化かし合い勝負のことを知っているので、機嫌が良い。
　勝負の行方が気になるので、戯れに人間として脅かされ役に乗ることに。どう驚かされるかと期待しつつ、駅の周辺を散策する。
「そこの人間、止まれー！」
　一つ目小僧に化けた砧ポン吉が、すごい勢いで道哉に近づいてきた。
「ひっ！　来るんじゃないっ、あっちへ行け！」
　無理矢理引きはがしてから草履で小走りに逃げる。その間も妖怪や幽霊達に追いかけられたので、捕まってたまるかと必死に走る。
「ここはどこだ？」
　逃げ回っているうちに、道に迷ってしまった。
　そんな彼を手助けするかのように、物陰から何者かの腕が手招き。
　腕に導かれるようにその方向に向かうが、見つけたぞ！　と先程の連中が追いかけてくる。
　外見年齢三十代半前後の猫又青年は、若い頃を思い出す。
（なんだか鬼ごっこのようでいい感じだ。おっと、本気を出したら私があやかしとバレてしまうな）
　そうなってはまずい、と目の前の突然現れた唐傘お化けにビックリしたりする演技を。グロ系には強いので、それらにはちょっと驚く程度。
（なかなか上手く変化できているな。これで脅かし具合が半端ないようだったら、演技ではなく本気で驚いてしまう）
　演技では怖がっているが、ふとした時に狐と狸の化けへの完成度にも目がいく。本当に驚いてしまいそうになるほどに。
（普段は人間の姿になりっぱなしだが、今度は他にもやってみるか）
　狐と狸から良い刺激をもらったようだ。

　演技の差に関しては、どちらも頑張っているので甲乙つけがたい。
　頑張る若人が好きなので、どちらにも肩入れはしないが汲みはする。いずれもイヌ科なので。
「来るなお化け共！　これ以上、驚かされてはたまらん！」
　自分が関わるのはこれまで、と走り回って身を隠す場所を探す。

　これで一段落ついただろうという折、狸の尻尾が見えている幽霊に会った。
「尻尾が見えているぞ。悪い子だ」
　仲間からの死角で、扇子で軽く叩いて化けている当人をたしなめる。
「精進しろよ、私のようにな」
　にやりと笑い「おっと、皆には内緒でな」と口止め。
　たしなめられた狸は道哉があやかしで、自分と同じく変化したモノだと思いながら立ち去った。

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