あいしあってるかい？どよーんとくろやきやきそばぱんとかげ♡｜リアクション

あいしあってるかい？どよーんとくろやきやきそばぱんとかげ♡

　
　トンネルの中央に、きなこ、五十鈴、英二による黒焼き焼きそばパントカゲの屋台。
　みんなが愛をもって、にこやかに集まってきている。
　英二はトカゲを手に持ってみんなに見えるように示すと、五十鈴はきなこから聞いていた通りに声をかける。
「いらっしゃいませ。お代は、愛ひとかけらです」
　今、愛なら、いくらでもある。
　トンネルには愛しかないと言ってもいいくらいだ。
　だが、問題はそこではない。
　屋台の前にズラッと並んだ面々は顔を見合わせた。
　黒焼き焼きそばパントカゲは、１体しかない。
　五十鈴はボソッと呟く。
「トカゲならそこら辺にもいるし、捕まえて焼いたら……？」
　みんなは、面白いことを言うねえと愛をもって聞き流していた。
「ほら、あそこの壁に」
　……愛の聞き流し。
　そして、どうぞどうぞと１体を譲り合っている。
　誰もが譲り合うというのは美しいようでいて、案外見ていられない異様な光景だった。
　そこに、今ようやく辿り着いたのは、座敷童子だった。
　実は先程からカメラを構えて動画を撮っていた乱蘭は、ぐぐっと童子に寄っていく。
「ん？　なんですの？」
　カメラに戸惑う、人見知りの童子。
「ああ、あの、わらわはトカゲには興味ありませんの。欲しい人の手に渡れば、それでいいですわ」
　童子が興味ないとわかり、乱蘭カメラは退いていく。
　そんな中、英二の手を握っていた修が「もしかしたらだけど……」と声をあげる。
　乱蘭カメラは素速く追う。
　修は尻尾の付け根をちょんちょんと指差してみせて、こう言った。
「トカゲの尻尾って切ると生えてくるよね。このトカゲはどうかな？」
　そもそもトカゲを焼いたり切ったりするなんて可哀想……とまで思う人も出てきたところで、まだ愛を理解しきれていない手蹴は即座に反応した。
「こうか？」
　触手をナイフ状にして、サクッと切り落としてしまった。
「え？」
「わ？」
「うそ？」
　するとどうだろう。
　尻尾はにょきにょきと生えてきた。
「わっ！　すごいっ！　はえてくるんだ！？」
　一番驚いてるのは、きなこだった。
　尻尾が生えきると、手蹴は再び素速く切り落とす。
　それを何度も何度も繰り返していると、いつの間にか人数分の尻尾が用意できていた。
　こうして黒焼き焼きそばパントカゲの尻尾がみんなの手に行き渡ると、トカゲの本体はキョロキョロしながらどこかに消えてしまった。
　争いは終わったのだ。

　愛はトカゲを救ったのだ！

　夜も更けて、静寂を取り戻したトンネルにて。
　トンネルを出たところのカーブには、五十鈴がいつものように立っていた。
　すると、どこからともなく小さいけど響いて大きな声が聞こえてくる。
「いっただきまーーーす！」
　ありあだ。
　しかし、ありあはトカゲの尻尾を食べるのではなく……抱きしめていた。
「かわいいトカゲちゃんを食べるなんて、できないよ！」
　むぎゅう。
　きっと他の者もそうそう食べることはできなかったであろう、少なくとも慈愛玉の効力がある限りは。
　ところで、ありあは真っ暗なトンネル周辺を見回していて大切なことに気がついた。
「ここ、どこよ？」
　気がつけばみな散り散りに帰っていて、屋台も跡形も無くなっているのだ。
「どこよー！？」
　小さな声だが、うるさい。
　道に迷っているのは、英二も同様だ。
　トカゲが売れて一件落着となれば自然と帰れるかと思っていたが、世の中そんなに甘くはなかった。
　五十鈴もまた苦い顔をしていた。
「私、爬虫類苦手だから、きちんと捕まえてほしかったんですけど……でも…………」
　いつの間にか、夜が明けようとしていた。
　どよーんとした霧のような何かが晴れていくのを見ると、幽霊だけどどこか清々しいような、生まれ変わったような気分だった。

　トンネルの反対側の出口では、ヴィーゼもまたぼうっと空を見上げていた。
「あ、そういえばまだ仕事中だったわ。お土産に、焼きそばパンでも買って帰りましょ」
　またいつもの日常へと歩き出した。

　

＜おしまい＞

このページにイラストを設定する

あとがき

担当マスター：なばた☆りえ
ファンレターはマスターページから！

わほーい、ご参加ありがとうございましたー！

なんとまあ個性豊かなみなさんで、プロフィールを読むだけでも楽しかったです。
ほんでまたアクションが面白くて愛があふれていて、おなかいっぱいでした。

アクションが充実してるので、アイデアもどんどん湧いてきてしまうんですが、
だいぶ書きすぎてしまってたので、このあたりで……と涙を堪えてお送りします。

らっかみ！で初めてのリアクション執筆でいたらぬところばかりだと思いますが、
（慈愛玉をえいっ！）
愛をもってあたたかく見守っていただいて、そして少しでも楽しんでいただければ幸いです。

ひとも、もれいびも、ほしびとも、あやかしも、最後まで遊んでってね♪　よろしくでーす☆

↑ページトップに戻る