窃盗事件発生！～奪われた七色の蝶ネクタイ～｜リアクション

窃盗事件発生！～奪われた七色の蝶ネクタイ～

　　【迫真の演技を、校長先生のにゃんこ達の手でお届けします】

　「あの……私もねこったーでだったら、手助けできる情報が流せるかも知れません……」
　勢い付いた桜庭円の傍で、おずおずと発言したのは神野美野梨だった。
　その目は円のにゃーくんとたわむれだした、校長先生の飼っている３匹の猫達に向けられている。
　彼女のろっこんならば、猫科の生き物との対話が可能だった。だが、それを知るものは少なく、もし『ひと』がこの中にいた場合には、その能力は発動しにくい。
　その上に、コミュニケーション能力に自信の無い彼女は猫から聞いた話をねこったーで報告することにしたのだ。

　「美野梨ちゃんの情報ならあてになるのだ！
　真央ちゃんは試しに、昼休みに校長室に入って変だと思われない人…先生ズと掃除のおばちゃんにアタックしてくるのだ！！」
　そう告げるや否や、真央は止める間もなく校長室の外に飛び出していった。
　それにあわせて他の面子も、校長室を出た先の廊下が左右に分かれていた事を思い返し、ある程度の人数が固まって、左右に散って飛び出していった。　

　全員が教室から出たのを確認して、美野梨はさっそく、校長室でひなたぼっこに勤しんでいる猫３匹に向かって声を掛ける。
　　そして、美野梨がろっこんを発動させた！

　【発動条件】
　精神集中し対象に向かってニャーと鳴く
　【能力】
　猫科の生物と念話できる。

　「ニャー」
　『もしもし、分かるかな……？』
　『分かる分かる！　ねーちゃんすごーい！！』
　猫たちは喝采をもって美野梨のろっこんを受け入れてくれた。
　そして、３匹は、あの時、昼に起こった出来事を、猫に可能な範囲の寸劇形式で再現してくれたのである。
　犯人は兄弟の生徒。兄の方は自分で【信者】と名乗っていたこと。弟は蝶ネクタイをくんかくんかする、かなり筋の通った【変態】であったこと。
　これらを全て寸劇形式で、である。流石は校長先生の猫、やる事が違う。
　しかし、その分の情報量も膨大になり、話を聞き終えた頃には、既に美野梨は能力の使いすぎで息も絶え絶えだった。

　『そしてボクたちは、校長先生の蝶ネクタイに傷をつけちゃいけないから、大人しくしていたんだにゃ～…』
　『蝶ネクタイをネクタイ質に取られたんだにゃ！』
　「な、なるほど……
　つ、伝えなくっちゃ……！　たいした情報じゃないかもしれないけれども……」
　携帯を握り締め、事前に決めたタグと一緒に、ねこったーに情報を流す。
　「こ、これで……」　
　その場でへたりと座り込む。
　既に切れた能力であっても、会話が出来ればお友達、そんな猫達に囲み包まれながら「あと10分…」と寝言を言うように呟いて、美野梨は猫に囲まれ幸せそうに意識を手放した。
　

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