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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
今日は、君と
海の手をそれぞれに取り、刀と千歳は同じ方向へと駆けだす。
路地の向こうに見える海さえも薄墨色に曇らせる激しい雨の下を駆け抜け、息を切らす海をふたりぶんの腕で庇いつつ、どうにか刀が一人で暮らす家まで辿り着く。
「結構濡れたな～」
黒髪から雨の雫を垂らしつつ、刀は玄関に靴を脱ぎ捨てる。濡れて脱ぎ辛い靴下は引っ張って手に持ち、廊下に足跡をつけながら風呂場に向かう。
「タオルタオル」
三人分のタオルを手に玄関に戻ってみれば、雨音ばかりが占める玄関の三和土で、びしょ濡れのままの海が背伸びをして千歳の唇を奪っていた。
思わず柔らかな笑みが浮かぶ。濡れた少女ふたりが雨音を背にキスを交わす場面は、どうしようもなく甘かった。
「はい、二人とも」
タオルを差し出した途端、海が濡れて冷たい手を伸ばしてきた。反射的に屈めた背に柔らかく華奢な腕が回る。冷たい唇が唇に押し当てられ、次第に可愛らしい熱を帯びる。
下着の線が透けて見える背に腕を回して抱きしめたとき、傍らに立つ千歳の体温を感じた。見守るような、それでいて拗ねているようなまなざしを感じて、刀は海に応じる唇をそっと離す。
手を伸ばして千歳の腕を掴み、抱き寄せようとした途端、
「タオルを持ってきてくれたのはありがたいのだけど、私たち、濡れた身体を拭きたいんだけど？」
ぴしり、至って正常ながらも冷たい態度でふられてしまった。
「はい、スミマセン」
雨に濡れて服を透けさせる色っぽい二人をもう少し見ていたい気持ちをぐっと我慢して、刀は素直に謝る。
初夏の匂いのする冷たいキスを恋人ふたりと交わして、海はドキドキする胸を抑えて恥ずかし気に笑う。雨に濡れたふたりの肌が透けて見えて、胸がうずく衝動のままにキスをしてしまったけれど、
(ここなら誰も見てないしいいよね)
ふたり分の唇の熱を吸ってあたたかさを取り戻した唇に指先で触れる。知らず緩んでしまう頬にもふわり、熱が宿る。
「このままじゃ風邪ひいちゃうものね」
「こっちの部屋を使うといい」
肩をタオルで覆った千歳に背を撫でられ、刀に廊下を示され、海は濡れた靴を脱いで恋人の家に上がり込む。
(タオルありがとね、刀)
キスしたばかりの唇をありがとうのかたちに動かして伝えれば、刀は夜色の瞳を穏やかに和ませた。
ふたりを部屋に通し、刀はタオルで頭をごしごし拭う。窓を叩く雨の音を耳に、部屋に漂う海と千歳、ふたりの恋人の甘い香りをなんとなし感じてつい頬を緩めたとき、
「刀君」
千歳に鋭く名を呼ばれた。
「ハイ」
海が小さく首を傾げ、スケッチブックを取り出す。濡れていないことを確かめ、鉛筆を走らせる。
『これから体ふくんだけど』
「……あっ」
『みたいの？』
(見たいよ！)
脊椎反射で口から飛び出しそうになった言葉を両手で抑え込むも、千歳にはお見通しだったらしい。
「刀君」
厳しい顔で短く叱られ、刀は慌ててふたりに背を向けた。そうしながら、ふと思う。
(いつか、ふたりと)
今ではないいつかに、濡れた体を互いに拭いあうような、雨で冷えた体を互いの肌の温度であたためあうようなことをする。
そのときはきっと、三人でこの関係を続けて行くうちに必ず訪れる。
(……うん、なんか不思議な気持ちだ)
胸も腹も熱を帯びてしまうような、首の後ろに心地よいような不可思議な寒気を覚えてしまうような気分になって、刀は思わず濡れた胸を撫でた。
「着替え探して、温かい珈琲入れてくる」
言い訳じみた台詞を残して廊下へ去る刀の慌て気味の足音を耳に確かめ、千歳は小さな溜息を吐く。
「まったく……」
声のない声でくすくすと笑う海の衣服に手を掛け、壊れ物を扱う慎重な手つきで濡れて肌に貼りつく服を脱がしてゆく。お礼とばかりに伸びて来てこちらの服を脱がそうとする海の手を握って止め、千歳は小さく微笑んだ。
突然の雨というアクシデントはあったけれど、こんなデートも案外悪くはない。
「海、私が拭いてあげるから、後ろ向いてね」
路地の向こうに見える海さえも薄墨色に曇らせる激しい雨の下を駆け抜け、息を切らす海をふたりぶんの腕で庇いつつ、どうにか刀が一人で暮らす家まで辿り着く。
「結構濡れたな～」
黒髪から雨の雫を垂らしつつ、刀は玄関に靴を脱ぎ捨てる。濡れて脱ぎ辛い靴下は引っ張って手に持ち、廊下に足跡をつけながら風呂場に向かう。
「タオルタオル」
三人分のタオルを手に玄関に戻ってみれば、雨音ばかりが占める玄関の三和土で、びしょ濡れのままの海が背伸びをして千歳の唇を奪っていた。
思わず柔らかな笑みが浮かぶ。濡れた少女ふたりが雨音を背にキスを交わす場面は、どうしようもなく甘かった。
「はい、二人とも」
タオルを差し出した途端、海が濡れて冷たい手を伸ばしてきた。反射的に屈めた背に柔らかく華奢な腕が回る。冷たい唇が唇に押し当てられ、次第に可愛らしい熱を帯びる。
下着の線が透けて見える背に腕を回して抱きしめたとき、傍らに立つ千歳の体温を感じた。見守るような、それでいて拗ねているようなまなざしを感じて、刀は海に応じる唇をそっと離す。
手を伸ばして千歳の腕を掴み、抱き寄せようとした途端、
「タオルを持ってきてくれたのはありがたいのだけど、私たち、濡れた身体を拭きたいんだけど？」
ぴしり、至って正常ながらも冷たい態度でふられてしまった。
「はい、スミマセン」
雨に濡れて服を透けさせる色っぽい二人をもう少し見ていたい気持ちをぐっと我慢して、刀は素直に謝る。
初夏の匂いのする冷たいキスを恋人ふたりと交わして、海はドキドキする胸を抑えて恥ずかし気に笑う。雨に濡れたふたりの肌が透けて見えて、胸がうずく衝動のままにキスをしてしまったけれど、
(ここなら誰も見てないしいいよね)
ふたり分の唇の熱を吸ってあたたかさを取り戻した唇に指先で触れる。知らず緩んでしまう頬にもふわり、熱が宿る。
「このままじゃ風邪ひいちゃうものね」
「こっちの部屋を使うといい」
肩をタオルで覆った千歳に背を撫でられ、刀に廊下を示され、海は濡れた靴を脱いで恋人の家に上がり込む。
(タオルありがとね、刀)
キスしたばかりの唇をありがとうのかたちに動かして伝えれば、刀は夜色の瞳を穏やかに和ませた。
ふたりを部屋に通し、刀はタオルで頭をごしごし拭う。窓を叩く雨の音を耳に、部屋に漂う海と千歳、ふたりの恋人の甘い香りをなんとなし感じてつい頬を緩めたとき、
「刀君」
千歳に鋭く名を呼ばれた。
「ハイ」
海が小さく首を傾げ、スケッチブックを取り出す。濡れていないことを確かめ、鉛筆を走らせる。
『これから体ふくんだけど』
「……あっ」
『みたいの？』
(見たいよ！)
脊椎反射で口から飛び出しそうになった言葉を両手で抑え込むも、千歳にはお見通しだったらしい。
「刀君」
厳しい顔で短く叱られ、刀は慌ててふたりに背を向けた。そうしながら、ふと思う。
(いつか、ふたりと)
今ではないいつかに、濡れた体を互いに拭いあうような、雨で冷えた体を互いの肌の温度であたためあうようなことをする。
そのときはきっと、三人でこの関係を続けて行くうちに必ず訪れる。
(……うん、なんか不思議な気持ちだ)
胸も腹も熱を帯びてしまうような、首の後ろに心地よいような不可思議な寒気を覚えてしまうような気分になって、刀は思わず濡れた胸を撫でた。
「着替え探して、温かい珈琲入れてくる」
言い訳じみた台詞を残して廊下へ去る刀の慌て気味の足音を耳に確かめ、千歳は小さな溜息を吐く。
「まったく……」
声のない声でくすくすと笑う海の衣服に手を掛け、壊れ物を扱う慎重な手つきで濡れて肌に貼りつく服を脱がしてゆく。お礼とばかりに伸びて来てこちらの服を脱がそうとする海の手を握って止め、千歳は小さく微笑んだ。
突然の雨というアクシデントはあったけれど、こんなデートも案外悪くはない。
「海、私が拭いてあげるから、後ろ向いてね」
あとがき
担当マスター：
阿瀬春
ファンレターはマスターページから！
お待たせいたしました。デートないちにち、お届けにあがりました。
甘いもの、切ないもの、楽しいもの。みなさまのいろんなデートを描くことができまして、とても楽しかったです。
みなさまのデートをみなさまらしく描けておりましたら幸いです。
ご参加くださいまして、お読みくださいましてありがとうございました！
またいつか、お会いできましたら嬉しいです。
甘いもの、切ないもの、楽しいもの。みなさまのいろんなデートを描くことができまして、とても楽しかったです。
みなさまのデートをみなさまらしく描けておりましたら幸いです。
ご参加くださいまして、お読みくださいましてありがとうございました！
またいつか、お会いできましたら嬉しいです。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2021年10月01日
- 参加申し込みの期限
-
- 2021年10月08日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2021年10月08日 11時00分
