こんこん・ぽんぽこ化かし合い勝負｜リアクション

こんこん・ぽんぽこ化かし合い勝負

●霊界遊園地での化かし合い

　ギャンブルが趣味な真境名アリサは、仕事がオフなので久し振りに本土の競馬場に行こうと思った。
　普段はスマホで馬券を購入しているが、今日は競馬場で購入を。
　寝子電に乗り込むと空いていた席に座る。昨日の仕事の疲れが出たのか、つい居眠りしてしまう。

　目を覚ましたら、いつの間にか終点についていた。
「終点？　お、降りないと！」
　慌てて車両から降りるが、そこは木天蓼駅ではなかった。というか、寝子電の駅ですらない。
「赤朽葉駅……？　こんな駅、寝子島になかったはず」
　ついこの前、今と同じようについ眠ってしまい鉄紺駅というところに降りたことを思い出した。
　あの時の記憶が生々しく蘇ってたので身震いが。
　アリサは、ホラーだの怪談だのの類は苦手である。
（下手に動き回るより、このまま駅にいた方がいいんじゃない？）
　そう思ったが、結局、駅を降りる。辺りををキョロキョロすると目の前に霊界遊園地があった。
「遊園地と言うけど、いかにもホラー映画に出てきそうな雰囲気ね……」
　名前からして怪しさ満点なので、この時点ですっかり腰が引き気味に。

「皆、いくぞー！」
　狸の仲間入りをした砧ポン吉は、我先にと化かし合い勝負に挑む。
「人間を驚かせるならコレは定番だろ！」
　赤い落ち葉を頭に乗せ、顔のない人間のお化けに変化してアリサに近づく。
　背後からすすり泣く声が聞こるので振り向くと、そこには小さな男の子がいた。
　迷子かと心配になり、アリサは男の子の目線に合わせようとしゃがむ。
「シクシク…おいら、探してるんだよー」
「お父さんかお母さんを探しているの？」
「何探してるか？　それは……」
　男の子は顔を上げ、アリサに顔を見せる。
「オイラの顔なんだよー！」
　顔がないお化け、のっぺらぼうが男の子の正体だった。
「顔なしお化けー！！」
　一刻も早く逃げようとアリサがターンして走るが、様々な妖怪に変化した狸達が急に出現して通せんぼ。
「なかなかやるなー。次は定番の上から落ちてくる死体だ！」
　一旦、元の姿に戻ったポン吉はジャンプしながら頭の上に落ち葉を乗せると死体をイメージして変化。
　逃げようとするアリサの目の前に落ちるよう、タイミングを合わせることに大成功。
「どこから落ちてきたのよ！」
　先程、妖怪に通せんぼされた恐怖でアリサは冷静さを失っていた。
「更には、人間が苦手とする蛇にも化けて脅かすぜ！」
　死体からニシキヘビに早変わりしたポン吉は、アリサの足元にすり寄る。
　冷たい感触がするので足元を見て「へ、蛇ー！」と死体以上のリアクションで驚く。
「ニシシシ……上手くいってるいってる……あとはこれだー！」
　ニシキヘビの次は、テレビから出てくる幽霊に変化。
「何よこのホラー映画な展開！！」
　泣きそうな顔で霊界遊園地をダッシュで去るも、狐や狸に化かされまくりだった。
　幽霊だの化物だのが苦手なのに、目の前で化かし合いをされたアリサはたまらない！　と逃げ回る。
　結局、どう逃げたのか記憶にないまま何とか生還することができた。
　寝子島に戻ることができた途端、アリサは力が抜けてその場にへたり込んだ。

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