歴史研究部の島研究：百合ヶ淵編｜リアクション

歴史研究部の島研究：百合ヶ淵編

●エピローグ：現代

　そうして過去から現代へ。
　戻ってきた蒼也は、図書館へと足を運んでいた。
　手を伸ばしたのは郷土史コーナーにある寝子島伝承について書かれた一冊の本。
　歴史が変わってるか伝承を確認したいと思ったのだ。
　その同じ本に、同時に伸ばされた手があった。
「あ」
「やあ」
　小首を傾げて笑みを浮かべたのは、歴史研究部部長の遥だ。
「先の折はどうも。さては歴史に興味が出たかな？」
「はは、じつはそんなところで」
「素晴らしい！　いっしょに調べてみないかい？」
　同じ体験をした人からの誘いを無下に断ることもあるまい。
　それにふたりなら、自分が気づかなかったことにも気づくかもと、ほかにも何冊か手に取って読書スペースに陣取って調べ始める。
「百合ヶ淵伝説は特に変わってないみたいだなあ」
「ま、それを狙ったからね。でもさ、蒼也君。こっち見て。九夜山の鬼伝説なんて、前はなかったと思うんだ」
「もしかしてマリエッタさんのスマホフラッシュが伝説になった……？」
「もしかしたら、ね？」
　遥はウィンクしてみせる。
「あーあ。せっかくの戦国時代、もっと洞窟も落神神社も調べたかったなあ。全然時間が足りなかったよ」
「たしかに。山の中の景色は今とあまり変わらなかったものなあ」
「あ、そうだ蒼也君、歴史に興味が出てきたなら歴史研究部入らない？」
「はは。考えておきます」

　寝子島にはいろいろな伝承がある。
　本当かウソかわからないものも、それこそたくさん。
　この話は、その中の一つ。
　本当のことを知るのはその目で見た僅かな人たちだけ。
　――白百合姫と駒のその後については、寝子島の歴史を語る文献には残っていない。

　＜了＞

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あとがき

担当マスター：笈地行
ファンレターはマスターページから！

ご参加ありがとうございます！　ゲームマスターを務めさせていただきました笈地です。
この度は夏風遥さまのプレゼントシナリオとして、
寝子島の歴史のひとつを紐解くお話を担当させていただきました。
「百合ヶ淵伝説」はプレイヤー様発案の伝承でありまして
そのお話をさらに広げることができて嬉しく思います。

今回マスタリングしていて面白かったのは、
刀や弓矢を持った追っ手が登場したにもかかわらず
まったくバトルがなかったことです。
この手のバトルも想定したガイドで、
まったく戦わない解決を迎えたのは
わたしが担当したシナリオでははじめてだったので
参加されたＰＣさんによって結末が違うＰＢＷならではの面白さを
改めて感じることとなりました！

姫と駒が伝承通りに身投げする結末も
伝承自体も変わってしまう結末もあり得たなか
今回の結末になったのは
ご参加いただいたＰＣさまの行動があったこそです。

こういうシナリオを描けるのは
ゲームマスター冥利に尽きて、心から楽しく思います！

それではまた別のシナリオでお会いしましょう。笈地でした。

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