こんこん・ぽんぽこ化かし合い勝負｜リアクション

こんこん・ぽんぽこ化かし合い勝負

●阿呂江先生の変化特訓

　片夏阿呂江の鶴の一声で、迷い込んだ人間を驚かすことに失敗した狐達が集まって来た。
　変化の術を向上させる特訓をするというので、頭を下げ教えて乞う狐達は、今度こそ勝つ！　と意気込む。
「やる気があるのは良いことじゃ」
　阿呂江はコホン、と咳払いしてから、最初の教えを説く。
「さて、変化の術とは想像力じゃ。化ける姿をなるべく詳しく思い描く事が大切である」
　落ち葉にメモする狐もいれば、そんなの当然といった狐も。
「例えば唐傘お化けに化けるとして、大体こんな感じーで適当に化けるゆえ耳や尻尾が残ってしまうのじゃ」
　それを聞きギクッ！　となる狐が。
　この狐、耳と尻尾を出したままの変化で人間を驚かせようとしていた。
「唐傘お化けの全体像を正確にイメージすることが重要じゃ……。そこのお主、笠の質感は？　舌の長さは？　笠が開けばどうなる？」
　中途半端な変化で驚かせようとした狐を覚えていた阿呂江は、目を合わせるなり問い詰める。
　絵で見たものを参考にしたり、他の狐が化けた姿を真似た程度の変化なので、迫られた狐は何も答えられず。
　答えられないことを謝り、変化の術が少し上達したので実力試しをと化かし合い勝負に志願したと言う。
「そういうことじゃったのか」
　最初は鬼教官のような指導でいこうと思ったが、それでは狐達はやる気を失くしてしまうかもしれない。
　このまま厳しくするのはまずいということで、自分が父から教わったことを伝授する方法に変えた。
「とにかく完成度を高めるには訓練は必要じゃが、それをわかっていれば、先ほどよりは良くなるじゃろう」
　項垂れていた狐は、今度こそ！　とやる気が出たようだ。
　これを聞き、正確なイメージが重要ということを狐達は改めて知った。

「どうしても耳が残るのであれば、妖怪ではなく人間の姿で誘惑という手段を取るのが良いぞ」
　それは何故かと質問されたので、残しておいたほうが寄ってくる人間もいることを教えた。
「ケモ耳萌えと言ってな、人間、特に女子に動物の耳が生えておる者に好意的な感情を表す者もおるのじゃ」
　驚かすだけでなく誑かすことも判定のひとつと聞いたので、この方法も使えることも教える。
　狐耳、狐尻尾が出ていても、可愛らしかったり、見目麗しければ騙される人間もいる。
　騙された後に正体を明かし、小馬鹿にするのも勝つための手段と力説。
　寝子島で人の描いたマンガに感動し、人の使う乗り物をマスターし、人の作ったスイーツに喜んでいる。
　人間の文化を享受していると認めてもいいのでは？　というほどなので、萌え対象の説明は容易かった。
　説明を聞き終えた狐達は、変わって趣向の人間もいるんだな……と少し遠い目に。
「外見に問題はないのだから、あとは堂々としておれば良い。美女や美形に化けることができれば、耳や尻尾が出たままでも問題なしじゃ」
　糸目も見た目が良ければ魅力のひとつじゃ、と付け加え。
「さあ、儂からの指導は以上じゃ！　皆の衆、準備して次に備えよ！」

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