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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
霊界線、浅縹（あさはなだ）駅に出発進行
探し回る日向は足を止めた。古めかしい駅舎に呆然となる。
「九夜山に駅が……違う、霊界線？」
駅名に目が留まる。
「漢文みたいだ」
軽く頭を左右に振って周囲に注意を向ける。
深い霧の中にぽつぽつと人の姿が窺えた。自身の目を疑うように強い瞬きを繰り返す。
――見間違いじゃない。本当に人が透けている。後頭部が横に長い老人は人間に見えない。妖怪みたいだ。
恐怖と興味が混ざり合い、立ち尽くすように見ていた。
「……まさか千恵も」
思い付いた瞬間、日向は妹の名を叫んだ。無人の改札を通って中まで調べた。
「ダメだ。誰もいない」
駆け足で駅を離れ、周囲を探す。見つけた半透明の男性に恐れることなく果敢に向かう。
「突然、すみません。猫柄のリュックを背負った女の子を見ませんでしたか？ 勝ち気なところがあってしっかりした印象の女の子です」
「見てないよ。悪いね、力になれなくて」
薄青い顔を下げた男性はふわりと宙を飛んでいった。
「もっと確実な方法は……そうだ、スマホがあるじゃないか」
ウィンドブレーカーのポケットに手を入れてスマートフォンを取り出す。表示は圏外で電話は繋がらなかった。
「ネットもダメか」
日向は陸上部で鍛えた脚を使って精力的に動いた。出会った人々の全てに妹の容姿を伝えて回る。
「知らないね」
「見掛けたことはないよ」
「人間の女の子か。最近は見てないな」
有力な情報は手に入らず、時間だけが過ぎてゆく。募る焦燥感で日向は駆け回り、顎先から汗が滴った。
その時、小屋を目にした。
「天然温泉か」
頭の中の考えは一瞬で纏まる。大股で中に入り、男湯の暖簾を潜った。
脱衣所で衣服を脱いで籠に入れる。何も持たず、煙る湯の中に突っ込んでいった。
内部は思っていたよりも人が少ない。青い石に囲まれた露天風呂には数人が目に付く。木桶で掛かり湯を済ませた日向は背中に甲羅を付けた人物に近づく。
「霊界にも温泉があるんですね」
「ここは有名だぞ。初めてきたのか？」
「はい、ふらりと立ち寄った感じで。この周辺に危ないところはありますか？」
日向は言葉を選びつつ、相手の表情をそれとなく盗み見る。
水かきが付いた手で顔を拭うと、そうだなぁ、と間延びした声を出した。
「ここは霧が深い。転倒や衝突はあるが、危険って程ではないな。質の悪い悪霊が浮遊していて、どこにでも現れる。浅縹（あさはなだ）駅周辺に限ったことではない」
「そうですか。実は猫柄のリュックを背負った女の子を探していて。こちらに来ているような気がするのですが」
暗い顔の日向に相手は済まなそうな顔で、見てないな、と言った。話の内容が聞こえたのか。ザルの小豆を洗いながら一人の人物が近づいてきた。
「俺は森で見たぞ。妙な歌で兎人の宿に歩いていったな」
「本当ですか！？ その宿はどこにありますか！ 教えてください！」
「心配はいらないぞ。兎人は耳がいい。ここの会話も聞こうと思えば筒抜けだ」
「ありがとうございました！」
日向は深々と頭を下げると露天風呂を出た。脱衣所に置かれたタオルで全身を拭いて服を着た。
「お兄ちゃ――ん！」
千恵の声に日向は笑顔で飛び出していった。
二人は無事に再会を果たし、手を繋いで浅縹駅周辺を見て歩く。
気付けば薄い霧に包まれ、元の九夜山に戻っていた。
「山菜はどうする？」
日向は側にいた千恵に聞くと笑顔を見せた。
「もちろん採るよ！ 貴重な山菜だからね」
二人は揃って山菜採りに励んだ。
「九夜山に駅が……違う、霊界線？」
駅名に目が留まる。
「漢文みたいだ」
軽く頭を左右に振って周囲に注意を向ける。
深い霧の中にぽつぽつと人の姿が窺えた。自身の目を疑うように強い瞬きを繰り返す。
――見間違いじゃない。本当に人が透けている。後頭部が横に長い老人は人間に見えない。妖怪みたいだ。
恐怖と興味が混ざり合い、立ち尽くすように見ていた。
「……まさか千恵も」
思い付いた瞬間、日向は妹の名を叫んだ。無人の改札を通って中まで調べた。
「ダメだ。誰もいない」
駆け足で駅を離れ、周囲を探す。見つけた半透明の男性に恐れることなく果敢に向かう。
「突然、すみません。猫柄のリュックを背負った女の子を見ませんでしたか？ 勝ち気なところがあってしっかりした印象の女の子です」
「見てないよ。悪いね、力になれなくて」
薄青い顔を下げた男性はふわりと宙を飛んでいった。
「もっと確実な方法は……そうだ、スマホがあるじゃないか」
ウィンドブレーカーのポケットに手を入れてスマートフォンを取り出す。表示は圏外で電話は繋がらなかった。
「ネットもダメか」
日向は陸上部で鍛えた脚を使って精力的に動いた。出会った人々の全てに妹の容姿を伝えて回る。
「知らないね」
「見掛けたことはないよ」
「人間の女の子か。最近は見てないな」
有力な情報は手に入らず、時間だけが過ぎてゆく。募る焦燥感で日向は駆け回り、顎先から汗が滴った。
その時、小屋を目にした。
「天然温泉か」
頭の中の考えは一瞬で纏まる。大股で中に入り、男湯の暖簾を潜った。
脱衣所で衣服を脱いで籠に入れる。何も持たず、煙る湯の中に突っ込んでいった。
内部は思っていたよりも人が少ない。青い石に囲まれた露天風呂には数人が目に付く。木桶で掛かり湯を済ませた日向は背中に甲羅を付けた人物に近づく。
「霊界にも温泉があるんですね」
「ここは有名だぞ。初めてきたのか？」
「はい、ふらりと立ち寄った感じで。この周辺に危ないところはありますか？」
日向は言葉を選びつつ、相手の表情をそれとなく盗み見る。
水かきが付いた手で顔を拭うと、そうだなぁ、と間延びした声を出した。
「ここは霧が深い。転倒や衝突はあるが、危険って程ではないな。質の悪い悪霊が浮遊していて、どこにでも現れる。浅縹（あさはなだ）駅周辺に限ったことではない」
「そうですか。実は猫柄のリュックを背負った女の子を探していて。こちらに来ているような気がするのですが」
暗い顔の日向に相手は済まなそうな顔で、見てないな、と言った。話の内容が聞こえたのか。ザルの小豆を洗いながら一人の人物が近づいてきた。
「俺は森で見たぞ。妙な歌で兎人の宿に歩いていったな」
「本当ですか！？ その宿はどこにありますか！ 教えてください！」
「心配はいらないぞ。兎人は耳がいい。ここの会話も聞こうと思えば筒抜けだ」
「ありがとうございました！」
日向は深々と頭を下げると露天風呂を出た。脱衣所に置かれたタオルで全身を拭いて服を着た。
「お兄ちゃ――ん！」
千恵の声に日向は笑顔で飛び出していった。
二人は無事に再会を果たし、手を繋いで浅縹駅周辺を見て歩く。
気付けば薄い霧に包まれ、元の九夜山に戻っていた。
「山菜はどうする？」
日向は側にいた千恵に聞くと笑顔を見せた。
「もちろん採るよ！ 貴重な山菜だからね」
二人は揃って山菜採りに励んだ。
あとがき
担当マスター：
黒羽カラス
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霊界線、浅縹（あさはなだ）駅の話は無事に終わりを迎えました。
危ない目に遭ったPCさんはいませんでした。蒸気機関車を利用した二人は時間の経過で寝子島に戻りました。
今回、浅縹駅で得た情報を纏めて書いておきます。
浅縹駅で得た情報
・青い石で組まれた露天風呂
手前に小屋があり、脱衣所を兼ねている。
内部で男湯と女湯に分かれていて風呂の作りは同じ。無料で利用できる。
・足湯
小屋の近くにあり、小川くらいの幅のところに温泉が流れている。
縁に座って自由に足を浸して楽しめる。同じく無料。
・幸運のお守り
子猫のヒゲが元になっているが、効果は定かではない。過信は禁物と言える。
・悠久の庭園
古くから存在する自然と調和した庭園。訪れた者の感情や思い出がカイコ露（ろ）となり、
小瓶や瓶で採取している。中身は加工が可能で香水やシロップ、上物の衣服として利用されている。
・つむぎ屋
大樹を利用した店舗でカイコ露（ろ）を加工する職人が腕を揮う（代金は要相談）。
・月見うさぎのお宿
森の中にある料理旅館。兎人（とじん）の女将が切り盛りしている。
長い耳以外は人と同じで聴覚が優れている。
細かい設定は、今後、変わるかもしれません。建物や施設もシナリオの数に比例して増えていくと思います。
皆さんの豊かな想像力の賜物です。本シナリオに参加していただき、本当にありがとうございました。
危ない目に遭ったPCさんはいませんでした。蒸気機関車を利用した二人は時間の経過で寝子島に戻りました。
今回、浅縹駅で得た情報を纏めて書いておきます。
浅縹駅で得た情報
・青い石で組まれた露天風呂
手前に小屋があり、脱衣所を兼ねている。
内部で男湯と女湯に分かれていて風呂の作りは同じ。無料で利用できる。
・足湯
小屋の近くにあり、小川くらいの幅のところに温泉が流れている。
縁に座って自由に足を浸して楽しめる。同じく無料。
・幸運のお守り
子猫のヒゲが元になっているが、効果は定かではない。過信は禁物と言える。
・悠久の庭園
古くから存在する自然と調和した庭園。訪れた者の感情や思い出がカイコ露（ろ）となり、
小瓶や瓶で採取している。中身は加工が可能で香水やシロップ、上物の衣服として利用されている。
・つむぎ屋
大樹を利用した店舗でカイコ露（ろ）を加工する職人が腕を揮う（代金は要相談）。
・月見うさぎのお宿
森の中にある料理旅館。兎人（とじん）の女将が切り盛りしている。
長い耳以外は人と同じで聴覚が優れている。
細かい設定は、今後、変わるかもしれません。建物や施設もシナリオの数に比例して増えていくと思います。
皆さんの豊かな想像力の賜物です。本シナリオに参加していただき、本当にありがとうございました。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2021年09月19日
- 参加申し込みの期限
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- 2021年09月26日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2021年09月26日 11時00分
